ザ・グレート・展開予測ショー

修行の日々〜4〜


投稿者名:初心者1069
投稿日時:(03/ 2/28)

ドアの外に立っていた男はスーツを着ているどこにでもいそうな男だった。
だが、その男から感じられる霊気は独特のものだった。

(何だこいつ。妙な霊気してんな。
 待てよ‥‥前に一度だけこんな感じを味わったことがあったような‥)

もう少しで思い出せそうなときに男が話しかけてきた。

「気づかれてしまいましたか。」

「誰だお前?人間じゃねえだろ。」

「そこまで分かりましたか。さすがアシュタロスを倒した英雄ですね。
 私はあなたがたのいう魔族‥ですかね。」

「魔族? 俺に何の用だ」

「取引していただこうと思いまして。
 少し話が長くなりますから、部屋に入ってもいいでしょうか?
 あなたの大切な『蛍』についてですよ。」

「!!‥‥分かった。とりあえず話を聞こう。」

「ありがとうございます。では、お邪魔します。」

部屋に入ると男は部屋の汚さに驚いたようだった。

「もう少しマメに掃除しないと体こわしますよ。」

「そんなことを言いに来たんじゃないだろ。さっさと本題に入ってくれ。」

「まったく生真面目な方ですね。
 まあいいでしょう。
 ルシオラさんの霊破片の一部が失われているということは知っていますね?」

「ああ。だが何故お前が知っている?」

「情報というものはいくら気をつけても漏れるものですよ。
 あなたがこの情報を知っているようにね。
 さて、その霊破片ですが我々が所持しています。
 ある条件を飲んでくれたらあなたに渡しましょう。」

そう言うと男は持っていた鞄から瓶を出して、
その中に入っている霊破片らしいものを見せた。
それからわずかながら感じられる霊力はルシオラのものとよく似ていた。
横島はそのこのに気づいたはずだが感情の変化を見せずに会話を続けた。

「何故アイツの霊破片を集めた。
 お前らにとってあの霊破片に何の利用価値もないはずだ。」

「それが大有りなんですよ。実はあなたを抑えるためです。
 霊破片を渡す条件についてですが、
 我々はこれから神界、魔界、そして人間界を支配するために動き始めます。
 その方法を教えるわけにはいきませんが。それを邪魔しないで欲しいんです。」

「俺一人が動いて駄目になるような計画なら成功しないと思うが?」

「あなたは自分の重要性を軽く見すぎています。
 先の大戦でアシュタロスが失敗した一番の要因は
 間違いなくあなたの実力を見誤ったことです。
 正確に言うとあなたという文珠使いの実力ですがね。
 我々とてあなたと真正面から戦うのは得策ではない。
 そこで、こんな形で休戦協定を結ぼうと言っているのです。
 もちろんあなたとルシオラさんの無事は保障します。」

「そんな取引に応じるわけにわいかねえな。」

「何故です?ルシオラさんの霊破片を我々が持っている以上、
 この話を断れば彼女を助けられなくなりますよ?」

「アイツは‥‥ルシオラは世界を犠牲にしてまで
 自分が復活したいとは思わないさ。
 それはあの戦いの中でよく分かったことだ。
 それにその瓶の中の物はよく似ているがアイツの霊破片じゃねえ。
 あんたには悪いが、そんな話を聞かされた以上捕まえさせてもらうぞ。」

そういうと横島は文珠<縛>を発動させ男に投げつけた。
しかし、男はいとも簡単にそれをかわすと突然笑い始めた。

「何がおかしい!」

「いいでしょう。合格です。
 まさかこの霊破片が偽物だと暴くとまでは予想できませんでしたがね。
 あなたなら世界を滅ぼすようなことはしないでしょう。
 これからここに来た本当の訳を話します。」

「本当の訳?」

「ええ。
 あなたが『蛍』を助ける手助けをします。」

「アイツを助けるのを手助けする?
 そのまえに、お前はいったい誰なんだ?
 前に感じたことがあるような霊力をしているが。」

「あなたに借りがある者です。
 名前は‥そうですねルシファーとでも名のっておきましょうか。」

(ルシファー?この名前どっかで‥。
 どうでもいいがコイツなんか無理な喋り方している気がするな。
 人間の言葉になれていないのか?
 それに、俺に借りがある魔族なんかいないと思うがな。
 一応警戒しておいた方がいいか。)

横島は気づかれないように文珠<縛>を生成して
いつでも投げつけられる状態にした。

「それで、ルシファーさん。
 俺がアイツを助けるというが、俺はそんなことは考えていないぞ。」

「そんなことはないはずです。
 現に妙神山で過去に戻れるだけの数の文珠を
 同時に使えるように修行を終えたところじゃないですか。」

「俺が修行をしたのは美神さんに認められるためだが?」

「そう言うならそれでいいでしょう。別にこだわることではありません。
 とにかく時間の復元力をクリアするためのヒントをあげます。
 知っていると思いますが時間の復元力は
 未来を知るものが過去を変えようとすると作用します。
 つまり、現在より先のあなたが知らない未来で
 彼女が復活する可能性はあるわけです。
 このことと彼女が復活できなかった訳について
 よく考えれば答えが見えてくるはずです。」

「さっきまで俺を騙していたお前の言葉を素直に信じられると思うか?」

「もちろん信じる信じないはあなたの自由です。
 もっとも、ほかにいい考えが浮かんでいるとは思えませんが。」

「‥‥。」

「とにかく、これで借りは返しました。
 私はできる範囲で精一杯あなたに協力しました。
 ある理由でこれ以上あなたに干渉できませんから。
 それと、動くのなら明日すぐにしたほうがいいですよ。」

「何故だ?」

「隠し事は長く続かないものですよ。では幸運を祈ってます。」

そう言うとルシファーは横島が止めるまもなく姿がぼやけ、消えていった。

(一体何だったんだ?
 それにしても、明日行動しないといけないと言っていたのは‥‥
 まさか誰かにばれているのか?
 いや、それよりも奴のいった言葉の意味を考えないと‥‥。)

その日一日休養を兼ねてルシファーと名のる男の言ったことについて考えた。
しかし答えが見つからないまま運命の日を迎えた。

(ふぅ‥もう夜明けか。
 結局答えが見つからなかったな。
 奴が言ったことを信じれば今日しかチャンスがないことになる。
 とりあえず体は治ったみたいだし今日行くしかないか。
 見つかっちまうといろいろ厄介だしな。
 向こうについても答えが見つからなけりゃ
 パラレルワールドができることを祈ってアイツを助けることにしよう。)

横島は万全の状態で時間移動をするために、
普段は滅多に摂らない朝食を準備し始めた。



一方、除霊事務所には小竜姫が来ていた。

「こんな朝早くから何の用なの?」

「横島さんについてです。」

小竜姫は横島が修行を終えて妙神山を去っていった時までの
全てのことを美神達に話した。

「ふ〜ん。私が知らない間にそんなことがあったの。
 でも、こんなことを話したら小竜姫さまの立場が悪くなるんじゃないの?」

「そんなことを言っている場合じゃなくなりました。
 どうやら神魔の上層部は横島さんの抹殺を企んでいるようなのです。」

「そんな‥どうして横島さんが」

キヌは今にも倒れそうなほど青い顔をしていた。

「元々彼が文珠を修得した時点で彼の抹殺は考え始められました。
 文珠は使い手によってはコスモプロセッサー以上の
 世界を作り変える道具になりますから。
 しかし、その時点での彼の実力を考えると
 それほどの力を手に入れることはないだろうというので
 その時は具体的な計画を立てることもありませんでした。」

「その後、横島君が強くなりすぎたって訳ね。」

「その通りです。
 先の大戦の中で彼は驚異的な速度で成長しました。
 それで上層部は、今回私のところで『セル』を使った
 修行をすることで彼の力の限界を知ろうとしたのです。
 その結果横島さんが成長して霊力で文珠を使えば
 世界を作り変えることができるという判断が下りました。」

「たとえ力を持っても横島さんはそんなことをする人じゃありません。」

「そんなことは上層部にとっては関係ありません。
 人間の心ほど変わりやすいものは無いというのが
 彼らの人間に対しての認識ですから。」

「それにしても、横島君はその力で世界を救ったんだから
 何も殺す必要はないんじゃない?」

「上層部の中でもそんな考えがありました。
 そこで、彼らは横島さんが実際にその力を
 世界に害のあることに使うかどうかをテストすることにしたんです。」

「そんな‥‥。
 そのためにわざとルシオラさんの霊破片の話を聞かせたんですか?」

「そうです。
 もっとも、ルシオラの霊破片は本当に失われた部分がありますけど
 おそらく体の消滅の際に大幅に失われたのでしょう。
 というわけで、横島さんを殺させないためにも時間移動をさせてはいけません。
 幸い横島さんが時間移動するまでは神魔が動くことはありませんから、
 急いで横島さんにこの話をして下さい。
 情報をつかむのに時間がかかって知らせるのが
 遅れてしまいました本当にすいません。」

「わかったわ。
 小竜姫さまが謝ることじゃないわよ。
 大丈夫、こんなこともあるかと思って
 横島君の体に発信機をつけておいたから今すぐ捕まえに行きましょう。
 この位置だとまだ家にいるようね。
 おキヌちゃん、シロタマを起こして急いで準備させて。」

キヌが返事する前に階段からタマモとシロが下りてきた。

「その必要はないわ。」

「早く先生の所に行くでござる。」

「さすがに勘がいいわね。よし、じゃあ出発しましょう。」

美神がそう言い終る前に強烈だがよく知っている霊気を五人とも感じた。
その霊気がどんどん大きくなっていく。

「まさか‥これがあの横島?
 急ぐわよ!もうすぐ時間移動を始めてしまうわ。」

彼女達は横島を救うために動き出した。

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