ザ・グレート・展開予測ショー

LONG TIME NO SEE  


投稿者名:人生前向き
投稿日時:(03/ 2/27)



 一週間ほど続いた雨もようやく止み、完成予定日を少しばかり遅れた建築現場は喧騒に包み込まれていた。設計図を持った横太りの男があれやこれやと怒鳴り散らし指示を出していく。しかし現場の人間としてここで働いているDr.カオスにとって、それは非効率的で青臭いものとしかいいようがなかった。何事にも妥協を許せないスタンスをとっているカオスは幾度となくそれを指摘をしたが何をいってると軽く鼻であしらわれてしまった。だからといって怒るのも大人気ないと、その現場監督に見つからぬようカオスは現場仲間を数人集め、仕事が効率よくスムーズにできるよう指示をした。男たちはどうせ老人戯言
だろうとも思ったが、現場のアイドルとなったマリアの『祖父』だからと敬老精神で彼のいう通りに動いた。効果はすぐに表れ、たちまちカオスは仲間内で先生と呼ばれるようになった。そうとも知らず自分が優れていると現場監督は思い込んみ得意満面になっていた。日が暮れ始め、もうそろそろ仕事の打ち切る頃、カオスを特に慕う一人の男が声をかけてきた。

 「先生!」

 男に気がつきカオスは振り向いた。その男は大柄でがっしりした体をしている。最近やっと長年アタックしてきた憧れの女性とデートまでこぎつけたらしく、この前など休憩時間中に独り善がりの惚気話を聞かされた。

 「惚気話は後にせい。今は仕事中じゃ。」

 表には出さなかったが、カオスは生きてきた中でいまだ数人しかいない、自分が認め気に入った知り合いが死んだと聞かされ、ここ一週間というもの機嫌がものすごく悪かった。いくら年をとってもこんなときはさすがに男の惚気話など聞く気になれないと、カオスは男を突っぱねるような態度をとった。

 「ち、違います。さっき先生のお孫さんが来てこれを渡してくれって。」

 男は後ろポケットから封筒を取り出すと、カオスの前に差し出した。
 
 「孫じゃと??」
 
 カオスは訝しげに男から差し出されたその封筒を取った。
 
 「じゃ俺はこれで。」 

 男は用事が済むと持ち場に戻り仕事を再開した。封筒を裏返したり不信そうに見ていたカオスもまずは仕事と、作業を開始するためと手元にある見知らぬ孫からの封筒を懐に入れようとしたところ、封筒に妙な膨らみがあることに気がついた。





 「令子ちゃん、大丈夫かい?」

 「え、えぇありがとうお兄ちゃん。」

 西条はここ一週間ずっと塞ぎこんだままの2人を訪ねに事務所に行った。中は暗く、夕方にもかかわらずカーテンを締め切っている、この様子では朝昼閉めっぱなしだろう、自分を迎え入れた美神に精一杯優しく言葉をかけた。だいぶ酔っているようだ、アルコールの匂いが体に染み付いている。美神でこれだとおキヌはもっとすごい事になってやしないか、一抹の不安が頭をよぎる。

 「令子ちゃん、おキヌちゃんはどうしてる?」

 「あの子なら学校に行ってるわ。」
 
 「そうか。」

 事務所の机は空の酒瓶で覆い尽くされ、床にも何本か散らばっている。西条は部屋中に漂うお酒の匂いを外に出すため窓を開けた。ちょうど夕日が差し込み、強い明るさに美神は目を強く閉じた。寝不足だろうか、泣いていたのだろうか、それとも両方か目の下が酷く腫れ上がっている。
  
 「ちゃんと寝てるかい?」

 西条の言葉に美神は体を小さく反応させる。しかし返事がない。

 「令子ちゃん!」

 西条はさっきより強い口調で問いただした。美神の体がびくっと再び反応するが、答える気配さえ感じられない。美神の想像以上の酷さに言葉を失った西条は、成すすべ無しに美智恵に相談するほかないと感じとった。



 


  
 
 


 カオスはマリアと共に夜の街を歩いていた。時折話し掛けてくる者は皆マリアめあてのナンパ男で、その数の多さに呆れ果てた。軟弱な、侍の国も地に落ちたか、とカオスは知っていたこととはいえその情けなさに失望を隠し切れなかった。程なく歩くと、手紙に書かれている待ち合わせの店を見つけそこに入った。

 「い、い、いらっしゃいませ。」

 店員はカオスの顔を見て、動揺するがそれを必死に補おうと言葉を紡いだ。カオスは店員の異変に気づきも何食わぬ顔で用件を言った。

 「知り合いと待ち合わせているんじゃがのぉ。」

 「お、お名前は?」

 「柴田じゃ。」

 「はい、に、205号室です」

 店員から部屋の場所を聞くと急がずにゆっくりと向かった。幾人もの歌声が廊下まで響き、そして重なりやかましく感じる。201・・・・203・・・207と、そんな中、歌声の聞こえない部屋をすかさずチャックし、その位置と共に頭の中に埋め込んだ。そして205の札のついた部屋まで着くと足を止めると、後ろからついてきたマリアを近くに呼び寄せ、小声で言った。

 「部屋にいるのが奴か判るか?」

 「霊波探知では、100パーセント、の確立で一致してます。」

 「ふぬ・・・そうか。」

 マリアの確認を得たカオスはドアに手をやり、そして開いた。

 「小僧、囲まれておるぞ!!」 

 その声と同時にマリアは建物の壁をぶち破り、外へとつながる新たな道を作った。カオ
スは小僧と呼んだ男を引っぱりそこから飛び降りる。201、203、207号室のドア
が開き、部屋からスーツを着た男たちが銃を片手に持ち飛び出して来たときには、そこに
は破壊された壁の残骸しか残っていなかった。







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