ザ・グレート・展開予測ショー

カモネギよ、こんにちは(後編)


投稿者名:NAVA
投稿日時:(03/ 2/27)



私の胸の鼓動が急に高まる・・・。
それは・・・、一つの決心に近いものであった・・・。



「冷静に・・・」私は一つ大きく息を吸い込む。

そして、ゆっくり呼び鈴を押すと、奥から若い女性の返事が聞こた。



「お嬢さん、今日は本当にありがとう。お嬢さんみたいな優しくて親切な若者がおるとは、まだまだ日本も捨てたもんじゃないのう」
おじいさんがそう言って、油断のならない目をして笑う。

私に向けられた感謝の言葉・・・。
その言葉が終わるとすぐに、玄関の引き戸が開かれた。

中から姿を現したのは、二十歳くらいの若い女性であった。
突然の見ず知らずな私の訪問を受けて、少し驚いている様子が伺える。

「あ・・・、あの・・・、どちらさまでしょう?」
訝しげにたずねる女性・・・。

その言葉を聞いたおじいさんが、「わはははは」と笑い声を上げた。

「いやいや、申し訳ない!家を間違えてしまったようですじゃ!もう、すっかり頭の方も年を取ってしまったようで、困ったもんじゃのう」
そう言って、照れくさそうに笑うおじいさん・・・。

さっきまでなら、私も一緒になって笑っていただろう・・・。



迷いは初めから、私の中にあった・・・。でも、それを振り切って―――



「サチコさんでいらっしゃいますか?」と、その女性に向け、質問を投げた。



女性は驚いた表情を崩さず、「・・・はい」と答える・・・。



その返事を聞いた瞬間、おじいさんの笑い声が途絶える・・・。
おじいさんのあの・・・、優しい笑顔・・・。



けれども、私はあえて振り向くことはせず、常備しているネクロマンサーの笛に手を伸ばす。

「お誕生日ですよね?」

「・・・え?」
サチコさんはそれを受け取るとすぐに、はっと息を呑む・・・。

「おじいさん・・・、いらっしゃいましたよね・・・?」
私は感情を無理に押し殺し、たずねる・・・。

「・・・はい、でも―――」
小さくうなずくと、両手をぎゅっと握り締めて・・・、答えた・・・。










「10年前に・・・、亡くなりました・・・」





ここからが・・・勝負。





目に涙をためたまま、サチコさんが話してくれた・・・。

「10年前の今日・・・、そう私の誕生日でした・・・。おじいちゃん・・・、誕生日プレゼントを買ってくる、って出かけていったんです。
何を買ってきてくれるのかは、教えてくれませんでした」

そこまで話してくれて、サチコさんの目から涙があふれる・・・。



「冷静に・・・」私は今にも漏れ出そうな高笑いを、必死にこらえる・・・。



「そして、その帰り道・・・。持病の心臓発作に倒れて・・・、そのまま・・・。本当は、もう少し発見が早ければ助かったらしいんです・・・」鼻をすすりながら、遠くを見つめる。
「どうして、一緒についていかなかったんだろう・・・?いつも一緒だったのに、どうしてあの時だけ・・・?
おじいちゃん・・・、きっと私のこと、うらんでると思います・・・」

流した涙も拭かず、悔しそうに自分の両肩を抱きしめるサチコさん・・・。

サチコさんもおじいさんのことを、大好きだったんだ・・・。とても大事に想ってたんだ・・・。

「その通りですよ」
私はそっと、サチコさんの震える肩に手を置く。
「おじいさん、あなたのことをとても恨んでいますよ。育ててやった恩を忘れやがってと・・・」

その言葉に、はっと顔を上げるサチコさん。
「あなたは、一体・・・?」

「私・・・、GSなんです。まだ見習いですけどね。サチコさんのおじいさんに導かれて、ここまでやって来ました」

「え?じゃあ・・・、おじいさんがここに?」

私は小さくうなずきそうになるのを堪えつつ、彼女の手をそっと握ってあげる。

「おじいさんは10年間ずっと、貴女を恨み続けています。このままなら、悪霊と化して貴女を祟り始めることでしょう」

その言葉を聞くと、「おじいちゃん」と一言つぶやき、サチコさんは虚空を見つめる・・・。

恐怖に引き攣った顔・・・ここまでは順調だ。



その様子を見届け、おじいさんの方を振り返ってみた。



おじいさんの表情は酷く驚いていた。
でも、その表情は次第に憤怒のモノとなり、私に襲い掛かろうとしていた。

しかし、既に呪縛ロープで縛りつけられているおじいさんは身動き一つしない。・・・ニヤリ
何時の間に?なんて野暮なことは言うこと無かれ。

「私、まだ見習いですので、300万ほどで除霊して差し上げますが?」

「ほ、本当ですか?!!!相場は1000万からですよね?!!!」

「ええ、でも私は見習いですから♪」

「げ、現金を持ってきます!!!」

そう言って、家の中へ引き返すサチコさん。
さてと・・・この隙に・・・。
おじいさんを見ると、何時の間にか本当に悪霊と化している。
その標的は・・・私。
ちょっとだけお札を利用して、その姿をサチコさんにも見えるようにする。当然、悪霊と化したおじいさんは気付いていない。

「ヒッ?!!!!」
作業が終ると、丁度サチコさんが戻って来たようだ。軽く悲鳴を上げる。

「おじいさんですよね?」

「は、はい!!!早く除霊してください!!!」

その言葉に遠慮なくネクロマンサーの笛を吹く。・・・ニヤリ


『除霊』の瞬間・・・。



私は素早くおじいさんの懐から札束を抜く。サチコさんからは死角で見えないように。
そして、私が差し出した吸引の霊符に『キュポンッ』と消えていった。

ネクロマンサーの笛で成仏させちゃ、札束まで一緒に逝っちゃうからね。・・・ニヤリ



私はサチコさんから300万を受け取って一つ頭を下げ、黙ってこの場を去る。

ずっと我慢していた笑いが、あふれてきたから・・・プププッ、計600万ですよヨ☆



私は口を両手で抑えて、事務所に向かって走り出した。

笑ってはいられない。また、すぐお仕事だし・・・。
それに、一人前の守銭奴になるには、いつまでもこの程度で満足していられないから。

でも、まだ私は半人前・・・。
あとで、美神さんに全部話して、9割を上納しなくちゃ。
もちろん、お爺ちゃんから掠め取った300万は隠すけどね。・・・ニヤリ




私はGS(守銭奴)。

まだ半人前だけど・・・。

でも、いつかは美神さんのように、一人前になって・・・。

そして何時かは・・・美神さんの財産を奪い取るの♪

師の財産を根こそぎ奪って、弟子の成長をまざまざと見せ付ける。

これこそが、誇り高く険しい“守銭道”の最終試験。




そのためにも、もっとカモネギと「こんにちは」して行かなくっちゃ・・・ウフフフフ。




 完

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