ザ・グレート・展開予測ショー

修行の日々〜3〜


投稿者名:初心者1069
投稿日時:(03/ 2/26)

昔を思い出して、今冷静に考えると幾つかの疑問が頭をよぎった。
(そういえば‥‥
 心眼持っているヒャクメが俺が聞いてることに気がつかないはずねえよな?
 あんだけ色んなことできりゃ、透視ぐらいできるだろうし。
 それに俺の修行の内容が決まるのもとても早かったなぁ。
 小竜姫様は
 「前に修行にいらしたときから
  文珠の修行に効果的なメニューをずっと考えていたんですよ」
 なんて言っていたけど。
 俺が修行に来るのがわかってたのか?‥‥まさかな。)

(そんなことより考えなけりゃならないのは、時間の復元力をどうするかだな。
 せっかくアイツを助けても違うタイミングで
 死んじまえば結果はかわらないし‥。
 まあ、アイツが生きているパラレルワールドができる可能性があるだけでも
 行く価値は十分あるな。
 でも、それじゃあこの世界のアイツは助からないわけだから
 約束を守れないし‥‥。
 とにかく今は修行に集中するか。またいい考えがうかぶかもしれないし。)

いくら考えても悲観的な考えしか浮かんでこないので思考はここでやめにして
部屋に着替えに戻った。
(少し早いけど、そろそろ修行場に戻るか。
 時間を逆行できるくらいの漢字は知ってるし、
 戦かうときに役に立つ漢字は使い慣れてるから
 いまさら漢字の勉強するまでも無いだろ。
 だいいち、向こうで戦うことになっても文殊はあまり使えねえしな。
 帰ってこれなくなっちまう。
 小竜姫さまが霊波刀を使った体術の修行も組んでいてくれてよかったな。
 ん‥‥?そんな修行頼んでないのに何でメニューにはいってたんだ?)

また考え始めるが、時計を見るともう戻る時間だった。
修行場に戻るとヒャクメがきていた。

「ヒャクメ?何でお前がここに来てるんだ?」

「何で来てるとはごあいさつなのね〜。」

「横島さんの修行のために私が頼んで来てもらったんです。」

「修行?今からするのは座禅じゃないんですか?」

「ええ。ただしただの座禅じゃありません。
 私が考えた方法でしてもらいます。」

「げ‥特別メニューっすか?
 何か嫌な予感が‥。いったいどんなんですか?」

「百聞は一見にしかず。さあ修行を始めましょう。
 ヒャクメお願いします。」

「わかったのね〜。」

ヒャクメは持っていた鞄からコンピューターとコードをとりだし、
コードを横島の体中に取り付け始めた。
最後に頭にコードをつけると、コードの反対側をコンピューターにつないだ。

「準備完了なのね〜。」

「わかりました。
 修行を始める前に文珠をだせるだけだして私に渡してください。
 修行のスピードを上げるのに役に立ちますから。」

「? はい。」

横島は文殊を座禅にどう使うのかと疑問に思いながらも
出せるだけの文珠をだして小竜姫に渡した。
文珠を受け取ると、ヒャクメが説明を始めた。

「修行は座禅を組んで集中するだけでいいのね〜。
 頭についているコードとコンピューターが集中しているかどうかを逐一チェックしてるのね〜。
 集中が乱れるとこうなるのね〜。」

そう言い終わった瞬間頭以外のコードから電流みたいなものが流れ始めた。

「痛てっ」

「今はその程度ですんでいるけど、
 集中が乱れれば乱れるほどショックが強くがなるのね〜。」

「それで、どれくらいの間続けるんですか?」

「三十分座禅して五分休憩を六回繰り返します。」

「三十分を六回ってことは‥‥三時間!?
 三時間も集中が続くわけ無いじゃないですか!」

「心配しないでください。
 命が危なくなったら文珠で助けますから。
 では始めます。」

小竜姫がそう言ったのを皮切りに
何の準備をしていなかった横島に電流が流れ始めた。

「ほらほら。早く集中し始めないと死んじゃいますよ。」

横島は小竜姫と美神の共通点を一つ見つけたような気がした‥。


それは座禅というものからはかけ離れた修行だった。

意識を失ってもその直後に小竜姫が文珠で回復させるので、
最初の三回はほとんど三十分電流が流れっぱなしだった。
それだけ痛い思いをすればさすがに四回目を始めるころには、
コツがつかめてきてそれほど強い電流を受けることは無くなってきた。

だが、五回目からは修行の効果を高めるための妨害が小竜姫達によって行われた。

ヒャクメは先の大戦での自分の苦労を語りはじめ、
それが終わると小竜姫は「神魔の関係とその将来について」の講義を始めた。
パピリオは今までペットにした物とその最期についてを涙ながらに語り、
その話が終わると、横島の耳に息を吹きかけたり、脇腹をくすぐったりした。
これらの妨害のおかげで六回目が終わるころには文珠も無くなり、
横島の体はボロ布のようになっていた。

どうにか死なずに修行を終えた横島に小竜姫は笑顔でトドメを刺した。

「あと二日間、今日と同じメニューです。
 がんばってくださいね。」

「‥‥‥‥。」

本当に三日間同じメニューで修行が行われた。
ルシオラのためじゃなければ、彼は一日目で逃げていただろう。
もっとも座禅のほうは少しづつだが
長い間集中ができるようになり一日目ほどきつくはなかった。

予定していた三日間が過ぎると、
彼にとっては意外な言葉が小竜姫の口から述べられた。

「今日で修行は終わりです。」

「ええっ!俺の霊力ぜんぜん上がってないんすけど?」

小竜姫は『セル』について効果と何故使用したかを簡単に説明した。

「‥‥というわけで、一度きりですが横島さんの限界までの霊力が出せます。
 それだけの霊力を『セル』に溜め込みましたから。
 もっともそれほどの霊力が必要な相手は普段の除霊にはいないでしょうから、
 ちょっとずつ使っていくのがいいと思いますよ。」

「そうだったんですか‥‥。
 これはただ霊力を抑えていただけじゃなかったんですね。」

「修行のダメージが残っているからセルを外すのは
 一日以上休んでからのほうがいいのね〜。」

「わかりました。
 色々とありがとうございました。
 おかげで予定していたより早く美神さんに認めてもらえます。
 では、失礼します。」

そういうと横島は修行に来たときに作っておいた
帰宅用の文珠を発動させて帰っていった。

「『一度きり』に何も言わなかったってことは、やはり今回の修行の目的は美神さんに認められることじゃなかったみたいですね。」

「そうみたいね〜。」

「それにしても、神魔の上層部は何を考えているでしょうか?
 横島さんに聞こえるようにルシオラの話をさせたり、
 ここに来るの前から修行のメニューを決めておいたりして。」

「確かに腑に落ちないのね〜。
 これじゃまるで、横島さんを過去に行かせようとしているみたいなのね〜。」

「今のままじゃ情報が少なすぎて、なんとも判断のしようがないわね。
 ヒャクメ、悪いけど‥‥」

「わかってるのね〜。上層部の動きを調べておくのね〜。」

「ありがとう。
 それと無くなったルシオラの霊破片についての調査に進展はあった?」

「サイコメトラーの出動を要請したみたいなのね〜。
 それと、霊破片を集めたベスパの眷属も
 色々と調べられているみたいなのね〜。」

サイコメトラーとは物から記憶や
そこに染み付いている霊力を読み取れる能力者のことである。

「そうですか。そちらはもうすぐ原因が特定できそうですね。
 私もできる限り情報を集めておきます。
 最悪の場合横島さんが抹殺される可能性もありますし。
 やはり文珠は持つべき能力ではなかったのかもしれませんね。」



横島は直接家に帰らずに事務所に立ち寄っていた。

「‥というわけで、明日からしばらく休ませてほしいんですけど‥。」

美神の反応を見ながら言っている横島の体はすでにガードの体勢を取っていた。
しかし、驚いたことに美神は横島の様子をちらっと見て、

「かまわないわよ、別に。
 最近はシロタマの二人も使えるようになってきたから、
 除霊に失敗するような足手まといはいらないわ。
 給料も払わなくていいしね。」

(あっちゃ〜。こりゃ相当怒ってるな。まあでも休めるわけだし。)
「ありがとうございます。」

「横島さんご飯食べていきますよね?」

「ごめん、おキヌちゃん。今日はいいや。」

そう言って、帰ろうとする横島に美神が二つの文珠を投げた。

「アンタ、歩いて帰る気だったの?
 妙神山からここに来るのに文珠使っちゃったんでしょ?
 その除霊用の文珠貸しておいてあげるから
 霊力が回復したら、倍にして返しなさい。
 それと、何か私に言うくことはないの?」

「何の話っすか?」

「あっそう。ないならいいわ。」

「そうですか?じゃあ失礼します。」

横島はそう言って頭を下げると、文珠を発動させ帰っていった。

「横島さんがこんな時間に来てご飯食べていかないなんて珍しいですね。
 それにしても、美神さん言っておくことって何ですか?」

「私の下着が一枚足りないのよ。
 あのバカ自白すれば許してあげようと思ったけど、
 次に来たときにシバクことにするわ。」

(あいつ、私達にまで隠して何する気なのかしら?
 一応発信機は取り付けておいたけど。 私に隠し事しようなんて百年早いわ。)



次の日
何も気づかれること無く修行を終えたと
思っている横島は家でおとなしく休んでいた。

(少しでも早く助けに行きたいけど、失敗したら意味ねえしな。
 今日は言われた通り一日休んどこう。
 時間の復元力について考える時間も必要だし。)

どう考えても無理だと思われる問題を考えようとしていると、玄関のドアの向こうから微弱ながら霊力を感じた。
警戒しながらドアを開けると、そこには一人の男が立っていた。


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