ザ・グレート・展開予測ショー

LONG TIME NO SEE  決断のとき


投稿者名:人生前向き
投稿日時:(03/ 2/26)


そして今日も雨だった・・・・。


 港漁師たちは天候によって左右される生業である。魚が集まる雨の上がった後、それは船の出す絶好の時である。彼らは陽はまだかと灰色の空と睨みあいをしている。そこに建ち並ぶ倉庫、薄気味悪いと人はあまりそこに寄り付かなかった。雨潮風らがまだ食い足りぬと、岸壁に規律正しく平行に並ぶ倉庫をますます荒廃させていった。少年、もといは男そこの中にいた


 テレビのニュースを見て、初めて自分が死んだことを知った。彼を連れてきた女はそれを予期し、彼にそれを何処となくほのめかしてはいたし、彼もそれが判らないほど鈍いわけでもない。しかし、改めてニュースで流れるを聞くと、自分の死が他人の死のように思えてならない。英雄という名誉ある衣を纏う滑稽な自分。死んで2日目、いまだ何も知らないコメンテーター達が英雄の死を騒ぎたてている。公式発表されたのは魔族ではない人間としての自分、女が伝えてくれた警察官の死に関しては一切発表されていない。
 ガタッと外から物音が聞こえた。男は直にテレビを消し物陰に隠れ、息を潜めた。二回景気のよくノックが聞こえ、その後に三回、そして一回と続けてノックが倉庫に反響した。男は強張った体から緊張の念を抜くと脱力し、冷たい鉄製の床にヘタリと座り込んだ。

 「ちゃんと私の言うこと守ってるじゃないか。」

 「驚かすなよ・・・寿命が三年縮んだぞ。」

 ドアを開けて入ってきたのは2人の女だった。2人とも腰に届く長さのやわらかな金髪である。外見からいうと、20歳前後の女と、また高校生16、7歳といえる女だ。

 「どうだ体の調子は・・・。」

 「看護婦さんがいないな。」

 「匿ってやっているのに文句をいうな!」

 男の軽いジョークのつもりで言い放った言葉に反応して高校生ぐらい女は高圧的な態度で、あからさまにその男に嫌悪感を見せつける。もう片方の女はやれやれとでも言うように両手の平を上に向け肩をすくめた。

 「ポチ、勘違いしちゃいけないよ。あんたを助けるって言いだしたのは私じゃなくてメドゥーサなんだからね。」

 「おい!あ、あれほど言うなと念を押しただろう。」

 「あぁごめんな、私は口が軽いのさ。」

 メドゥーサは顔を上気させ、もう一人の女に訴える。

 「・・・・・」

 「・・・・なんだい、文句でもあるのかい。」

 黙りこくる男にメドゥーサは赤みかかった顔で睨みを利かす。もう一人の女にはその態度がおかしくてしょうがない、腹から込み上げる笑いを堪えるのに必死になっている。

 「・・・・・」

 「おい、大丈夫か!?」
 
 「ポチ、まだ体が痛むのかい??」

 黙っている男の顔を不安げに2人が覗き込んだ。

 「いや・・・・腹が異様に減った。」


 メドゥーサはアシュ戦で死んだはずであった、殺した本人も殺された本人もそう思っていた。しかし現実に今生きている。目が覚めたときメドゥーサ自身これは夢ではないかと疑り自分の頬をつねった。そして自分が生きていることを認識すると自分を殺せなかった男の無能さを呪った。寝首でもかいてやろうと夜、男の病室に侵入した・・・・・・。

 

 「ポチ、もう少し落ち着いて食べなよ。」

 「ふふかもひゃひもふってふぁふぁったんふぁぞ。」
 訳(二日も何も食ってなかったんだぞ。)

 男は右手でフライドチキンを振り回しながら、魔族とは違って二日食わなきゃ腹が減る、と彼女たちに告げる。テーブルに所狭しと埋め尽くされたジャンクフードをめ一杯口に詰めこめる。喉に詰まれば水で流し込む。何度か繰り返されるうちに、テーブルのジャンクフードの半分以上が男によって消された。その様を見ていた二人は開いた口が塞がらなかった。


 「・・・・・くるしい。ペスパみ、水ぅ〜」

 「い、いままでこんなバカに負けてたのか。」

 「ほら、水だよ!」

 水を一気に飲み干すと、男の顔つきが豹変した。2人は彼の面持ちから、でるであろう言葉を待ち構えた。誰一人と口を開こうとしない・・・雨の音が次第に強くなりはじめる。遠方から雷鳴さえ聞こえてくる。


 「人間の横島忠夫はすでに死んだ。」



 男は小さくそう呟いた。

 
 


 
 

 TO BE CONTINUED
  



 

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