ザ・グレート・展開予測ショー

AFTER DAYS!!(9)<その男の信ずる正義とは>


投稿者名:ハルカ
投稿日時:(03/ 2/26)

ルシオラが攻撃を仕掛けようと手を動かした瞬間
グラップスの姿がぶれたと思ったら
すでに後ろに回りこまれて拳をつきつけられていた。

「・・・・・・言っておくが、無駄な抵抗は止めておけ。
 お前が気付いたとおり、俺は霊能力をまったく使えないが
 体術を極めるだけでここまですばやく動けるからな。」

ウソ!?
いつの間に移動したの!??
完全に私の反射速度を凌駕しているわ!!

この男・・・・・神族正規軍隊長の肩書きはウソじゃないかもね。


「このっ!!ルシオラちゃんを離すでちゅ!!!!」

パピリオがブンッと霊力を込めた拳をふるう。
グラップスは軽く後ろに跳んでそれをかわした。

「くっ・・・!!これでもくらいなさい!!」

その瞬間にルシオラは振り返りぎわに回し蹴りを放ち、間合いを取った。

・・・・・・危なかったわ。
パピリオのフォローが無かったら確実にやられていたと思う。
それにしてもあのスピードは危険過ぎるわ・・・
この様子じゃパワーもとんでもないでしょうね。
どうすればいい・・・・・どうすればいいの!?

・・・・・・・・・・そうだわ!!!!


「眷属たちよ!!今すぐ集まりなさい!!!!
 パピリオ!あなたもすぐに眷属を呼んでちょうだい!!!!」

「分かったでちゅ!!」


ズザザザァァァァーーーーー!!!!


ルシオラとパピリオの号令によって、瞬く間に病院の屋上とその上空が
眷属の蛍と蝶で埋め尽くされる。

「これは・・・・・なんのつもりだ?」

グラップスは辺りを見回しながら自身満万に不敵な笑みを浮かべている。

「いくらあなたが素早く動けるといっても
 これだけの数の蛍の幻惑と蝶の鱗粉をかわすのは不可能ね。
 さあ!!ベスパの事を喋ってもらうわよ!!
 それとも、霊力をたっぷり含んだ蛍の幻惑と蝶の鱗粉を味わってみる!?」

ルシオラがチェックメイトの宣告をするが
グラップスは余裕を崩さない。

「・・・・・・・・・フンッ!!くだらん。
 あのアシュタロス直属の魔族だというから俺が直接出向いてみたが・・・・・
 この程度か!!?
 所詮、魔族は魔族にすぎないということだな!!」

グラップスの言葉と共に辺りの空気が震えだす。

なによこれ!?
霊力なんて・・・・・霊力なんて無いはずのにこの威圧感は何なのよ!?!?



【全ての霊力よぉぉぉ!!!!我が力の前に屈服せよ!!!!!!】



グラップスの咆哮と共に真っ白な空間がグラップスを中心として広がってゆく。
その空間に飲みこまれた眷属の蝶と蛍は力を無くしたようにフラフラと落ちていった。

「な、なんでちゅか!?これは・・・・・?わたちの眷属達が・・・・」

「霊力が・・・封じ込められる!?なんなの、これは!?!?」

霊力を封印されていてもルシオラやパピリオほどの霊格になれば
身体そのものに影響を及ぼされるわけではないが、
眷属の蝶や蛍達はルシオラとパピリオから放出されている霊波を
エネルギーにしているのでルシオラとパピリオの霊力が封印されてしまえば
羽ばたく事さえできない。
仮にできたとしても戦闘には使えないだろう。

「俺は霊能力を使えない・・・・だが、ちょっとした特殊能力があってな。
 俺の周囲の霊力を全て無効化してしまう・・・・・くだらない能力だ。
 だが!!俺がこの能力を使うのならば話は別だ!!!!
 霊能力が使えなければ体術で俺を倒すしかない!!
 そして体術では俺は絶対に負けない!!!!
 俺は自分の力一つでここまで成り上がってきた・・・・
 お前達と同じことを考えたヤツがいなかったと思うか?」

ニヤリとグラップスの勝ち誇った笑いを見た直後に
グラップスの姿がぶれ、激しい衝撃と共に私は意識を失った・・・・・







再び気が付いたら私は牢獄の中だったわ。
別に鎖とかは付いていないけど霊力封じの結界と見張りが一人ついてる・・・・
ちょっと逃げ出すのは大変そうね。

そんな事を考えていると見張りの下卑た笑いが聞こえてくる。
うわぁ・・・・なんかいかにも『変態神族』って感じね。

そんな事を考えているとその変態神族が私の意識が戻った事に気付いて
こちらにやってきた。

「クックック・・・・・気が付いたか。
 いいざまだな?元アシュタロス直属の幹部もこうなったらお終いだな。」

「ここは・・・・・どこよ?
 あのグラップスとかいう男はどうしたの?
 それとベスパとパピリオは無事なんでしょうね?」

私は変態神族の言葉を無視して質問を続けた。
そうするとその変態神族の顔が怒りにドンドン歪んでいくのがわかる。

「うるせぇーーーーー!!!!
 今、しゃべってんのは俺だぁーーーー!!
 人がしゃべってるときに質問してんじゃねーーぞ!!!!」

怒りのままに変態神族がルシオラの入っている牢獄の格子を
ガシャンと蹴り飛ばす。

「てめぇ、牢獄の中だからって俺が手を出せねえとでも思ってんのか!?
 直接手なんて下さなくてもいろいろ方法はあるんだぜ!!
 ・・・・・・・そうだな。
 てめぇのかわいい姉妹にでも
 お前が俺を不快にさせた責任を取ってもらってもいいんだぜ?
 ガキの方はともかくベスパ・・・・・っていったか、あっちの方はイイ女じゃねえか。
 しかも、あのアシュタロスとデキてたっていう話じゃねえか。
 くっくっく・・・・・
 人のモノをぶん取るってのはいい気分だよなぁ!!
 それがいけ好かないヤツならなおさらな!!!!」

変態神族の顔がニヤリといびつに歪む。
他人を見下して悦に入るタイプの男のようだ。

「くっ・・・・・・・・・」

「どうやら自分の置かれている立場がわかってきたみたいだな。
 まずはさっきの態度の謝罪からだ!!
 『私はゲスな魔族です。あなた様を不快にさせたことを深くお詫びします。』
 ・・・ってなぁ!!!!」


最低な男。

そうする事でしか自分を他人に認めさせることができないのかしら?
私の手が出せない事から
おそらくはベスパやパピリオも私と同じようにどこかの牢獄に幽閉されていて
この男には手を出す権限なんてない。つまりはすべてハッタリだと推測できるけど。
・・・・・・・・・けど!!
けど!ベスパやパピリオの身に万一の事は許されないわ!!
あの二人にもしものことがあったら・・・・・・!!



ギリッ



私は奥歯をかみ締めながらも変態神族の言葉に従うしかなかった。

「わ・・・・・わたしは・・・・・・・・・・・」

くやしい!くやしい!!くやしい!!!!
こんな最低な男の言いなりにならないといけないなんて!!



「う〜ん、どうした?聞こえな・・・・・・・・・・へぶらっ!!」

目の前の憎々しい顔に何者かの拳がつきささる。
変態神族はそのまま数メートルほどぶっ飛んで壁にぶち当たった。
その拳の主が聞き覚えのある声を上げた。

「この・・・・・・・・・・我等神族の面汚しがぁぁぁ!!!!
 我々神族は常に『絶対の正義』でなくてはならんのだ!!
 貴様の行為は神族に対する冒涜とみなす!!!!」

壁にぶち当たった変態神族に咆哮するグラップス。
あの変態神族、絶対聞こえてない
・・・・・・っていうか生きてるかどうかも怪しいわね。

「神族正規軍隊長のグラップス・・・・・だったわよね?
 なぜ私を助けたの?私はあなたがたが憎んでる魔族じゃなかったの?」

単純に疑問をぶつけてみる。
自分が牢獄に送った相手を助ける必要がどこにあるだろうか?
だがグラップスから返ってきた答えは意外なものだった。

「・・・・・・ふん!!
 俺は助けたつもりなどない!!!!
 我々神族正規軍は『絶対の正義』の名の元に行動している。
 それに反する愚か者を粛清したまでだ!!
 言っておくが勘違いするなよ。
 我々は必ず貴様等をテロリストとして法廷で裁きを下す!!
 第1回目の法廷は明日だ!!
 せいぜい懺悔の言葉でも考えておくんだな!!!!」

それだけ言うとグラップスは変態神族の襟を引きずって
私の視界からいなくなってしまった。

法廷ね・・・・・・上等じゃない!!
そこならベスパやパピリオにも会えるだろうし
ここから脱走するのはひとまずそれからね!!




さまざまな正義をそれぞれの胸にいだきながら・・・・・
軍事法廷の幕が今、開く!!!!

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