ザ・グレート・展開予測ショー

おキヌちゃん、話しかけてみる


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 2/25)

私、氷室キヌって言います。
この間、高校3年生になりました。
六道女学院の霊能科というクラスに通っています。
ここはゴーストスイーパーや、もしくは霊能力を生業にする職業を目指す人たちが通う学校で、私も将来はゴーストスイーパーになるつもりです。
将来の夢といったらもう一つ、私はある人のお嫁さんになりたいと思っています。

―― キャッ♪ ――

ある人っていうのは、同じ職場の同僚・・・じゃなくて上司の横島忠夫さん。
実はお嫁さんになりたいだなんて言っても、彼と私はまだ恋人ですらない。
つまり私の片思いって訳なんです。

「はぁ・・・」

ため息がもれちゃいますよね。
横島さんは一見しただけだと平凡な男の人にしかみえません。
だけどとても優しくて、そのうえ頼りになるので彼の周りには私と同じように彼を想っている女性がたくさんいるんです。
つまりライバルです!
中にはとっても積極的な娘もいるので、毎日気が抜けません。
で、私もちょっと積極的に行ってみました。
何をしたのかって?

「ふふふ・・・」

私は昨日、横島さんをデートに誘いました。
来週の日曜日に、朝から2人でショッピングです。
横島さんが帰ってきてから初めて、丸々一日2人揃っての休日が取れたので思い切って誘ってみたんですよ。
買いたい物が有るから付き合って欲しいってお願いしたら、あっさりとオーケーしてくれました。
とても嬉しいんですが、同時にがっかりもしてます。
だって、多分横島さんの頭にはデートだなんていう考えは全然無いんですよね?

「はぁ・・・」

だから、ため息が漏れちゃいます。
それでも、一緒に出かけるっていうのはやっぱり嬉しい事なんですけどね。
この辺の想いも、きちんと横島さんに伝わると良いんだけどな・・・

「どうして気がつかないんだろう?」

私は割と、横島さんにアピールしてるつもりだ。だけど横島さんは全然気がついてくれる素振りが無い。
横島さんって、物凄く鈍感なんです。
こっちからのアプローチを巣でスルーしちゃうんですよ?
例えばこうです。

『横島さんは家庭を持ちたいとは思わないんですか?』
『俺?いや、持ちたいも何も・・・俺と結婚してくれるお姉ちゃんなんているわけ無いし。う、自分で言って虚しくなるなぁ〜・・・』
『そんな事無いですよ!その・・・・・・私なんかどうですか?』

今思い出しても団大胆な告白だったと思う。顔も赤くなっちゃいます。
でも横島さんの答えはこうでした。

『え?おキヌちゃんは大丈夫だって!絶対結婚できるよ〜・・・自信持ちなって!』
『へ?』
『幽霊やってたとか、あんまり気にする事無いって。おキヌちゃんはすっげぇ可愛いんだからさ!もうきっと引く手数多だよ。そんな、結婚できるかなんて心配する必要全然無いって!俺と違って。』

二の句が告げられませんでした。
私は、横島さんの結婚相手として「私はどうですか?」って聞いたつもりです。さっきの流れなら普通そう取りますよね?
でも横島さんは、横島さんの事とは別に「私は結婚できると思いますか?」って聞かれたつもりでいるんですよ。信じられないですよね?!
幸いって言うか何て言うか,横島さんの鈍感さに苦労しているのが私だけじゃ無いっていうのが救いです。

「横島さんて、なんであんなに自分に自信が無いんだろう?」

そりゃあ、自分でテるだなんて思う横島さんは嫌だけど、それにしたってもう少しは好意を感じ取っても言いと思うんだけどな?
その事を話したら、笑いながらこう言いました。

『彼って今まで表立ってモテた事が無かったみたいだから・・・確かに、特別外見が良いって訳でもないしね。』
『わ、私は結構・・その・・・・・・か、格好良いかな?って思うんですけど・・・』
『あら?フフフ、それはやっぱり好意があればそんな風に見えるわよ。ま、それは置いておいてね。彼って昔はあの通りの煩悩少年だった訳だから、ひたすら女性に罵倒され続けてきたじゃない?もう、煩悩の隋まで自分がモテないって染み付いてコンプレックスになってるのね。』

そうなんですよね。横島さんって凄くそんな感じです。
自分が女の子を好きになるのは当然だと思ってるくせに、女の子が自分を好きになってくれる事をほとんど有り得ないって思ってるんですよ。
横島さんには、前からそんな傾向が有りました。
それでも前は良い結果を妄想しては暴走していましたけど、今思えば横島さん自身がどこかで「最後にはオチがついて終わる」って思っていたような節が有りますね。

―― で ――

今はその妄想をする事自体が無くなって来てるので、最初から自分を好きになってくれる女性という可能性を除外してるみたいなんです。
思考回路に組み込まれて居ないんですね。

「先は長いかもなぁ〜・・・」

ま、それでも少しずつアピールしていくしか無いんです。
とにかく日曜日は頑張ろう!
デートを成功させる作戦もバッチリです。

「・・・・・・・・・ふふふふ・・・」

・・・・・・・・・・・・










作戦は失敗に終わった。
やっぱり横島さんは鈍感です。

「横島さんのバカ・・・」

最初は良かったんですよ?とって置きのワンピースをおろして、ほんの少しだけメイクもしてみて、恋人同士みたいに駅前で待ち合わせて・・・

『おお、おキヌちゃんなんだか・・・いつもと違うか?いや、その・・・良く似合ってるよ。可愛いね。』
『え!そ、そうですか?よ、良かった・・・』

―― キャー♪ ――

可愛いだって可愛いだって可愛いだって可愛いだって・・・

―― キャー♪キャー♪ ――

嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい・・・
まずはこのままショッピングだけど、やはりココはあの作戦を実行しなきゃ!

―― ドキドキドキドキ ――

『あ、あの横島さん良かったら手を・・・』
『じゃあ、どうする?最初は何見るのおキヌちゃ・・・・・・え、何か言った?』
『・・・・・・いえ、何でもないです・・・』

―― シクシク ――

横島さん間が悪いです。
私は結局作戦その1を実行に移す事が出来ませんでした。せっかくデートっぽく決めたかったのにな・・・

『じゃあ、まずお洋服から・・・』
『オッケー♪ま、今日は久々の休日だし、ゆっくり行こうか?』

そう言って横島さんは歩き出しました。
私が繋げなかった横島さんの手は今はポケットの中に・・・

―― いっそ腕を組もうか? ――

暫く逡巡しましたが、結局は廃案です。私の意気地無し・・・

・・・・・・・・・・・・

『でも、本当に良いんですか?』
『ああ、勿論!なにしろ、昔じゃ考えられない位の収入でさ?正直、自分でも何に使っていいのやら・・・・・・ま、そんな訳だからこれくらいプレゼントさせてよ。おキヌちゃんにはズーッと世話になりっ放しだからね。』

横島さんが、今日の払いは全部自分が持つって言って来ました。副所長になった横島さんの月収はン億円だそうです。
通帳を見て「俺にこの金をどうしろっちゅうんじゃーっ!?」って叫んでいました。

『じゃあその・・・ありがとうございます、横島さん!とっても嬉しいです♪』
『ほんと?そりゃ良かった。』

あたりまえですよ。好きな人からのプレゼントを喜ばない訳無いじゃ無いですか?
あの時のお洋服だって大事にしてるんですよ?

―― ふふふ♪ ――

しかも今度は普段着ですもんね。いつでも着られます。

『じゃあそろそろ昼飯でも食う?』
『あ、もうそんな時間です?じゃあ今日は私に任せてもらっても良いですか?』

今日のためにクラスメイトに聞いた取って置きのお店が有るんです!
とにかくカップルしか居ない喫茶店だそうです。
これはもう行くしか!

『そう?じゃあ任せるよ。』
『ハイ!』

・・・・・・・・・・・・

『残念だったねおキヌちゃん。ま、また今度来ようよ。』
『・・・・・・ハイ・・・』

―― 横島さんのバカ! ――

私は激しく落ち込んでいた。

『本日はカップルデーとなっておりまして、カップルのお客様のみのご入店となっております。お客様がたはカップルで宜しいですか?』

―― キャー♪ ――

横島さんとカップル横島さんとカップル横島さんとカップル横島さんとカップル・・・

『え、そうなの?カップルじゃなきゃ駄目?』
『はい。これは我が店のキャンペーンの一環でして、本日は・・・』

私ラッキーです!

『よ、横島さん・・・それじゃあ私達、カップルって事で・・・・・・』
『じゃあ今日は止めときます。しょうがないね、おキヌちゃん。今日は別の店にしよう・・・え、何か言った?』
『・・・・・・いえ、なんでも・・・』

横島さんは、私とカップルなのは嫌なんですか?!
どうしてそうなっちゃうんですか!?
つくづく思い知らされました。横島さんが私の事をそういう対象として見ていないんだって事。
でも負けません!
まだ作戦は残っているんです!
必ず良い雰囲気を作って、横島さんに私を意識させて見せます。少しだけでも。

・・・・・・・・・・・・

・・・全滅です。
ことごとく失敗に終わりました。悲しみを通り越して怒りの感情が・・・

―― 顔に出しちゃ駄目 ――

しかし、なんて鈍感な人なんだろう?
どうして私、こんな人を好きになっちゃったんだろう?

『今日は楽しかったね?そのうち暇が出来たら又来ようか?』
『そうですね、また今度・・・』

・・・・・・・・・・・・










そしてさっき、事務所まで送ってもらいました。
ありえないとは思いつつも、横島さんのお部屋に誘ってもらえる事を期待してたんですよ?
絶対気がついてませんよね?横島さんですもんね。

「・・・・・・はぁ・・・」

それでもやっぱり好き!

「今度はもう少し積極的に行かなきゃ・・・」

なにせ、将来の、そして一生の夢がかかっているんですもの。
そんな訳で、私は毎日頑張っています。

「あなたも応援してくださいね♪」



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