ザ・グレート・展開予測ショー

こんなおキヌちゃん・・・好きですか?


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 2/24)


 登場人物が一部、壊れています。


 それはいつもと同じように事務所へと足を運び、別段、トラブルもなく過ぎようとしていたある日の出来事。そう、平穏無事―――寧ろ珍しいとまで言えるくらいに何もない日―――不思議なことと言えば、突然呼び出しておきながら雇用主の姿が影も形もなかったくらいのものだろうか―――シロタマもいなかったが、連中がいないのは・・・まぁ、そう珍しいことでもない。
 やることもないので事務所の中で寝転んでいると、洗濯物を畳んでいたおキヌちゃんが声を掛けて来た。

 「横島さん」
 「ん、何?おキヌちゃん」
 「いつ、プロポーズしてくれるんですか?」
 「・・・え?」
 「え、じゃありません。いつ」
 「あ、あのさ。何で、そんな話になるのかなぁ・・・?」
 「え・・・結婚する気なんてないんですか?」
 「・・・いや、あの・・・いきなり言われて戸惑ってるんだけど・・・」
 「では、順だてて」
 「いや、順だてられても・・・」
 「まず、私たちが出会ってからもう、二年になります」
 「うん」
 「随分と・・・本当に長い時が流れた気がしますけど・・・二年です」
 「うん」
 「バレンタインデー・・・何回ありましたっけ?」
 「・・・いや、それはいいから」
 「で、私たちが出会って二年・・・私が幽霊から普通の人間になったり、横島さんが文珠使いっていう、奇特な人種だったり・・・美神さんが亡くなったり」
 「いや、亡くなってないね。うん」
 「そうですよね・・・横島さんはまだ知らないんですよね・・・美神さんは・・・」
 「・・・おキヌちゃん・・・その手に持ってるものは鈍い無機質な光沢を放つ鉄の刃は何・・・?」
 「はっ・・・気にしないで下さい・・・それはともかく・・・結婚は」
 「気になるし。全然説明がなされていないんだけど」
 「ルシオラさんを産んであげる覚悟が出来ました」
 「簡潔だね。・・・いや、そう言われても・・・」
 「それと、横島さんのことが好きです。それはもう、殺したいほどに」
 「(無視)ああ、良い天気だ・・・」
 「雪が降ってますもんね。良い天気と言うなら良い天気かもしれませんね」
 「(無視)こんな日は猫は炬燵で丸くなるんだろうなぁ・・・」
 「そして踏まれるんですね」
 「・・・おキヌちゃん・・・あのさ。何かあった?」
 「愛に目覚めました、横島さんへの―――愛にっ!!」
 「・・・いや、物凄く嬉しいような迷惑なようないろんな意味で悲しいような」
 「無償の愛、あれも愛、これも愛、愛です」
 「・・・頼むから・・・いつものおキヌちゃんに戻ってくれよ・・・」
 「あなたが思ういつものおキヌちゃんとやらが、本当の私だとは限りませんよ!?」
 「・・・つまり、真実のおキヌちゃんはいつものおキヌちゃんじゃなくて、今のおキヌちゃんだと・・・」
 「それはどうかしら」
 「どっちだよ」
 「横島さんって、ボケも突っ込みもいけるんですね」
 「・・・まぁ、やらなければならない状況に陥ったら好き嫌い言ってられないし・・・」
 「嫌いなんですか?突っ込み」
 「いや、別に」
 「どっちだよ」
 「・・・ごめん」
 「何がですか?」
 「・・・って、話がずれてるじゃないかっ!!」
 「そうですね。何処まで話しましたっけ?」
 「・・・猫?」
 「ああ、そうでした。つまり、私は横島さんが好きですから結婚してくださいと言いたいわけなんです」
 「・・・猫」
 「私は幽霊の頃からあなたに憧れてきました―――そう、あなたが眠っているときにこっそりと忍び込んであなたの寝顔を見たり―――あなたが学校にいる時にこっそりと授業態度を見ていたり・・・美神さんのシャワーを覗いてる時に密告したり(怒)」
 「・・・ストーカー?」
 「愛ゆえの乙女の暴走です」
 「・・・どう違うのかな?」
 「『可愛いから許す』と言えるくらいの甲斐性は持ってください」
 「可愛いから許す」
 「じゃあ、これからも」
 「お願いですから止めてください」
 「可愛いからゆる」
 「いや、それはもういいから」
 「・・・で、結婚してくれますか?」
 「・・・いや、おキヌちゃんは俺なんかでいいの?」
 「私は横島さん以外考えられません」
 「おキヌちゃん・・・」
 「横島さんオンリーです」
 「・・・うん、嬉しいよ・・・」
 「オンリーユーです」
 「・・・じゃ、じゃあ・・・け」
 「後は現雇用主を沈めて氷室除霊事務所に改名すれば二人の将来は安泰ですよね」
 「っこ・・・、沈めて?氷室?改名?」
 「あ、婿養子になるのが嫌だったら・・・横島除霊事務所でも全然オッケーですよ」
 「・・・おキヌちゃん、物凄く不穏なこと言ってない?」
 「何がです?」
 「いや、沈めるとか・・・改名とか・・・」
 「・・・?何のことですか?」
 「あ、俺の聞き間違いだったのかな・・・」
 「極悪性悪な雇用主を撃退して私有財産を合理的に奪う。下克上の世の典型的な形じゃないですか」
 「・・・間違ってる、間違ってるよ、おキヌちゃん・・・いや、だからね・・・今は戦国時代じゃなくて・・・」
 「そんなこと分かってます。でも、世は下克上です」
 「・・・いや、あのさ・・・」
 「分かってます、横島さんの言いたいことは。師である美神さんを陥れるような真似はしたくないとおっしゃるんですね。それは私も同じです。でも、でもですよ?横島さん・・・もしもこのまま二人・・・あの人の下で働いていたら一生貧しい暮らしをしなければならなりますよ・・・まぁ、私としては・・・働いて夫を食べさせてあげる半分ヒモ状態なそんな夫婦生活も悪いとは思いませんけど・・・。でも、やっぱり、生まれてくるルシオラさんの為にも経済的に豊かな家庭であったほうがいいのではないかと。それでですね、やっぱり横島さんにはやってもらいたいことがあるわけです」
 「・・・え」
 「無理なお願いではありません。汚いことは全部私がします。ですから、横島さんは―――そんな私を受け入れて欲しいんです・・・例え、この手が血に濡れようとも・・・私を、愛して欲しい・・・。駄目ですか?駄目なら早く言ってください・・・。それなら私も諦めますし・・・」
 「あ、いや、だからね・・・」
 「でも・・・横島さんが好きであり続けると言うことだけは・・・許して下さい・・・それまで否定されたら・・・私・・・生きていけない・・・」
 「・・・おキヌちゃん・・・」
 「・・・で、どうなんです?」
 「へ?」
 「私を受け入れてくれてくれますか?血にまみれてしまうこの私を・・・」
 「いや、あのさ・・・血にまみれる必要はないと思うんだけど・・・」
 「・・・駄目です。世は下克上ですから―――」
 「あ、あのさ。俺、昨日、独立をしてもいいって言う許可が下りたんだ」
 「へ?」
 「美神さんが認めなければいけないって話だっただろ?でも、特別に美智恵さんが出してくれたんだ・・・」
 「美神さんのお母さんが・・・」
 「娘は今のままじゃあなたに頼りきりになるから・・・って言ってたけど・・・。つまりは・・・別に美神さんをどうこうしなくても横島除霊事務所は開けるんだ・・・」
 「あ・・・あの・・・」
 「あ、確かに・・・財産とかそんなものはないし・・・厳しい生活が待ってるかもしれないけど・・・俺、身を粉にして頑張るからさ・・・」
 「横島さん・・・」
 「だから・・・こんな俺で良かったら・・・結婚してくれないか?」
 「・・・え・・・あ・・・はいっ!!こんな私で良かったら・・・」






























 「・・・むが・・・むがっ!!」

 じじっ・・・結婚してくれないか・・・じじっ・・・きゅるきゅる・・・え・・・あ・・・はいっ!!こんな私で良かったら・・・ぴー・・・かしゃっ・・・

 「と言うわけです。このように、横島さんは私にプロポーズしてくれました。一緒に幸せな家庭を築こうと。この世の誰よりも君を愛してると」
 「むがっむがっ!!(そこまでは言ってないでしょ!!)」
 「確かに、最初は信用もないですし―――厳しい生活が待っているでしょう・・・でも、愛は逆境でこそ燃え上がるものですから。邪魔をして下さっても結構ですよ。でも、嫌われるのは美神さんですけど。あ、シロちゃんとタマモちゃんも私たちに付いて来るそうです。シロちゃんは弟子兼愛人として。タマモちゃんは愛人として。おや、意外そうな顔をしていますね・・・ふふふ・・・獅子たるもの、身中に虫を宿らせるのも面白いかもしれませんから―――あなたにとっての私のようにね・・・まぁ、私はそう簡単に食い破られたりはしませんけど・・・ふふふ・・・ははっは」



 「ギリィィィ・・・むぐっ・・・(おキヌちゃん・・・)」


































 「・・・おキヌ殿・・・甘く見てもらっては困るでござるよ・・・」
 「獅子身中の虫・・・虫なんて簡単に決めつけてしまっていいのかしら?飲み込んでしまっていたものが肉食獣である可能性もあるのよ・・・ふふふ」



 続かない。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa