ザ・グレート・展開予測ショー

交差じゅーご。


投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/ 2/23)

『それだけじゃないでしょ?』
くすりと、口元には淡い笑みすら浮かべ、少年は言う。
穏やかな、柔らかい声で。
ぎりぎりと、自分に向けられる刃物は明確な憎しみが込められているのに、その声音はどこまでも優しく、そして暖かい。
底の見えない瞳に浮かぶ炎は、激しいのに、その表情は凪いだ風のようだ。
ぞわりと、本能的な恐怖が湧きあがる。
例えて言うならば、人が野生の肉食動物をなんの理由もなく恐れるようなそんな恐怖。
逃げなければ、食われる!
という。
だが、藤吉郎は逃げない。
ぐっと、両足で大地を踏みしめ、真っ直ぐに少年を見る。
それは、きっと少年の言葉が図星である証拠でもあるのだが。
─【逃げたら死ぬより酷い目に合わされる!】
もちろんそれも、理由ではある。
と、いうかそれくらいの事は、本当にしそーな人たちだ(特に美神)。
だが、この人たちは自分に声を掛けてくれたのだ。
仕事かもしれないけど、助けてくれたのだ。
美神は、藤吉郎の安全を確保するように言った。
シロと、タマモは、自分の能力を見ても、話してくれた。
おきぬは、自分の怪我を治してくれた。
横島は………まあ置いといて

嬉しかったのだ。
たったそれだけの事が。
とても、嬉しかった。

いままで自分が生きてきた処は、厳しいところで、弱者は強者にふみつけられるのが当たり前だった。
みんな自分が生きるのに精一杯で、人のことを助ける事なぞできなかった。
助ける時は、命がけでするとき。
身も知らぬ人に助けてもらう、優しくしてもらう。
それがどんなに尊い事か藤吉郎は知っていたのだ。
藤吉郎は、短い、人生のなかでそれを学んでいた。

「ああっ文句あっかっ!!!」
そう吼え、藤吉郎は、左足で身体を支え、残った右足を垂直に上げ日本刀を蹴りあげる。
「!」
一瞬、刀が少年の頭上にあがる。
本来なら、刀を蹴り飛ばしているはずだったのに、少年は握ったままであるということはこの少年かなりの握力である。
が、それで充分。
藤吉郎は、きらっと目を光らせそのまま、だんっと、右足を大地につけた勢いで身体を捻りそのままくないを一閃させる。
くないが、少年の顔めがけて向かう。
が、その少年は、その瞬間
藤吉郎の、目の前から「空間ごと」消えた。
ちっと藤吉郎は舌打ちをすると同時に、手に持っていたくないを咄嗟に持ち替え、体制の整わないままくないを投げる。
しゅっと音をたてて、まるで糸で操っているかのように真っ直ぐ向かったくないの先には、もちろん少年。
きぃんっ
と金属音を響かせ落とさせる。

『やっぱり、流石だ』

まるでなにか試すかのような、口調で言う。
「なにがだよっ」
得たいのしれないものを感じながらも、藤吉郎。
「そうでござる、流石だなんかどうでもいいでござる」
と、そこに不機嫌そうな声が降ってきた。
あっと、考える間のなく、少年の首筋に霊破刀を当てながらシロ。
そりゃまあ、車から振り落とされたらふつー不機嫌になるだろう。
「て、ゆーか今のさっきのとうきちろーと同じことしてたよねえ」
うーんと首を傾げつつタマモ。
というか、ほぼ初対面の人間を、呼び捨てとはいい根性である。
くるりっと一指し指を一回転させ、狐炎を指のうえに起こす。
いつでも少年にむけて、攻撃できるように。
「そうそう、それよりも、車の修理代」
そして、いつの間にか反対側には美神がおり、手に持っている神通棍にはばりばり霊力が流されている。
是が非でも、これだけの損害の分の金はぶんだくってやるわよと、やる気まんまんだ。
どうやら、美神には謎がどうこうよりも、この損害を埋めることのほーが大事らしい。
「できればもうちょっと、こー緊迫感というかなんというか…」
横についている横島はそうボヤキながらも『縛』の文珠を手に持っている。
「あはは…」
おきぬにしても、ネクロマンサーの笛をかまえ周りの異変に気をくばっているし、美神もなんだかんだいいながら、六感をフルに使って周囲を警戒している。
まあ、一応警戒はしているし、緊迫もしているのだが。
なんだろう、この脱力感は。
ちなみに、まだ光は引いていない。
今この瞬間やっと薄れ初めているといったところだろうか?
それだけの時間にこれだけの動きで、これたこのメンバーはここにいるのだ。
それは、生半可な事で出来る事ではない。
単に技術の問題だけではなく、それぞれが、それぞれの役割を認識しており今自分が何をすべきかということを理解しているのだ。
時間にして数秒、このメンバーは何を言うまでも無く、相談するでもなく、自分のすることをしている。
そして、何があろうと、あわてふかめかないその精神力(単に図太いという意見もあるが)。
それこそが、このメンバーのこのメンバーである所以であるかもしれない。

だが、少年は、そんなメンバーなど目に入っていないように藤吉郎を見る。
いや、最初から、意識していないかもしてない。
少年の目の前にる、藤吉郎以外には。
ゆったりと、顔に笑みを貼り付けたまま、言葉を紡ぐ。
首筋に当たる霊破刀の感触にも、眉ひとつ動かさずに。
あまりの、反応のなさに、美神が眉をひそめるほど

『驚かないんだね?』

と。
何を差しているのか、考えるまでも無い。
さっきの『空間転移』である。
そんな少年の声に、藤吉郎は首を傾げ何をいうんだ?とばかりに言った。

「驚くかよ。アンタ『トキヨミ』だろう?」


つづく

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