ザ・グレート・展開予測ショー

語ろう会 ―5前半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 2/23)

一通り罵り合った後、一同は再び酒を酌み交わしていた。
結局のところさっきのやり取りも、こいつらにとってはコミュニケーションの手段だったと言って差し支えないだろう。
今は、割と静かにチビチビとやっているのだった。

「そういやピート・・・・・・あいつはどうよ?」
「えっ?あいつって・・・ああ、西条さんですか?」

そこで不意に思い出したかのように、横島がピートに尋ねる。

「そう。その西条指令のこった。あいつは相変わらず、寂しい一人身だろ?」

現在の西条の肩書きはICPO日本支部長官。現役を引退し、顧問のような位置づけにいる美智恵の後をうけての人事だった。
彼の手腕は素晴らしく、過去に数々の功績を上げている。そのため日本支部の長官であると同時に、ICPOの総会でも大きな発言力を持つに至っていた。
現在44歳の同期では、彼は最も評価を受けた地位にあると言えよう。

「寂しい一人身って・・・・・・まぁ、確かに西条さんは未婚ですが・・・」

尚、ピートはかねてより希望していたオカルトGメンへと就職し、今では西条の右腕として働いていたりする。

「西条の奴、ま〜たGメンの若い女性隊員を引っ掛けてるんじゃねぇのか?いかんぞー、ピートがしっかり監視しておかんと。奴の魔手から、ちゃんとお姉ちゃん達を守るんじゃーっ!!」
「ハハハ・・・え〜と、西条さんも横島さんに『だけ』は言われたくないんじゃないかなぁ〜・・・なんて?」

ピートは乾いた笑いで答えた。そして、周りの面子もその意見にウンウンと頷いている。
なにしろ横島は、複数の嫁さんを貰うという日本国民としては仰天の離れ業を披露し、更にそこから又その数を伸ばすのではないかと思われている男だったからだ。
西条じゃなくたって、引っ掛けるとか魔手だとかそんな事、横島に『だけ』は言われたくないだろう。

「ぐぞ〜・・・てめえら・・・・・・だ、だがなピート!俺はとりあえず年が明けてから、3度はあいつが違う若い姉ちゃんと繁華街を歩いてる所を見たことあるんだぞっ!?」
「うっ!」

横島は悔しがりつつも、そんな発言をした。
ピートの額に汗が浮かぶ。

「俺は2回見てるぜ。」
「ワシも2回じゃー・・・」
「ワイは見とらんけど、冥子が1回見たらしいど?」

今度は、横島の意見に支持が集まる。

「で、どうなんだピート?やっぱりあいつは結婚する気はねーのかよ?」

言葉に詰まったピートに横島が尋ねた。

「はは、は・・・えーと、はい。西条さんはICPOの中では生涯独身を宣言してまして・・・・・・」
「生涯独身だぁ〜?」

ピートの言葉に、横島は眉をひそねる。

「え、ええ・・・『僕はこの仕事に誇りを持っているからね。この身は世界中の力無き人々を守る為に有ると考えている。だから家庭は持ちたく無いんだ。』・・・だったかな?この台詞が好評みたいで、女性隊員達からの人気が高いんですよ。まぁ、だから色んな女性と飲みに行ったり・・・」
「ざ〜い゛〜じょ〜〜〜!!!」

横島は全身で怒りを表した。

「あんにゃろー?!よくも抜け抜けとそんな台詞を吐けるなアンチクショーッ!!」
「よ、横島さん落ち着いて・・・」

今にも破壊活動を起こしそうな横島を、ピートが必死でなだめる

「おい、何もそんなに怒るこたぁ〜ねーだろが?西条の旦那だって別にそれくらい・・・」
「そうですジャー・・・立派な台詞だと思うがのー・・・・・・」

雪乃丞とタイガーもピートに習って抑えに入る。だが、横島の怒りは止まらなかった。

「別にあいつが何してようと・・・まぁ、確かに勝手だがなーっ?!だが、さっきの台詞は許せんぞっ!絶対に嘘なんだからなっ!!」
「嘘?どこがや・・・生涯独身って所か?この身は〜の部分か?特におかしく無いやろ?西条やったら素で言いそうな台詞やないか。特別、嘘って事も・・・」
「断言してやるっ!絶対に嘘だっ!お姉ちゃん達の気を引く為に言ったに決まってる!もしくは自分に酔ってるんじゃねーのか?!なにしろあいつは・・・」

歯軋りをする横島。

「あいつは、俺との結婚が決まった令子にプロポーズしたんだぞっ?!」
「えっ?」
「なっ?!」
「うおっ!?」
「なんやて?」

横島の台詞は、旦那衆にとっては初耳な事だった。

「まぁ、令子が軽くあしらったらしいんだがな。その辺は詳しくは教えてくれんかったから良くは知らんのだが・・・・・・あいつはショックで1週間程体調を崩したらしい。いい気味だな。」
「まぁ、だろうなぁ・・・あの頃のお前と美神の旦那は、こう言っちゃあなんだが傍で見てて恥かしいくらい良い感じだったもんな。」
「ですのー・・・あの時の美神さんが西条さんにプロポーズされても、なびくとは思えませんのー・・・」

雪乃丞とタイガーは、当時を思い出して今の発言に納得する。

「でな?あいつ、搦め手って事でおキヌに色々と吹き込んで・・・」
「あっ!まさか?!」

今度はピートが驚きの声を上げた。横島が言いたい事に気がついたようである。

「そう。おキヌに色々と吹き込んで、俺と令子の間に割って入らせて・・・・・・くそっ、思い出したら腹が立ってきたな!それで、令子との結婚話を白紙に戻そうとしやがったんだ!!」
「な、なんと・・・そら又、西条さんもえらい事考えよったな・・・」

全員が驚きの表情を見せていた。
だが、直ぐに別の事に思い至る。

「ん?でも、結局の所お前・・・美神の旦那とおキヌの奴、両方と結婚しちまったろ?」
「そうですのー・・・」
「確か、小竜姫様を通じて神界に頼んだんでしたっけ?それで日本政府に圧力かけて・・・」

そう。何故、横島家が重婚を認められているのかというと、それにはこんな事情が有ったのだ。

「政府には美智恵さんの方からも手を回してくれてな・・・ま、大戦の功績を鑑みてってやつだな。大きく公には流石に無理だけど、戸籍その他のあんまり人目につかない部分でならって事で認めさせた訳さ。」
「しかし、今聞いてもやっぱとんでもない話や。」

六道が薄く笑いながら言う。

「ですね。どっちも選べないから両方と結婚するだなんて・・・・・・あの時、唐巣神父が神の試練に負けそうになっていましたよ。」
「待て!お前ら何か勘違いしてるだろ?」

と、横島はさも心外だと言いたげに手を広げて待ったをかけた。

「何が勘違いだ?事実だろ?」
「あのな、あの時両方と結婚すれば良いって案を出したのは俺じゃ無いんだぞっ?!」
「はんっ?馬鹿言うな。お前以外の誰がそんな非常識な提案するんだよっ?」

―― パンッ ――

横島の頭をはたきつつ、雪乃丞がヘラヘラと笑う。無論、横島の台詞など完全に信じていなかった。

「くそっ!なんてこった・・・俺は今までそういう風に見られていたのか・・・・・・」
「いや、そう言う風にも何も・・・」
「事実ですからのー・・・」

ガックリとうなだれる横島に、更なる追い討ちをかけていくメンバー達。

「くそーーーっ!いいか?あの時ソレを言ったのは・・・」

・・・・・・・・・・・・










「ああ、それなら両方と結婚すれば良いんじゃないですか?」
「はっ?」
「へっ?」
「えっ?」

西条の策略の通りに行動してしまい、おキヌちゃんは結婚が決まった俺と美神さんの間に割って入ってくる事が多くなった。
しかもはっきりと俺に好意を示してくれて、なんていうか美神さんをあからさまに挑発するようになったのである。
最初は流していた美神さんも、それが続くと当然面白くないわけで・・・
俺もおキヌちゃんが相手だと強く出れない所があり・・・・・・その、つまり板ばさみになる事が頻繁に・・・
ああ、それを一言で的確に表現する日本語があるよ。は、はは・・・

―― 修羅場! ――

美神さんとおキヌちゃんに挟まれたまさに修羅場を俺が味わっていた所で、小竜姫様が事務所を訪れてきた。
それでその後に事情を聞かれ説明した所、すすっていたお茶をテーブルに置いてから小竜姫様が仰られた言葉が冒頭のソレである。

「えっ?何か問題でも?」

俺たち3人の驚きぶりに、逆に小竜姫様が意外そうな顔をする。

「出来る訳無いでしょーーーっ?!そんなもん出来とったら、こんな事しとらんですよーーーっ!!」
「小竜姫様?今の日本では重婚は一切認められて無いの!江戸時代とは違うのよっ!?」
「そうですっ!だから横島さんにははっきりと決めて貰わなきゃいけないんですっ!!」

俺たちは必死に説明をした。

「だからおキヌちゃん?もうはっきり決まってるでしょう?横島クンはわ・た・しと結婚するのよ?」
「ヤです!結婚するまではまだ決まって無いです!いくら美神さんでもこれは譲れないです!」

ああ、2人ともお願いだからやめて。
畜生!西条の野郎っ!!純粋なおキヌちゃんを言葉巧みに誘導しやがってっ!!
おそらく、結婚するまではまだ決まっていないっていうのも西条が使った台詞なんだろう。
あんにゃろ!とにかくコレの件が片付いたら、絶対ただじゃおかねーからなっ!?

「ああ、なるほど。それは困りましたね。う〜ん・・・」

と、又お茶をすすり始める小竜姫様。
どうやら事情は通じたみたいだけど、言葉と裏腹に全然大変そうだって感じが無い。
結局は他人事って訳ですね?
チクショー!!確かに他人事だがなー!

「ああ、それなら私が頼んでみましょうか?」
「はっ?」

「へっ?」
「えっ?」

先程と全く同じリアクションをを返す俺たち3人。
てか、どう言う意味ですか小竜姫様?
頼むって誰に何を頼むんですか?

「今の政府に重婚を認めさせれば問題は無いんでしょう?神界から頼めばなんとかなるんじゃないでしょうか?何しろ世界を救った英雄ですから、これくらいの要求もそれほど無茶だとは思いませんよ?」
「・・・・・・・・・・・・」


<後半に続く>

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