ザ・グレート・展開予測ショー

修行の日々


投稿者名:初心者1069
投稿日時:(03/ 2/22)

「ふう‥。これで三つはとりあえず極めたかな?」

少年はそう言って大きなため息をついた。
その手には<超><加><速>と一文字ずつ入った三つの淡く光る
ガラス玉のようなものが握られている。
少年から見た周りの景色はほとんど動いていない。

「しかし、同時に使うのを一つ増やす修行にずいぶん時間がかかっちまうんだな。
 これじゃあいつ約束を果たせるのかわかったもんじゃねえな。」

そう独り言を言っている少年の顔は暗かった。

「そんなに焦らないで下さい。それとも、私が師匠と相談して考案したこの修行にケチをつける気ですか?」

動きがほとんどない景色の中で急に人が動き出した。
その人物も超加速状態に入ったのだ。
正確にはそれは人と呼ぶべき存在ではない。彼女は『神様』だった。
この『神様』の見かけはほとんど人と変わらない。
頭に角が生えており、逆鱗と呼ばれる触ってはいけないものがついているだけだ。
この神界の名門竜神族出身の神様がこの少年の今の師匠である。
超加速を特殊能力として備えている神剣の使い手だ。

「聞いてらしたんですか小龍姫様‥。
 ケチをつけるなんてとんでもないです。
 元々俺のわがままに付き合ってもらってるんすから。
 ただ、ここまで修行してまだ三つしか同時使用することができないなんて、
 俺には才能がないのかなあなんて思ったんです。」

「分かっているのなら、人の何倍も努力して下さい。
 才能の差は努力で埋めることができるんですから。
 さて、文殊の三個同時使用はマスターしたようですし超加速をといて下さい
 横島さん。
 いくら修行した体でももうじき体への影響も出始めますし、
 パピリオがまたうるさいですから。」

そういうと小龍姫はまた景色の一部に戻っていった。

「才能の差は努力で埋めることができるか‥
 まったくうちの雇い主に聞かせてやりたい言葉だな。」

少年―名前は横島という―はまたひとつ大きなため息をつくと、
文殊の効果をといた。

世界が急に動きはじめる。

「二人で加速中に何をしゃべっていたのでちゅかヨコチマ?」

まだ超加速状態から抜けきってない横島の耳にスロー再生されたような声が聞こえてきた。
声をかけてきたのは小学生くらいの少女である。
この少女は昔世界を滅ぼそうとした一味の幹部である。
だが、今は保護観察処分という名目でこの妙神山に小龍姫の弟子として平和にくらしていた。

「なんでもないさ。」

「答えになってないでちゅ。兄弟子に向かってそんな言い方していいんでちゅか?
 まったく新入りのくせになまいきでちゅ。
 おまけにわたしがまだ習っていない超加速も先に習い始めるし‥‥。」

どうやら彼女は『新入り』に先を越されてふてくされているようだ。

「まあ、許してくれよ。
 俺はお前にとってもいいことのために修行してるんだから。」

「またその答えでちゅか。
 わたしは今更ヨコチマの文殊で早く大きくなろうなんて思わないでちゅ。
 昔と違ってわたしにも十分な時間があるんでちゅから。
 しかもそれなら<成>と<長>の二文字でたりるはずでちゅ。
 さては、まだ何か隠してまちゅね?」

横島がなんと言おうかと考えていると、横から助け舟が出された。

「パピリオ!次はあなたの修行ですよ。
 早く魔法陣の中に入りなさい。」

「ほら、小龍姫様が呼んでるぞ。」

これ幸いとばかりに話を終わらせようとする。

「まあ、いいでちゅ。隠し事はいつか暴いてやるでちゅ。
 でも、一つ約束してくだちゃい。絶対危ないことはしないって。」

彼女は先の大戦で三人の姉妹のうち姉を一人失っている。
生き残ったもう一人の姉は魔界で軍隊に入ったため、手紙のやり取りはしているが滅多に会うことはできない。
横島までいなくなれば彼女は本当に独りぼっちになってしまう。
もちろん妙神山には小龍姫がいるが、それはまた別である。
横島はすでに彼女にとって家族と言ってもいい存在だった。

「ああ。わかった。お前を一人にさせるようなことはしない。」

「な! 別にそんなことを言ってるんじゃないでちゅ。」

顔を真っ赤にして否定しているがどこかほっとした表情だった。
照れ隠しというやつである。

「パピリオ早くしなさい。」

これ以上待たすと後が怖いと判断したのか
パピリオは魔法陣に向かって走っていった。

「どれだけかかるかわからないけど、
 必ず迎えにいくからな。ルシオラ‥‥」

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