ザ・グレート・展開予測ショー

黒き翼(20)


投稿者名:K&K
投稿日時:(03/ 2/21)

 「・・・・・、いやよ。」

 令子はきっぱりと言い切った。

 「なぜですか!!」

 横島は思わず声を荒げた。そんな彼を哀れむように令子は言葉をつづける。

 「やっぱり、あんた何にも解ってないわね。ワルキューレはね、あの事件で人を殺したのは魔族軍で
  はないってことをママ伝えたくてあんたを呼んだのよ。」

 「えっ、それってどういうことッスか?」

 「彼女、あんたに話せばいずれ私を通してママに話が伝わるって考えたのよ。よく考えてみなさい。
  あのプライドの高い女がなんの思惑もなく自分の任務のことを、しかも失敗した話を人間にすると
  思う?」

 「でも俺、ワルキューレに、もし他人にしゃべったら半殺しにしてやるってスゲー脅されたんスけど
  。」

 「多分身を隠す時間をかせぎたかったんでしょ。いくらママとは気心が知れているといっても所詮は
  魔族と人間、100パーセント信頼できるわけじゃない、Gメンが自分を捕らえようとする場合に
  そなえたかったのよ。いくら横島君でもこっぴどく脅しておけば一日ぐらいは黙っていられるだろ
  うって考えたんでしょうね。」

 『でもそんな話を聞けばGメンは当然ワルキューレをおっかけるんじゃないの?』

 タマモが口をはさむ。

 「人間に化けた魔族を探し出すのは本当に難しいのよ。ママはそんな無駄なことしないわ。それより
  森村って奴の背後関係を調査した方がずっと効果があるもの。ワルキューレもその辺は解っている
  はずよ。」

 「じゃあ今回はしゃべっても問題ないんですね。」

 横島はほっとしたように肩を落とした。

 「まあね。でもこんなことも解らないんじゃ、あんたまだ当分見習のままね。」

 なぜか、少し嬉しそうに令子は言った。

 『さすがは美神殿、先生が師事するだけあって鋭い洞察力でござるな。』

 シロが関心したように呟く。

 『そうかしら、似た者どおしで相手のことが良く解るだけじゃないかしら。』

 タマモがまた口をはさんだ。

 『タマモ、それってどういうことでござるか。』

 『美神さんとワルキューレってプライドが高くって意地っ張りで、見栄っ張りのくせに目的のために
  は手段を選ばない所があるじゃない。この場合美神さんは自分だったらどうするかって考えただけ
  じゃないかしら。』

 『ふむ、言われてみればそのとうりでござるな。』

 「ああ・・・、シロちゃん、タマモちゃんそんなこといってると・・・、」

 この後二人に起こることを予期したおキヌがあわてて声をかけたがすでに遅かった。

 「シロ、タマモ、あんた達今日から一週間肉油揚げぬき。」

 問答無用といった調子で令子は二人に刑を宣告する。

 「あの・・・、美神さん、一週間てのはちょっとかわいそうなんじゃないですか。」

 「甘いわよ、おキヌちゃん。二人とも居候なんだから自分の立場をしっかりわきまえさせなきゃ。」

 石化した二人の代りにおキヌが控えめに抗議したが、非情な答えにあえなく沈黙した。

 『タマモ、お前がわるいんでござるぞ!』

 『なによ、あんただって言われてみればそのとうりだって言ったじゃない!』

 やがて石化が解けた二人はいつものように口喧嘩を始めた。

 (タマモの評価を聞いたらワルキューレはどんな顔をするかな。)

 その場面を想像してニヤニヤ笑っていた横島の耳に、来客を告げるブサーの音と人工幽霊一号の声が
飛び込んできた。

 『オーナー、西条様がおみえになりました。』

 「わかったわ。おキヌちゃんお願い。」

 「はい。」

 おキヌが玄関へ向かう。やがて、応接の入口に西条の姿が現れた。

 「やあ、令子ちゃん、相変わらず賑やかだねここは。」 

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa