ザ・グレート・展開予測ショー

失われたドクロ(6)


投稿者名:MAGIふぁ
投稿日時:(03/ 2/21)



これは焦りを感じている半吸血鬼のお話である。



最寄の村から歩いて2日。文珠の反応を頼りに辿り着いた所は……やっぱり何も無かった。

そして、文珠はその何も無い地面を指していた。



………………………………



不吉な予想が一行の頭に浮かぶ。

「ま…まさか、先生…」

「…ピッ…ピート!気をしっかり持て!まだそうだと決まったわけじゃない!」

「そ、そうでござる!暴走するのはまだ早いでござるぞ!」

ここで暴走されてはかなわん、と動揺するピートを宥める横島とシロ。

そしてタマモがポツリと言った。

「で、どうするの?取り合えず掘ってみる?」



「結局こーゆー仕事は俺かいっ!」

伸ばした栄光の手をスコップがわりに穴を掘る横島。さすがに穴掘りの道具は持ってきていなかったので、彼一人だけが作業している。

だが、邪魔な木の根を切り裂きつつ1メートル掘っても、2メートル掘っても何も出てこなかったのだ。



「これは…地下に何かあるって事でしょうか?どうします、美神さん」

「う〜ん……シロ、タマモ。2人で辺りに何か無いか探して」

「は〜い」「了解でござる」

密森の中、何か不自然なものが無いかを探すのに美神達は慣れていない。

野生のカンとも言うべきものを持っているシロタマに見つけられなかったら、せっかくここまで来たのに情報を集めなおしに一旦町まで引き返さないといけないだろう。

一応横島にそのまま地面を掘らせつつ、ピートが辺りを見回り、美神がテントで寛いで待つ事30分。



「見つけたでござる!」

シロがいかにも、な感じの洞窟を見つけてきた。

地面に走った幅1mくらいの亀裂の奥にぽっかりと口を開け、怪しい霊気がそこから立ち上っているというのだ。

「それが本当なら大当たりね…良くやったわ、シロ」

美神に珍しく褒められて尻尾を振り、タマモに対してどうだとばかりに胸を張るシロと、それを軽く受け流しながらも少し悔しそうなタマモ。

そして一行がシロの案内でそこに行ってみると、シロの話通りの怪しい洞窟が姿を現した。



「妙ね…」

洞窟の入り口を一瞥した美神が眉をひそめて言った。

「何が妙なんです?それより早く入りましょう」

「はぁ…慌てる何とかは貰いが少ないって言うでしょ?ピート。いい加減に落ち着きなさい…気付かないの?足跡も何も無いって事に」

「確かに誰かが入った形跡はありませんね。でも、それがどうかしたんですか?」

「そうね。誰も入った様子は無いわね…唐巣先生も含めて、ね」

美神の言葉に、ピートだけではなく洞窟に入ろうとしていた全員の足が止まる。

ピートはあわてて横島から預かっていたカプセル入りの“探”文珠を取り出して発動した。

そして文珠は…洞窟の方を指した。ほっとしたピートは美神に文句を言う。

「なんだ、脅かさないで下さいよ美神さん…この洞窟でいいんじゃないですか」

「誰も唐巣先生がいないなんて言ってないわよ?ただ誰も入った様子が無いって事は、ここ以外にも入り口があるって事と、ここが普通の入り口じゃないって事。つまり侵入者避けのワナくらいあるでしょうから注意しろって事よ」



「で…こうなる訳ですか?」

洞窟の中を先頭に立って歩かされるピート。

ちなみに隊列はピート、横島、シロ、美神、おキヌ、タマモの順になっている。

「だって、お前なら大抵の事じゃ死なないだろ?落とし穴とかあっても飛べるしさ」

「いや、まぁそうなんですけど…」

横島の言う通りではあるのだが、何か釈然としないピートだった。



「あれ?」

「へぇ…ずいぶんしっかりした造りだな…最近になって造られたのかな?」

洞窟をしばらく進むと緩やかな下り坂になり、壁や床が岩肌から石組みの物に変わった。

均等な大きさの石が隙間無く組まれていて、崩れる心配はしなくていいようだ。

「違うわ。この辺りにあったマヤ文明の遺跡は高度な石の加工技術と建築技術で造られているの。この位は当たり前よ」

マヤ文明は3〜9世紀に中米で栄えた、パレンケやティカルなどジャングルの中に大都市を築き上げた文明である。

そしてその遺跡は金属や木などではなく、石で造られている。マヤ文明では金属加工技術が生まれなかったのだ。その代りに石の加工技術が発達し、それは現代とほぼ遜色ないほどの高い技術があったらしい。

「ふ〜ん…そーなんですかー」

美神のマヤ文明の解説に横島は軽くそう言った。煩悩少年にとってはあまり興味を持てなかったようだ。

だが美神の解説は続く。

「あと、マヤには生贄の風習があってね。神様に心臓を捧げる儀式とかを頻繁に行っていたらしいわ。で、ある程度文明が発達しても生贄の儀式はそのまま。それを行う神官も偉いまま。王様も生贄の儀式を止めようとしない……アンタみたいな庶民はどうすると思う?」

「え?ええっと…」

興味が薄かったんで、いい加減に聞いていた横島は答えらず、代わりにタマモが答える。

「文字通り犠牲にされ続けてて、それが無駄だって解ったら…当然、暴れるわよね」

「そう。9世紀後半に王の権威が失墜して、人々が自ら都市を放棄してマヤ文明は滅んだって言われてるけど…私は原因は多分そんなもんだと思ってるわ」

「犠牲を強いられ続けて反抗する、か…わかる。痛いほど良く分かるぞ…」

げしっ!

碌に聞いていなかったくせに、いらん所だけ聞いていて、いらん事を口走ってしまった横島は美神にどつかれ床に倒れた。



「いてて……………あれ?」

横島が起き上がろうと壁に手をつくと、その壁は何の手ごたえも無く回転ドアのようにクルリと回転した。

「のわぁぁ〜〜〜〜〜〜〜…」

そのまま勢い余って壁の向こうに転がっていく横島。

「「………………はっ!?先生!!」」

意外だった為に呆然とそれを見ていた一行だったが、シロが弾かれたように横島の後を追いかけ、ピートが通路の先に向かって突っ走った。

「シロ!?ってピートもどこ行くのよ!」

「横島さん!シロちゃん!ピートさ〜ん!」

叫ぶ美神とおキヌ。

「ったく!シロはともかく、ピートは一体どうしたってのよ!?」

一人冷静だったタマモが美神の愚痴に答えた。

「暴走したんじゃないの?さっき生贄の話が出た後、ずっとアイツ俯いてフルフル震えて考え込んでたから…」

どうやら唐巣が生贄にされるかも知れないと思っての暴走らしい。

「え〜っと…美神さん、どっちを追いかけます?」

ピートに呆れつつ、美神に問い掛けるおキヌ。

「決まってるでしょ、横島君の方よ。この状況で荷物を無くすワケにはいかないでしょ?」

「はぁ…」

おキヌもタマモもピートを放っておく事と、横島を追いかける事に異議は無かったので「荷物なの?」というツッコミは口にしないでおいた。

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