全力疾走(後)
投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 2/20)
その後もおキヌは走り続けた・・・走り続けて走り続けて・・・・途中
悪霊に絡まれたり、地縛霊の幼女を成仏させてあげたり、偶然会った親友二人のケンカを諌めたり
話したがりの浮幽霊のおばあさんの話を聞くはめになったり、ちょうどバスが来てラッキーと思って乗ったらバスジャックにあったり・・・
もちろん何度か横島の自宅や事務所に電話したりしたけど繋がらず・・・
とにかく人生の不幸が今日一日で降りかかってきたような出来事を乗り越え・・・・
やっと待ち合わせ場所まで走ってあと5分というところまで来た。
「ぜぇぜぇ・・・・・や、やっと・・・・」
おキヌはもう泣きたい気分だったがここで泣いてる場合じゃないと、その足を動かし始めた。
もう目の前だ・・・・と思ったとき・・・
「うわああああぁぁぁぁんんーー!!お母さーーーん!!!」
その声に反応しておキヌは振り向いた。
そこにいるのは5歳くらいの男の子だろうか、先ほどの泣き声を聞けば迷子というのは容易に想像できる
だが、ちょうど帰宅ラッシュの時間で早く我が家へ帰りたいのだろうか、周囲の人間は誰もその子へ声をかけようとしない。
おキヌはちらっと時計を見る・・・・PM5:32・・・・・・・もちろん待ち合わせ大オーバー、
今から行っても横島がいるはずもない、それでも行くのはある意味義務だし、まだいるかもしれないという希望もある。
だから・・・・おキヌの取った行動は・・・・
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「本当にありがとうございました!」
「お姉ちゃんありがとう♪」
先ほどの男の子が嬉しそうな顔で母親の腕の中でお礼を言った。
その笑みにおキヌも笑顔で返す。
「いえ、よかったね」
おキヌはそういって男の子の頭を撫でると一礼してその場が走り去った。
ここから噴水広場までは10分という位置・・・・走っても・・・・・・・・・もちろん遅刻。
駅前の時計は無情にもPM6:10と針を指している。
(それでも走らなきゃ!)
おキヌはもう体力の限界まで来ていた・・・日常生活でこれほど体力を使った記憶などほとんどないくらい・・・さらに・・・
ポツ・・・ポツ・・・ポツポツ・・・・・・・・・・・・ザーーーーーーーーーーーー。
(うそーー!?)
夕立・・・・というのには少し遅い雨にその体が濡れていく、
普通なら雨宿りというところだが、今の現状がそうはさせてくれなかった。
とにかく待ち合わせ場所へ・・・おキヌはその想いだけ走り続けた。
「はぁはぁ・・・・着いたぁ!!!」
雨の中・・・・冷たい体、肩で息をする。
空は11月の曇り空ということもあり既に暗闇に包まれている。その暗闇をデパートや駅の明かり、街灯が照らしていた。
そして息を整えながら噴水広場の周囲を見渡す。横島は・・・・・・・・・
「いるわけないよね・・・・・・・」
探した結果をポツリと口に出す。噴水広場の時計を見上げる・・・・時刻は午後6時18分。
4時間18分の遅刻・・・・。
「あははは、バカだなぁ私・・・」
おキヌは雨の中、自嘲気味に笑うと顔を俯けた。・・・・そのとき
「ったく・・・心配したぜ?」
「えっ!!?」
おキヌはその声と共に自分に降りかかる冷たい雨が遮断されたのに気づく。
そして、ゆっくりと振り向いた・・・・そこにいたのは・・・・
「よ・・・・横島さん・・・・」
「大変だったんだぜ?立ち位置変えたりして待ち合わせすっぽかされた男に見られないようにするの。
ま、おキヌちゃんが事故にあってないならよかったよかった。あ、服乾かさなきゃ風邪ひいちまう」
そう言って傘をさしながらワハハハと笑う横島。
これだけ遅刻したおキヌを決して責めたりせず、心配が先に立つ・・・・
そんな横島のやさしい心におキヌは胸が詰まって何も言えなかった。
だから・・・・
「え!え!?おキヌちゃん!!?」
おキヌは正面からゆっくりとその体を横島に預けた。
いきなりの行動にとまどう横島。
「ごめんなさい・・・・・もう少しこのままで・・・・・・・」
そう言われ横島はおキヌの心地よい重さと柔らかさを感じながら、少しだけ顔を紅潮させ照れ隠しにポリポリと頬かいた。
おキヌの冷たい身体が横島の体温で温められていく。
横島の胸元が冷たい雨水とおキヌの温かい涙でゆっくりと濡れていった・・・・・・・・
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30分後
横島の文珠(『乾』)で服を乾かした二人。
残念ながら鑑賞券の使える上映時間は過ぎてしまったので映画は見れなかったが、それはまた今度一緒に行くという新しい約束になった。
そして、このまま帰るのもなんだからとせめて夕食は・・・ということで横島お勧めのラーメン屋で麺をすする二人。
「で、今日はどうしたの?」
「あははははは、ちょっと・・・(汗)」
横島の問いに何かをごまかすように苦笑いを浮かべるおキヌだった。
そのとき店内に置かれているTVからニュースキャスターの声が流れる。
『本日午後4半頃、都内某所でバスジャックが発生し、乗員乗客20名が人質なりました。
しかし30分後2人組の犯人がバスから飛び出してきたところを警察が逮捕し、無事解決となりました。
え〜・・・動機についてはまだ不明で犯人は・・・
『あれは人じゃないっす!鬼、蒼髪の鬼がいました!!』
『ナイフは・・・ナイフは嫌ぁぁぁ!!警察につかまったほうがまだマシだぁ!』
と意味不明な供述をしており・・・・・・・・・・』
横島は気付かなかった・・・店主が見ているニュースにも・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・おキヌがスープを少し吹き出し、大きな汗を一粒後頭部に浮かべていることも・・・・・・・・・・・・・
『全力疾走』 完
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あとがき
ふぅ〜、微妙におキヌちゃんが壊れている気がしますが、それは気のせいなので置いといて(マテ)
え〜と、随分前にマリクラさんからのリクエストで「おキヌのラブものSS」と言われて今回書いたわけですが・・・
こ、ここらへんのレベルが僕の限界です(涙)
ホント恋愛ものSS書ける方って凄いですね・・・(汗)
え?全然ラブSSになってないって?・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんなこと言う人嫌いです!(泣逃)
今までの
コメント:
- 私なんて、1時間待たされたら帰りますけどねw<実体験
それにしてもシメサバ丸よ・・・パワーアップしてたんだなぁ(遠い目)
何と申しますか・・・元ネタ言ったら怒りますか?w
位牌のくだりは笑いましたw (NAVA)
- 10分遅刻したら怒って帰ってしまってました(実体験挨拶パート2)。過激なおキヌ者原理主義者の方々がどう反応されるかは別として(?)、過程はどうあれ結果として横島クンと良い雰囲気になっていたので賛成です。何せ原作でも序盤は目的のためには人殺しも厭わないところがありましたし(笑)。待ち合わせ場所に早く行こうと一生懸命に急ぐ様、そしてその間にも困っている人たちを助けずにはいられない優しさがそれぞれに「らしい」と思いました。バスジャックと不良に関しては...社会平和と悪人更正のために必要だったんですよ♪(謎) 横島クンに体を預けてポイントを稼いだおキヌちゃんに賛成票1票です(爆)。投稿お疲れ様でした♪ (kitchensink)
- こんな日に限っていろいろなアクシデントに遭遇してしまうおキヌちゃんの薄幸ぶりと、問題を解決する行動力。んで、最後の最後にはしめてくれる横島君が格好良かったです。
・・・っていうか、お人好しだぁ・・・おキヌちゃん・・・。
・・・銃刀法違反だぁ・・・おキヌちゃん・・・。
・・・蒼髪の鬼・・・何となし、その光景が目に浮かぶようですが・・・。
―――乗客、寧ろ彼女に怯えてしまったのでわ・・・ (veld)
- おキヌちゃんが様々なトラブルに巻き込まれていき、困っている人たちを放っておけず助けてしまう所が良かったですね。
しかしおキヌちゃん、いつもシメサバ丸を持ち歩いているのでしょうか?
あと横島君、お前・・・漢だぜ!
面白く拝見させていただきました。 (影者)
- 図解とシメサバ丸が良すぎ。(笑)
ええ、ワタシこんなノリの話が大好きです♪ (紫)
- いい仕事です、ユタさん!
いつしたのか忘れてしまったようなリクエストを覚えてて頂き、誠にありがとうございました(感涙)
この爽やかな笑いを提供されるところが、ユタさんらしいですねえ(^^
「正直者はバカをみる」という言葉がありますが、おキヌちゃんに関しては、それは当てはまらない。
それをユタさんに教えて頂きました(^^
それと最後の横島クン、かっこいいですね〜
雨に濡れた女の子に、傘を差し出す男の子・・・。うん、王道です!その逆も、また可なり!(謎)
とにかく、面白いお話でした。
今度久々に、「温かい想い」を読み返したくなりました(^^
(マリクラ)
- おおっ!?これが
『すでに決定事項であるおキヌちゃんとのデート』ですね!!(長い挨拶)
大事な日に必ず不幸にみまわれるおキヌちゃんの薄幸ぶりが
なんかとってもGSって感じですね♪
4時間以上待ってた横島クン・・・『漢』です!!まさしく『漢』ですよ!!
私?私の最高記録は15分です。(実体験その3) (ハルカ)
- おキヌちゃん可愛い。
で、おキヌちゃん怖い。
という相反する魅力をいかんなく拝見させていただきました。
これがおキヌちゃんだ!
と言った所ですね。(マジか?!)
面白かったです。 (KAZ23)
- ラブコメの王道ですな(萌) 壊れ気味のおキヌちゃんにストーリーと文章が絶妙にマッチしていて、ユタさんの底力を見せ付けられた一本でした。お見事!
ただ、シメサバ丸は両太ももに吊るすのが王道かと(核爆)
|д゚).oO……元ネタは……ハズすと恥ずかしいので黙っていよう…… (矢塚)
- ロストメモリー最終話で予告されていた短編のおキヌちゃんSSですね。楽しく読ませていただきました。
今回は一部黒化していながらも、本質的には優しいままのおキヌちゃんがかなりツボでした。
もうこうなったら、予定を変えて人格者の癖にどことなく黒い黒神父も書くしか。(笑)期待してます。 (sacred)
- NAVAさんへ
NAVAさんをはじめシメサバ丸に注目してくれる方がいて嬉しい限りです(笑)
いや、シメサバ丸って包丁に鍛えなおせたんだから、もう2,3本別の刃物になってもいいかな〜って単純なアイデアでした(笑)
>元ネタ言ったら怒りますか?w
いえ、怒らないですけどわっかたんですか!!?
すげー・・・(汗) (ユタ)
- kitchensinkさんへ
10分遅刻で×ですか?世の中には難しい人もいますね(笑)
でも、普通に考えて4時間以上待つ横島はもう凄いというか、演出過剰というか(笑)
確か、kitchensinkさんはおキヌファンということでこの作品に満足してもらって安心しました♪ (ユタ)
- veldさんへ
大丈夫!文中通り「商売道具!」だから銃刀法違反にはならないですよ!きっと!多分!おそらく!maybe!
だって、だって・・・悪霊系ならともかく、妖怪系の敵に対峙した場合いざとなったらおキヌちゃんはどうやって戦うんや〜(泣)
>・・・蒼髪の鬼・・・何となし、その光景が目に浮かぶようですが・・・。
―――乗客、寧ろ彼女に怯えてしまったのでわ・・・
うわー!そのアイデアいいです!
入れたかった〜、いや、マジで! (ユタさん)
- すいません、自分にさん付けしてました・・・寒い(汗)↑ (ユタ)
- 影者さんへ
そう!おキヌちゃんはこうでなくちゃ!だから・・・
多少黒くたって気にしちゃダメ(ウインク)
横島だってそんなおキヌのためなら4時間くらいへっちゃらさ!(断言)
次回も頑張りますので、どうぞよろしくお願いします♪ (ユタ)
- 紫さんへ
図解よかったですか?
書いて正解よかった〜(笑)
おキヌちゃんの壊れぶりも許容範囲内だったみたいだし安心しました!
次回も頑張ります〜♪ (ユタ)
- マリクラさんへ
長い間待たせてすいませんでした(汗)
書き上げるのに2か月もかかってしまって、自分の遅筆を反省するばかりですm(__)m
自分なりにおキヌちゃんの良さと優しさ、そしてラブを詰め込んでみましたが、
マリクラさんに認めてもらえて一安心です♪
(ユタ)
- ハルカさんへ
>『すでに決定事項であるおキヌちゃんとのデート』ですね!!
伏線を解消するのに3か月かかりました(笑)
っていうか覚えてる方がいるとは!!
ラブSS大将のハルカさんに喜んでもらえてよかったです♪ (ユタ)
- KAZ23さん
そう!おキヌちゃんだってマジギレするんだ!!
っていうのを書きたかったんですよ僕は!(爆)
とまぁ冗談(?)は置いといて、おキヌちゃんの本質を上手く書けたらなぁと思った作品もまずまず受けがよくて安心してます(汗)
次回も期待に応えれるよう頑張りますね♪ (ユタ)
- KAZ23さん
そう!おキヌちゃんだってマジギレするんだ!!
っていうのを書きたかったんですよ僕は!(爆)
とまぁ冗談(?)は置いといて、おキヌちゃんの本質を上手く書けたらなぁと思った作品もまずまず受けがよくて安心してます(汗)
次回も期待に応えれるよう頑張りますね♪ (ユタ)
- 矢塚さんへ
ええ、ラブコメの王道ですな!(笑)
っていうかベッタベタな話しか書けません僕は(笑)
>ただ、シメサバ丸は両太ももに吊るすのが王道かと
そのアイデア頂きです!!
いや、マジで!それ最高〜♪
矢塚さんを始め皆さんのアイデアは素晴らしいものばかりですね! (ユタ)
- sacredさんへ
お久しぶりです!!!
前回のロストメモリーを覚えていてくださるなんてぇ〜(感涙)
>予定を変えて人格者の癖にどことなく黒い黒神父も書くしか
書きたい!凄い書きたいですが、まだアイデアが〜(泣)
すいません、次回は「タマモSS」になりそうです〜
でも・・・いつかは黒神父書きたいなぁ〜・・・・・
コメントありがとうございました♪ (ユタ)
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