ザ・グレート・展開予測ショー

全力疾走(中)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/ 2/20)























「はぁはぁ・・・!!」



本来体力のあるほうとは言えないおキヌは事務所ビルを出るとすぐに息切れを起こし始めた。
しかし、だからといって休むわけには行かない・・・時刻は既にPM2:03・・・もう約束の時間(PM2時)は僅かに過ぎている。

(そ、そうだ・・・・・確かこっちに近道が・・・!!)


おキヌは勢いよく小さな裏路地へと入っていく。
ここは最近散歩がてらに見つけた近道コースで住宅街へと入り、公園を抜けるとすぐに待ち合わせの駅前に出ることが出来る。


(ここを右に!)


キキーっと起用にヒールでブレーキをかけ曲がるおキヌ。
そこからはまた直線だ、まっすぐ走ればいいだけなのだが・・・・

「え!!?」

おキヌの目にあるものが入った・・・・それは火事。

一軒の二階建ての家がごうごうと炎を巻き上げ炎上している。
その家のまわりには既に二台の消防車をはじめ、野次馬が垣根を作っていた。
一瞬、おキヌも何事かと足を止めそうになるが・・・


「こんなことしてる場合じゃない!!」


と、再び走り出す・・・・・・・・・・しかし


「位牌がーーー!家の中にはまだじいさんの位牌があるんじゃーーー!!」

その一言におキヌの足が完全に止まった。
振り返れば70歳ほどの老婆が泣きながら今にも炎に包まれる家に飛び込もうとしている。
それを何とか家族であろう人たちが止めていた。

「お義母さん!あきらめて下さい・・・こんな中に入ったら死んじゃいますよ!」

「そうだぞ、お袋!オヤジだってそんなことして欲しくないはずだ」

「ううう、だけんど・・・・」


そのまま老婆は膝をついて大声で泣いた。
周りの住民を何とかしてあげたいという視線を送るが生身で・・・いや、例え消防着を着ていても突入は不可能であった。


「・・・・・・・・・・うううう、横島さん。もう少し待ってて下さい」





バシュウウウウウウウウウウ!!



おキヌは肉体を座らせると、静かに目を閉じ幽体を切り離した。
そして幽体のまま炎に包まれる住宅へと突入する。

『熱くはないけど・・・早くしなきゃ私が完全に死んじゃう。・・・・・えーと、あのお婆さんお部屋はどこかしら』

それから五分程探すとあの老婆のものらしき部屋へとたどり着く。

『・・・・・あった!』

おキヌは仏壇らしきものから幸い焼け残っている位牌を取ると裏口の割れた窓から外へとでる。
そして、位牌をもったまま老婆の前を降り立ちそっと目の前に置いた・・・・これで万事解決と思ったが・・・

その場にいた全員の反応がおかしい・・・・なぜなら・・・





「い、位牌が一人で浮いて出てきたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」





から。

遺牌はともかくおキヌは幽体になっているのだから当然霊能力者ではない一般人に見えるはずもなく、
さっきも言ったとおり位牌が一人で浮いて出てきたという不思議現象になってしまったわけだ。
さすがの老婆もこれには驚いていいのや、嬉しいのやらという表情を浮かべている。
おキヌは「はは」と苦笑いを浮かべるとスーと自分の肉体へと飛んでいった・・・・・が、しかし



『わ、私の体がない!!!!!?』



先ほど壁にもたれるように置いておいた自分の肉体がないことに驚くおキヌ。
どこだどこだと周辺を探すがやっぱりない。

『あ、魂の尾を追えばいいんだ!』

やっと一番簡単な方法に気づき急いで肉体を捜すおキヌ。
そのとき近くの野次馬の会話が耳に入った。


「いや〜、しかし位牌が飛んでくるなんて不思議なこともあったもんだぜ」
「まったくまったく・・・・まぁ、ケガ人はなかったしよかったじゃねぇか」
「あれ?お前知らないのか?」
「何が?」
「いや、燃えた家の家族にケガ人はなかったらしいんだけど、ここらへんに気絶した女の子が倒れてたんだってよ。
しかも、脈拍とかも低下してらしくてさっき救急車で運ばれたみたいだぜー」
「へー」



『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』



とたんに顔がサーと青くなる(元から青いけど)。
魂の緒みると、なんと行きたい噴水広場とは逆の方向へと伸びているではないか。
事実に気づいたおキヌは幽霊時代に出したこと無いほどのスピードで飛んでいくと救急車を見つけサっとその中へと入った。


「もしもしー!大丈夫ですか!!!もしもしーー!!」

「血圧低下!自呼吸も出来ていません」

「病院まではあとどれくら・・・・」


救急隊員達が懸命に声をかけ続けている・・・・そのとき!




ガバっ!!




「お、降ろして下さーーい!!!!」

「う、うわああぁっ!!!!」



いきなり患者が起き上がり大声を出したせいで救急隊員達は素っ頓狂な声で上体を仰(の)け反らした。

「は、早く降ろして下さい!お願いします!」

「き、君!意識の確認とか・・・・・・・」

「私、氷室キヌ16歳の女子高生!元幽霊です!!この通り元気なんで降ろしてくださいっ!!!!」

「は、はい!」


おキヌの剣幕にビビった救急隊員の声で救急車が止まる。
そして、バンっと勢いよくドアを開けると横島の逃げ足にも匹敵する速さでおキヌの姿は見えなくなった。































(ううううううううう、大分時間くっちゃたぁ!!!(汗))



火事のことよりもむしろ救急車で逆方向に運ばれのが痛かった。
時間は既に3時・・・携帯電話で時刻を確認しようとしたら着信履歴には・・・・・・・・『公衆電話』の文字。
つまりかなりの確率で横島から連絡があったということになる。

(ああーん!もう!)

自業自得とはいえ、さらに遅れる焦りと怒りをどこにぶつけていいのかも分からずおキヌは心で嘆いた。
さらにはワンピースも大きめの火の粉がついてしまったせいか5か所程目立たないにしても、少し焦げ目がついてしまっていた。

「もう着替えてる時間もないし・・・・・・・・しくしく」

己の不幸に涙しながらも走り続けるおキヌ・・・・そのとき





ドンっ!!





「いてぇ!」

「きゃっ」


急いでたせいだろうか、曲がり角で勢いよく対行者とぶつかってしまう。
おキヌは痛ててと起き上がると、謝ろうと対行者に手を差し出した・・・しかし

「いてぇじゃねか!」

対行者はまぁ、よくある言葉で不良高校生だった。

「す、すいません!急いでたので、つい!」

「ああん、それだけで済むと・・・・おっ!」


頭を下げるおキヌに不良はさらに罵詈雑言を投げかけようとするが、
おキヌの容姿がいいと分かると目つきがいやらしいものへと変わった。

「ああいいぜ、許してやっても・・・・だけどこれから俺にちょっと付き合えよ」

「えっ!?・・・ちょっ!」

不良はおキヌの右手を力強く掴むとそのままどこかへと連れ去ろうとする。

「や、やめて下さい!」

「いいから来いよ!・・・俺の兄貴は地獄組の構成員だぜ・・・黙ってついて来たほうが身のためじゃねえか・・?」

「やめっ!」

「うるせーーーっ!!!」

「・・・・・・・・・・・・・・」


おキヌが抵抗を見せると不良は一括しそれを黙らせる。
相手の少女が沈黙し、抵抗するのをやめたと思い不良は力を少し揺るめた・・・・・次の瞬間・・・・





ヒュゥっ!!ザクっ!!!!!!!!



不良の右ほほに何か風が走った。
その風の原因を何かと不良は目で確認する・・・・・それは刃物・・・・・と〜ってもよく斬れる『ナイフ型シメサバ丸』
ナイフ型シメサバ丸は不良の頬を僅かにかするように背後の壁に突き刺さっている。
そしてその柄を逆手で持っているのは・・・目の前の少女おキヌ。

「て、てめっ!」

いきなり目の前の少女が光モノ(隠語)を出したことに驚いた不良だが、何とか気を取り戻し再び威嚇しようとするが・・・



ヒュゥっ!!ザクっ!!!!!!!!・・・・・・・・・・ピキィィィ!!!



今度は左頬に風が走った・・・・・再び確認する・・・・今度はと〜ってもよく突き刺さる『クナイ型シメサバ丸』

不良は冷静になって考える・・・目の前の女子高生らしき少女がナイフを二本持っているだけでも驚愕ものだ・・・・
しかもそのナイフとクナイは・・・
セメントで出来た壁に2cmほど突き刺さり、さらに壁はそこからヒビが入っている・・・・



サ─────────────────────と不良の顔が青ざめた・・・











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図解



壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁

          刃(不良)刃

           おキヌ

・─────────────────────・




「あ、あの・・・・・これって銃刀法違反じゃ・・・・(大汗)」

不良は顔に縦線を走らせながら、恐る恐るおキヌに意見してみた。

「商売道具ですから・・・・・・・・」

さっきとはまるで違うおキヌの低いテンションの声にさらにビビる不良。
おキヌが顔を伏せていて前髪で目が見えないせいか更に怖かった。

「もう・・・・・・・・・・行ってもいいですか・・・・・・・」

「は、はい!どうぞ!!!す、スンマセンっした!!!(滝汗)」


いつ間にか敬語になっている不良を尻目におキヌは軽く『ナイフ型シメサバ丸』と『クナイ型シメサバ丸』を壁から抜くと、
バッグの中の鞘へと収めた。そして・・・・

「ぶつかってすいませんでした!もしケガとかあったら『美神除霊事務所』に後日来てください、じゃあこれで♪」

おキヌはいつもの明るさと笑顔で一言の残すとその場をあとにした。
その場にヘタりこんだ不良が『美神除霊事務所』の恐怖を兄から聞かされるのはまた後日のことであった・・・













                      全力疾走(後)に続く


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