ザ・グレート・展開予測ショー

世界はいつも流れて……(39)


投稿者名:リュート
投稿日時:(03/ 2/20)

「うううっ……くっ……!!」 

 吹雪が吹き荒れる夜の雪原に唐巣神父は膝をついていた。

「おほほほほほ……人は凍るものよ、唐巣神父!血も肉も……そして心も」
「む、無念……!」
「それが私の……雪女の仕事。さようなら唐巣神父……おほほほほほ!!」

 高笑いを残しつつ、雪女は消えた。

「ぐっ……せめて一太刀……!!む、村一番と言われた雪合戦のこの腕を……ぐ…ああ……あああ……」

 唐巣神父が持った雪玉が手から零れ落ち、バタッっと音を立てて雪原に倒れてしまった。





 お元気ですか、横島忠夫です。北海道はでっかいぞう……じゃなくて、とてもとても寒いです。……ってそれはいいが……なんで北の国からみたいな出だしになるんだ……?

 ここは北海道のとある高原の村で、この高原に雪女が現れ村人やスキー客を次々に氷漬けにするという恐ろしい事件が起こってしまった。唐巣神父はその雪女を退治しようとして失敗し、反対に氷漬けにされてしまったのである。その事をピートから電話で聞いて、急いでこの村にやってきた。

 部屋に着くと、美神さんもいました。当然いつもの通り、冥子ちゃんが美神さんに抱きついたのは言うまでもない。


「先生!先生私よ!分からない?」
「唐巣先生〜〜大丈夫〜〜?」

 返事が無い、ただの屍のようだ……嘘です、凍ってるんです。

「僕が発見した時からこの状態なんです。いくら暖めても氷が溶けなくて……」
「まったく……何をされたのかも分からないんじゃ……処置無しだわ」

 本当に……お湯をかけても全然氷が溶けないし……

「はあ〜……熱血だけが取り柄の人だったのにな……」
「そうですね!もうこりごうり……なんちゃって!」

 シーン……気まずい沈黙……
 おキヌちゃん……場を和ます為のシャレなのは分かるけど……

「しゅびばせん……」

 おキヌちゃんが謝った。

「と、とにかく、これ以上ここにいても仕方ないわ!呪いで凍りついているんなら、誰かがその雪女を退治すれば溶けるはずよ!」
「えっ!手伝ってくれないんですか!?先生はあなたの恩師じゃ……!!」
「ストーップ!後期の目標はただ働き無しなの!あなた一人でなんとかなるでしょう!」

 美神さんはピートの顔に手をのせて待ったをかける。だがピートの勢いは止まらない。

「美神さん!!あ、あなたは……あなたは何とも思わないんですかっ!!」
「何ともって?」
「金だ金だと口では言ってはいても本当はいい人だと思っていたのに……!!」
「「「うんうん!」」」

 俺と冥子ちゃんとおキヌちゃんが頷く。

「うっ……とにかく!!決めたことは守るんだから!」

 そう言って美神さんは出ていった。

「美神さん……」
「令子ちゃん〜〜」

 ピートと冥子ちゃんが美神さんが出ていった扉を見て言う。

「……3人は?」

 今度は俺たちに聞いてくるピート。
 ただ働きか……う〜ん……

「着いて来てくれるなら、カニ鍋をご馳走します!」
「カニ鍋〜〜美味しそう〜〜それならいいですよ〜〜!」

 お〜い、冥子ちゃん……まあいいか……どっちみち引き受けるつもりだったし。

「ま、ただ働きよりはマシか。いいですよ」
「ありがとうございます!冥子さん!横島さん!」



 昼の雪原に不自然に置かれたかき氷が一つ。

「……かき氷エサにして雪女釣るなんて初耳だぞ……!!」
「あれはただのかき氷じゃありません。北海道一の名水を使い、最高の技術で作った氷に、添加物のいっさい入っていない自然の材料と名人の腕で仕上げたイチゴシロップを使ってます!」
「それって凄いんですか?」
「凄いなんてもんじゃありません!雪と氷とプロならあれを見てじっとしてはずありません!必ず来ます雪女は!!」 

 おキヌちゃんが質問すると、ピートは叫んだ。

 どうでもいいがそんなに大声で叫ぶと隠れているのがバレるぞ。

「でも〜〜確かに美味しかったわ〜〜かき氷〜〜!」
「そうですね。あれは美味かった」

 暖かい部屋で食べたあのかき氷は美味かった。だがこんなクソ寒い場所じゃ食べたくないけど……

「美味いー!!ふんわりとしたこの氷、そしてまったりとしたこのイチゴシロップ、口の中で織り成す絶妙なハーモニー、このかき氷は名のある名品と見た!!」
「ほ、本当に現れました!!」

 おキヌちゃんが指差す方向には、かき氷を持って嬉しそうにしている着物姿の色っぽい姉ちゃんがいた。
 し、信じられんな……マジで……

「待ってたぞ雪女!!よくも先生を!!」
「キャイ〜ン♪この冷え切ったシロップ、たまらないわ〜!」
「おいおい……」 

 目の前にいるのに気づいてないな。

「ん?人間……それも男……」
「よくも先生を!!」
「あれ〜〜?ピートさんって〜〜人間じゃなくて〜〜バンパイアハーフじゃないんですか〜〜?」

 冥子ちゃん、今はそんな事どうでもいいんじゃ……

「先生と言うところを見ると、唐巣神父の弟子だね」
「そうだ!唐巣先生の一番弟子!バンパイアハーフのピートことピエトロ・ド・ブラドーとはこの僕のことだ!!」

 ピート、一番弟子は美神さんだろうが……

「フフフフッ……心も体も怒りと生命力に熱く燃えているのね……」
「当たり前だ!先生をあんな目に合わせた貴様を許す訳にはいかない!!」
「おほほほほほっ……そういう活きの良い生命を、熱い心を凍らせるのが私は大好きよ……いらっしゃい……」

 雪女は肩の着物を胸が見えそうになるほどずらして、こちらを挑発する。

「ふざけるな!!先生に代わって、貴様は僕が倒す!!」

 ガブッ!
 ピートは雪女に一気に走り寄り、剥き出しになった雪女の肩に噛みつく。
 おお、なんかエロチック……ってバンパイアハーフだからしょうがないか……

「ああっ……フフフフッ……」

 ビュウウウウ……

「ああ!ピートさんが!!」
「口ほどにもない……」

 雪女の体から吹雪が発生して、ピートの体を凍らせていく。

「主よ、精霊よ!冷酷なる悪魔を倒す力を我に与えたまえ!!」

 ピカアアンン!ドコオオオオンン!!
 神の力を使い、雪女を吹き飛ばす。

「くっ……」
「僕はバンパイアハーフだ!こんな事では凍りつきはしないぞ!」

 ピートは手に張りついた氷を割りつつ雪女に言う。

「そう……でも私はなんでも凍らせる。情熱や信仰心、魂までも……フフフフッ……死ね!!」

 雪女は今までとは何かが違う冷気の塊を、ピート目掛けて放つ。

「なにっ!!」
「あれは……まずい、ピート避けろ!!」

 ドコオオンン!
 だが俺の声は間に合わず、ピートの体が氷漬けにされる。

「こ、これは……くそ……先生もこの手で……」
「とろけるような舌触りに、まったりとした甘味と、口の中いっぱいに広がるこおばしいこの熱さ……」

 この雪女、グルメ番組の評論家か?

「く、ああ……」

 ガチガチっと氷が広がり、ピートは氷漬けになった。

「ピートさん〜〜!!」
「次はお前達か?」

 雪女は今度は俺達の方を向く。

「頑張ってください!冥子さん!横島さん!」
「OK!任せといて!おキヌちゃんは安全な場所まで離れててね」
「は〜い!おキヌちゃん!」

 俺たちが答えると、おキヌちゃんは後ろに下がる。

「冥子ちゃん!アジラを頼めますか?」
「はい〜〜!アジラちゃ〜ん!出てらっしゃい〜〜」

 アジラが冥子ちゃんの影から出てくる。

「いけ、アジラ!ファイヤーー!!」

 ボオオオオッッーー!!
 アジラの口から凄い勢いで炎が出て、雪女を炎で覆い尽くす。
 だが……

「おほほほほほっ……なんだいこの熱さは……なかなか気持ち良いじゃないか……」
「げっ……全然効いてない……」

 やっぱり頼んでたアレが来るまで待ってればよかったかな……

「それなら……サンチラを出してください冥子ちゃん!!合体攻撃なら奴をやっつける事が出きるかも!」
「分かったわ〜〜サンチラちゃん〜〜出ておいで〜〜」

 今度はサンチラが現れるが……

「あの〜……冥子ちゃん……サンチラ……」
「あれ〜〜サンチラちゃん〜〜冬眠してますわ〜〜」

 そう、サンチラは蛇、つまりかなり寒い所じゃ冬眠してしまう……ってなんで式神が冬眠するんやねん!!

「どうしたんだい……攻撃してこないなら今度はこちらから行くよ!」

 雪女はピートを凍りつかせた黄色い冷気の塊をこちらに向かって放ってきた。

「どわっと!!」 
「きゃあ〜〜きゃあ〜〜!!」

 俺は冥子ちゃんを抱えてなんとか避ける。
 アジラとサンチラも冥子ちゃんの影の中に戻った。

「これはマズイ!戦術的撤退!!サイキック猫騙し!!」
「インダラちゃん〜〜!!出てきて〜〜!!」

 俺の目晦ましとインダラが出てくるのが同時だった。

「くっ……逃がすか!!」
「散霊弾!!」

 俺は冥子ちゃんをインダラに乗せて目の眩んでいる雪女に散霊弾で弾幕を張り、急いでインダラに乗った。

「くそー!!覚えてろ!!」
「さようなら〜〜♪」
「えっと、あの、さよなら!」

 俺たちは捨て台詞を残しつつ全速力でそこから逃げた。
 なんか悪役になった気分だな……(笑)

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