ザ・グレート・展開予測ショー

語ろう会 ―3―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 2/19)

「六道ん所どうだ?相変わらず大変か?」

六道のコップにビールを注ぎながら、横島はそう聞く。

「とと・・・おお、おおきに。せやな。ウチもやっぱり相変わらずやね。大変言ゆーたら大変やけど、充実してるさかいええ感じやで。」

返杯しつつ、六道が答える。

「ほー・・・そういや、学園の理事になったんだっけか?しかも教師もそのまましとるんだろ、確か?」
「そうや。まぁ、教師のほうは除霊実習だけやけどな。一応、教師陣ではワイが一番能力高いさかい、なかなか引退出来ないんや・・・・・・ま、おもろい仕事やしね、それ抜きでも当分は辞めとうないな。」

グラスを傾けつつ、六道はなかなか気持ち良さそうに語っていく。
そんな六道に、今度は雪乃丞が質問した。

「しかし、しょせんはガキのお守りだろ?何がそんなに楽しいんだ?」
「いや、若い奴らっちゅうんは伸びるのえらい速いさかいな・・・・・・そいつらがしっかり成長してくんを見るんはかなりおもろいで?」
「おおー・・・流石、教育者の意見ですのー!」

六道の答えに、タイガーが感心した声をあげる。

「そういえば、もうじきGS試験じゃないですか。どうです、今年の生徒達は?」
「ん〜・・・・・・ま、ボチボチって所やね。」
「なんだ・・・はっきりしねぇな?駄目なのか?」

今度は雪乃丞がビールを注ぎ、続きを促す。

「駄目ちゅう事はあらへんよ。例年並に粒はそろっとる・・・」
「その言い方だと、あんまし納得してないみたいじゃねえか?」

六道の、奥歯にモノが挟まったような物言いに、横島が怪訝な顔を見せて、問い掛けた。

「せやね・・・・・・正直な所今年の生徒はいまいちなんや。下手すると合格者は過去最低人数かも知れん・・・まぁ、こればっかりは相手次第なんやが・・・」
「アレ?確かその辺の事を踏まえて何人か補強したんだろ?」

合格率というものは学校に取っては評価のバロメーターともいえる。無論GS試験だって同様だ。合格者が少なくなるほど、入学希望者は減る事になるだろう。

「それがな、そいつら今一なんや。三世院のほうからの口利きで受け入れたさかい、あんまし大きな声では言えんのやけど・・・」
「おー知っとるぞ。三世院のボンボン他数名だろ?噂じゃかなり腕の立つGS候補生だって聞いてたぞ・・・・・・なんだデマか?」

横島も、六道学園に編入した三世院の若様の噂は耳にしていた。若干18歳にして霊力値は150マイトを軽く超え、今までに除霊した悪霊は千にも2千にも及ぶまさに天才GS少年の噂だ。

―― 嘘臭いな〜 ――

とか思っていたが、どうやらやっぱりそうなのだろうか?

「その他の生徒っていうのも、三世院の息の掛かった家柄の関係者ばかりでしたよね?」
「俺も聞いたぞ。今度、三世院でもGS学校作るんで、その下見を兼ねての編入なんだろう?」

ピートと雪乃丞にもそれぞれ思い当たる節が有った。

「うん。だいたいそんな感じや。で、腕が立つっちゅうんは・・・・・・ま、デマとは言わんがかなり誇張されとるね。正直その辺におる生徒と比べてもどっこいどっこいって所や。流石に血筋がしっかりしとる分、霊力値は高いほうやけど・・・けど、ゆうてしまえばそれだけなんや。」

メンバーは六道の説明に納得する。生まれつきの才能の上にあぐらをかいて、本気で才能を伸ばそうとしていないのだろう。良く聞く話だ。

「ま、その辺は俺らには関係の無い話だな。そんな奴の事よりひのめちゃんと蛍はどうよ?しっかりやっとるか?」
「相変わらず、お前は親馬鹿やのー・・・そんなんいちいち言わんでもお前がよう知っとるやろうが?」
「だぁ〜!それでも他の奴にも聞きたいんじゃー!」

ヤレヤレと首をふりため息を吐く横島以外の面子。横島の親馬鹿ぶりは今に始まった事ではなかった。

―― 煩悩が子煩悩になったんじゃないの? ――

とは誰の台詞だったか・・・

「美神も蛍も主席入学。学科も実技もパーフェクトや。正直2人とも今の3年生の誰より上や。」
「そ〜か〜・・・・・・ひのめちゃんも蛍も偉いなぁ〜!」

横島はすっかりこんなお父さんになっていたようである。いや、酒が入っているせいも若干は有るんだけどね。

「しかし横島、おまえに聞いておきたい事がある。」
「な、なんだ?」

と、そこで六道が急に真剣な表情に変わった。ジッと横島を見る。

「美神はお前と結婚する気でいるらしいで・・・・・・ほんまか?」
「ブッ!」
「うわっ?!汚っ!」

横島は口からビールを噴出した。それがテーブルの反対側のピートとタイガーの間まで飛んでいく。

「ち、違うっ!そんな事無いっ!あれは詐欺だったんだ!俺は潔白だっ?!いややぁ〜堪忍や〜!!」
「何を言いたいのか分かんねーな?しかし俺はもう一つ聞いてるぞ?おめえ、蛍に手を出したらしいな?」

―― ブーーーーーーッッ!! ――

「うわっ!又っ?!」

再度噴出す横島。今度は更に勢いをつけて、壁までぶち当たった。

「なんじゃそりゃーっ?!デマだっ!!それこそデマだっ!!?そんな事ある訳ねーだろ?!だれだっ?!また西条かっ!?」
「いや、本人が嬉しそうに。『だから応援してね♪』って・・・」

―― ピキッ! ――

「ほ〜た〜る〜〜〜!!パパはお前をそんな嘘つきに育てた覚えはありませんよ〜!!帰ったら折檻じゃあ〜〜〜っ!!」

横島は滝のような涙を流しながら、窓の外に向かってそう吼えたのだった。

―― まぁ、無理だな ――

横島の実態を良く知る旦那衆は、彼が娘を叱ることなど絶対に出来ないだろうと思った。
多分ちょっと涙を見せられたらそれ以上は何も言えないだろう。だって横島はひたすら子供に弱い、生粋の親馬鹿だったから。

「そういえば横島さん・・・令美ちゃんも横島さんと結婚するんだって言っていたらしいですが・・・・・・」
「ワッシが未理から聞いた所によると、絹華ちゃんも将来の夢は横島さんのお嫁さんらしいんじゃが・・・」
「朱と珠洲もやろ?なんや、娘全員やんか?」

―― ガンッ! ――

「ち〜が〜う〜〜〜!俺は違うんだ〜〜〜!!」

テーブルにしたたかに頭を打ちつけ、横島はついに血の涙を流し始めていた。口から漏れる音は、既に呪詛の領域だったかもしてない。

「まぁ、それは良いとしてだ・・・」
「良くねえっ!!」
「まあ、聞け!俺はお前に大事な話がある。」

今度は、雪之丞が真面目な顔で横島に詰め寄った。

「あ、実は僕もです。」
「ワッシもじゃー!」
「ほー・・・奇遇やね。ワイもや。」

それに併せて、他のメンバー達も全員一様に真剣な表情で横島にズイッとせまる。

「な・・・なんだよ、おまえら?」

その雰囲気に、横島はたじろいだ。その瞬間に全員が同時に言う。

「ウチの娘は嫁にはやらんぞ?」
「ウチの娘は嫁にはやりませんよ?」
「ウチの娘は嫁にやらんけんのー?」
「ウチの娘は嫁にやらんからな?」

―― ガガンッ! ――

横島はテーブルめがけ、再びしたたかに頭を打ち付ける。当社比2.5倍くらいで。

「お、お前ら・・・俺を一体なんだと、お、思っている・・・」

それでも力の限り誤解を解こうとする横島・・・

「見境無し。」
「くる者拒まず。」
「少女嗜好。」
「近親相姦。」
「重婚野郎。」
「狂信的博愛主義者。」
「性犯罪者。」
「第一級危険人物。」

その意思は完膚なきまでに叩きのめされたのだった。

「・・・・・・お、おれは・・・おれは、ああぁぁ・・・・・・」

なまじ反論できない部分も有り、横島はただヒクヒクとするだけ・・・
そんな横島を暫く眺めていた他の面子だったが、やがて飽きたのかやがて別の話題に切り替わった。
横島は暫くへこんだままだろう・・・

「子供っちゃあ、おめぇん所はどうよ?」
「ウチですか?勿論2人とも元気ですよ。特にコレといって変わった事なんて無いです。」

雪之丞がピートに問い掛ける。
ピートも微笑みながらそれに答えた。

「ピートさんの所は双子ですけんのー・・・ウチらの所より1つ上じゃけん、今は中2ですか・・・そう言えばここ2ヶ月くらい会ってないですのー?」
「あれ?そんなにだった?そっか・・・そういえば、横島さんの所が絡まないと意外に接点無いもんね・・・」

タイガーの呟きにピートが答える。

「そういやぁ・・・ウチと違って、お前の所は正真正銘の出来ちゃった結婚だったなぁ?」
「うっ!?ゲホッ!ゲホッ!」

ニヤリと笑う雪之丞の台詞に、ピートは飲み込もうとしていたお浸しを詰まらせた。

「ゆ、雪之丞っ!?別に僕はっ!?」
「『彼女も子供も愛してる』だろう?別にそれにケチを付けちゃいねぇよ。」

クククと笑いながら雪之丞は焼き鳥に手を伸ばす。

「ピートさんの場合は、相手がちょっとだけ意外でしたけん。」
「ま、ある意味順当なんだが・・・・・・お前良く決心したよな?」


ピートはその台詞を聞いて、慈愛に満ちた表情を浮かべる。
そして神父が語るように言い聞かせた。

「彼女とは神の廻り合せだったのですよ。まず、彼女が僕を愛してくれて・・・そして僕も彼女を愛しました。そう、僕とエミさんは運命だったんです。」

と、ピートが語るように、ピートは20歳の時に小笠原エミと結婚した。そしてその時、既にエミの御腹の中には2人の愛の結晶が宿っていたのだった。

「俺はてっきり、エミは美形趣味なだけで、お前は逃げ回っていただけだと思ってたんだがな?」
「ピートさんは、エミさんに騙されて結婚したんじゃと思ったもんですがのー・・・」

当時を思い、首をかしげる雪之丞とタイガー・・・

「ハハハ・・・酷いなぁ、2人とも。じゃあ、少しだけ昔話をしようか?」

ピートは苦笑してそう言う。
ウーロン茶を一口流し込み、喉を湿らせて・・・
ピートは最愛の妻との思い出を語り始めた。

・・・・・・・・・・・・










「・・・うあぁ・・・俺は、俺はぁ・・・・・・」

横島に、未だ復活の兆しは無い。


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