ザ・グレート・展開予測ショー

失われたドクロ(5)


投稿者名:MAGIふぁ
投稿日時:(03/ 2/19)



これは、一行が観光するお話…ではないはずである。多分。



文珠の反応を頼りに、メキシコの南端の町チュトマルからバスに乗って国境を越える。

「へ〜。バスで国境って越えられるものなんですね〜」

おキヌには新鮮な体験だったらしく、しきりに感心している。

ヨーロッパ育ちのピートやそれなりに旅慣れた美神、某番組の芸人達のヒッチハイクの旅を他人事と思えず見ていた横島達にはそれ程の感慨はないようだ。

「美神さん、これから行くベリーズってどういう国なんですか?」

「ん〜っとね、この観光案内によるとカリブ海に面した観光と自然保護に力を入れてる国で、スキューバダイビングの有名どころもあるらしいわね。仕事じゃなかったらコテージでも借りて2〜3日ゆっくりしたい所だわ」

「美神さん?」

携帯片手に美神にすごむピート。エミにチクるぞ、という脅しだ。

いつもの彼なら後が怖くてこんな事は出来ないが、今は唐巣の命がかかっている緊急事態なのだ。後先考えてはいられない。

「わ、わかってるわよ…私だってプロなんだから、引き受けた以上はちゃんとやり遂げるわよ」

ちょっと拗ねたように口を尖らせて言う美神。

可愛いかも知れない…そう思ってしまった横島が「騙されるな!騙されるな俺!」と頭を全力で振り回していたが…それは余談である。



国境を過ぎると、確かに観光案内の通り自然が多くなって来た。

道沿いには電柱があるものの、電線には鳥達が止まり

途中で通り過ぎた湿地帯には蓮の花が咲き誇り

勢い良く伸びている木々の向こうに、サルがいたりもした。

シロタマは外の景色に釘付けで、シロなど今にも飛び出していきそうな雰囲気だ。

「確かに、いい所みたいですね…」

ピートがポツリと呟いた。

唐巣を心配するあまり荒み始めた彼の心に、この光景はオアシスのように思えたのだ。

そして少しだけ余裕を取り戻したピートは流れている音楽に気付いた。

「あれ?この曲は…」

題名は覚えていないが、確かアメリカの有名シンガーの曲だ。

メキシコではスペイン語の曲ばっかり流れていたような…

「ああ、ベリーズって英語が公用語なのよ。人口比率も黒人の方が多いらしいし。どっちも中米では珍しいわね」

さっきからずっと観光案内を読んでいた美神がピートに教える。どうやら美神の気分はすでに事件解決後の観光に飛んでいるらしい。



そしてバスはベリーズシティに到着した。

垢抜けない港町という感じだが、この国では経済の中心地だ。

「「「うー……暑い……」」」

バスから降りると一気に暑さが襲ってくる。

ここ、ベリーズはユカタン半島の付け根の東側。北緯11〜18度に存在する赤道に程近い国だ。日本よりも暑いに決まっている。

横島とさっきまではしゃいでいたシロタマはこの暑さで一気にやる気がなくなったらしい。

「美神さ〜ん、取り合えずどっかホテルにチェックインしましょーよ…この暑さじゃ何にもしたくないっすよ…」

「同感…」「拙者も…」

横島が泣きつき、シロタマが同意する。美神も同感だったらしく、そうそうに目に留まったホテルに移動する一行。

日が落ちる前に別の町に移動しておこう、といピートの意見は圧倒的多数で却下された。



そして、夕方。



暑い昼をクーラーのきいたホテルのシェスタ(昼寝)で過ごした一行は行動を開始した。

「ピート、地図とジャングル用の装備は買ってきてくれた?」

あくまで行動する事を主張したピートは、美神の「じゃー行ってきて」の一言で、一人だけロープを始め各種装備の買出しにパシらされていた。

「ええ。全部買ってきてあります。いつでも出発できますよ」

だから早く行こうと暗にアピールするピート。

「どこに向かうかも分かってないでしょ?焦ってもいい結果が出るとは限らないわよ」

そう言って装備を確認し始める美神。

そして装備の中から地図を取り出し、机の上に広げてコンパスで方位を確認して地図の方角を実際の方角と合わせる。

「さ、横島君出番よ」

「へ〜い」

横島も心得たもので、すでに用意してあったカプセルに入った文珠を“探”で発動。地図の上のベリーズシティの上に持っていく。

そして、その方角の延長線上には……何も無かった。

「あれ?町も村も…遺跡もありませんね?」

「どういう事でござるか?」

「森に倒れてるとしたら、絶望的なんじゃないの?」

「う…うわぁぁ〜〜先生っ!!!」

どげしっ!

「落ち着きなさいって何度も言ってるでしょ!」

おキヌとシロタマの会話がピートのスイッチを押してしまったらしく、暴走して窓から飛び出しかけたピートを美神の神通棍のツッコミが止めた。

「まったく…地図にも載ってない小さな村かも知れないし、最近出来た町かも知れない。それに未発見の遺跡って可能性だってあるでしょ!ったくアンタ達も変に煽らないの!」

「すみません…」「ごめんでござる…」「…悪かったわ」

ピートの暴走の恐ろしさを既に何度か目にしていたので、おキヌ達は素直に謝った。

「じゃー今日は取り合えず、この村まで行くわよ!」

美神は地図上の“探”文珠の指す方向から、さほどずれていない村を指差して言った。



なお、シバかれたピートを見て横島が「いつもならギャグをやって美神さんにシバかれるのは俺の役なのに…」と少し寂がっていたのは余談である。

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