ザ・グレート・展開予測ショー

不死の人(3)


投稿者名:Kita.Q
投稿日時:(03/ 2/18)

 廊下に飛び出した二人は、5メートルほどの距離をとって、向かい合った。
 長引くと、患者たちが起き出してしまう。巻き添えにしてはいけない。早めにケリをつけなければならないな。
 横島がそう考えた次の瞬間、今日子は、真正面から横島の予想を超えるスピードで突進してきた。突き出された左手のつま先を、“栄光の手”で受け止める。続いて突き出された右手を、横島は左手で外側になぎ払い、同じ手で瞬時に今日子の右襟をつかんだ。右足を今日子の腹にあてがいながら、腰を床におとし、後方に投げ飛ばした。
 
 二人は再び、距離を取り合う。
 「あんた・・・いったい何者だ?妖怪か、魔族か」
 「答える必要は無い」
 横島は、ツバを飲み込んだ。
 「患者になにをしていた」
 「・・・・・・」
 今日子は答えず、再び突進してきた。横島は腰を沈め、一気に霊波刀を突き出した。今日子は右手で霊波刀をつかんだ。横島はつかまれた霊波刀をいったん消して再び出現させ、刃をひねるようにして、今日子の右手首を切り落とし、後方に跳びすさった。
 切り落とされた手首は床に落ちたとたん、蒸気のようになって消えうせた。今日子の傷口からは、白い気体がほそく立ち上っている。
 「貴様、よくも・・・!」
 「・・・どうも変だ」
 横島はつぶやいた。
 「あんたは人間じゃない。魔族でもない。妖怪の類とも違う気がする」
 「黙れ・・・!」
 「白い気体を吸い取られた患者は、その後に死んでいる。・・・あんたは人の命を吸い取っているのか?」
 横島の問いかけに、今日子は凄惨な笑みを浮かべた。
 「そうだ。・・・ただし、先の長くない人間からしか、命は吸い取れないがな」
 「どういうことだ」
 「先の長い、生命力にあふれた人間の命は吸い取れない。ただし、人の命には限りがある。・・・わたしは消えようとしている人間の命を吸い取りながら、五百年ものあいだ生きながらえてきた」
 「なんだと!?・・・嘘をつけ!」
 横島はとっさに叫んだ。そんな話は聞いたことがない。しかし、目の前にいる“もの”は。
 今日子は、片頬に嘲笑を浮かべた。
 「正確には、いつからこんなことをしているのか、わたし自身にもわからない。しかし、こうしてわたしは不老不死の肉体を保つことができるという訳だ。・・・信じるかどうかは貴様の勝手だ。まあ、“あれ”を見られた以上、どのみち貴様は生かしておけない。・・・死ね!」
 三度、今日子は横島に向かって突進してきた。横島は下がりながらサングラスをかけ、相手に文殊を投げつけた次の瞬間、前方に向かって駆け出した。
 
 周囲がまばゆい光に包まれ、今日子がひるんだ瞬間、横島は霊波刀で今日子の胴を切り裂き、数メートル前に跳んだ。充分な手ごたえがあった。
 横島が振り返ったとき、今日子は切り裂かれた腹から激しく白い気体を噴き出しつつ、再び立ち上がろうとしていた。しかし、力尽きたように床に倒れこみ、動かなくなった。
 「いやだ・・・。死にたくない・・・」
 
 横島がふかい息をついたとき、彼の背後で声がした。
 「やれやれ。失敗か」
 横島は驚いて振り向いた。そこに江口医師が立っていた。
 
 

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