ザ・グレート・展開予測ショー

昼下がりの死闘?


投稿者名:yosi
投稿日時:(03/ 2/18)

ある日の昼下がり

「横島っ!」
歩道をぶらぶらしていた横島に。突然声がかけられた。
その声は幾度と無く聞いた声だったので、横島はさして驚いた風な表情も見せず挨拶を返す。

「よっ。雪乃丞どした?」
「俺と・・・決着をつけろ!」
唐突な物言いに怪訝な表情を浮かべる横島。

「はぁ?決着って俺が勝って終わったじゃねえか。」
アホか、というような表情を浮かべ答えを返す。

「俺のプライドのために、もう一度俺と闘えっ!横島!」
血走った目つきで再戦を迫る雪乃丞。
元々持っている刺々しい雰囲気と今の血走った目つきが合わさって、今人を殺して来たと言ったら大半の人が信じるだろう。

「どうした?おかしいぞお前。」
その血走った目を見て雪乃丞に問う横島。

「俺は・・・お前を倒すために、サルのところで修行しなおしたんだ!」
辛い日々を思い出したのか、苦々しい表情を浮かべる雪乃丞。

「雪乃丞・・・そこまで俺に勝ちたいのか?」
先程までのおちゃらけた雰囲気から一変し、真面目な顔になる横島。

「ああ。」
雪乃丞は微塵も躊躇いや後悔の色を見せず、返事をする。

「・・・分かった、此処にはいい場所が無い、俺について来い。」
そう言うと横島は、自分が知っている中で最もこの闘いの決着を着けるに相応しい場所を目指し、歩いていった。

二人が入って行ったのは眩い光を放つ特別な建物だった。


「負けても怨むなよ。」
その場所に着いた途端、雪乃丞が言う。

「お前もな。」
横島もそれに答える。

準備を終え、両者とも構える。




そして闘いが始まった。




先手を打ったのは横島の方だった。
掌に霊力を集中させ、立て続けにそれを放つ。
霊気の塊は弾丸の如き速度で雪乃丞の方へ迫る。

「おおおおおぉぉぉぉぉぉっ!」
雄叫びを上げる雪乃丞。

雪乃丞の方は膨大な量の霊力を拳に集め、霊気の膜へと変化させる。
そして横島の方が放った全ての霊波砲を、横島の方へめがけて弾き返す。

「ちっ!」
横島は小さく舌打ちをした。

そして横島の方に返ってきた無数の霊波砲を、ことごとく避け、あるいは受け流していく。
逸れていった霊波砲は、地面には何の損害も与えずに消えてゆく。


「強くなったな!雪乃丞!」
久しぶりに闘った雪乃丞の強さに心が高揚するのを感じながら、横島は素直に賞賛の言葉を発する。

「・・・お前は・・・弱くなったな・・・横島。」
しかし、雪乃丞は失望したような口調で―――いや、事実失望したのだろうが―――吐き捨てた。

「そんな言葉は俺に勝ってから言うんだなっ!雪乃丞!」
それを挑発と思った横島は軽口を叩き、受け流す。

「ああ・・・分ってるぜ!」
 
雪乃丞の方は構えを解く。
その途端、横島の方は走り、間合いを詰め、蹴りを放った。

横島の方の、雪乃丞の方の首筋を狙った鋭い蹴りは、屈んだ雪乃丞の方の髪を撫でた。
そして、隙が出来、無防備になった胴体への攻撃。

咄嗟にガードするが、間に合わずに手痛い一撃を食らう。
その隙を逃さず更に追い討ちをかけ、とどめに蹴り飛ばす。

横島の方は蹴り飛ばされ、離れた場所へ吹き飛んでいく。
それによって雪乃丞の思惑どうりに間合いが開いた。

「サルに教わった技を使わせてもらうぞ!横島!」
雪乃丞は叫んだ。

それと共に雪乃丞の方の右腕に莫大な霊力が溜められていき、右腕は醜く歪な形状へと変化していく。
体中の殆ど全ての霊力を右腕に集めきった時。
その時には右腕は、全く原型を留めていなかった。

その腕を前方に突き出し、突進を始める。

「くっ!」
横島の方はそれを迎撃するために、先程の数倍の量の霊波砲を撒き始める。
しかしそれらは人外の物と化した右腕に弾かれていく。

そうしている間にも雪乃丞の方は接近してくる。

しかし、下手な鉄砲も当る時がある。
霊波砲の内の数発が左腕に直撃したのだ。

右腕に霊力を集め、霊力の残っていない左腕は簡単に引きちぎれた。
しかし、それでも止まりはしなかった。

横島の方は霊波砲を撃つのをやめ、腕に霊力を注ぎ、右腕を受け止めようとした。
が、中途半端に霊力を注がれた程度では、雪乃丞の方の右腕は受け切れるはずも無かった。
人の者ではない右腕は、自らを遮ろうとした腕を破壊する。

骨の砕ける音

肉を裂く感触

視界に映る、壊れていく血管と筋肉

弾け飛ぶ肉片

辺りに飛散する血液

そして崩壊する両腕

「なっ!?」
驚愕の表情と困惑の声を発する横島。
それには構わず雪乃丞の方の右腕は相手を倒す為に動き続ける。

もう自らを遮る物が無い右腕は当初の予定どうりに破壊を進めていく。

指先が腹部に触れる

腕が、めり込んで行く

力に耐え切れなくなった腹部の皮膚は裂けていき

次には、臓腑を保護していた筋肉と骨
さらに腕は突き進み、臓腑を、抉り、削り、壊していく

既に、腕の破片や溢れ出した血液でその場には、おぞましい血溜りが出来ていたが、内臓から溢れ出した血は。その場に更なる血を与えていく。

腕を引き抜くと更に大量の血液が流れ出していく。

宿敵の体を貫いた右腕は、血に染められ薄く光った。

横島の方はスローモーションのように、ゆっくりと地に伏していく。
そして体が完全に地面に横たわり――――絶命した。



























その瞬間、横島の画面上にはYOU LOSEの文字が、
雪乃丞の画面上にはYOU WINの文字が表示された。


「そっ、そんな馬鹿なっ?!カクゲー・忠ちゃんと呼ばれた俺が!?」
自らが一方的に負けたのが信じられないのか、茫然自失となる横島。

「サルの所で修行し続け、このゲームの隠された最強の必殺技を得た俺と、修行を怠ったお前の差だ!」
そんな横島に現実を突きつける雪乃丞。

「そっ・・・そんな・・・」
蚊のような弱々しい声で呟く。


「ハッキリ言う!今のお前は弱い!」
この言葉が放たれた瞬間。
横島の脳裏にはガーンという効果音が鳴り響き―――意識を失った。

「・・・ああっ!かえるはいいな〜〜〜かえるはいい〜〜〜・・・」
意識を失った横島は白目をむきながらブツブツと不気味な独り言を呟き始める。

「横島・・・再戦はいつでも受けるぞ。」
雪乃丞は意識の無い横島に捨て台詞を残し、ゲームセンターを去っていった。
過去に自らが絶対の自信を持ちながら。横島に秒殺された因縁のカクゲー「ゴーストスイーパーズ」をあとにして・・・


そして、雪乃丞の後姿を見送っていたゲーム店の店長は静かに、しかし固く心に誓った。
二度と、こんな大騒ぎをする奴を店に入れるもんか・・・と。

振り向いた店長の虚ろな目には、完全にコントローラーが破壊され、反対側の対戦席に不気味な独り言を呟く青年が置かれている、一台のゲーム機が映し出されていた。


終わり

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