ザ・グレート・展開予測ショー

語ろう会 ―1―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 2/17)

「お、来たな!こっちだ横島!」

店では、4人の男が酒を酌み交わしていた。真面目な話から馬鹿話まで、幅広く盛り上がりつつ最後の一人を待っていた所に、ようやく彼の登場である。

「おおっ!すまん、ちと遅れた。」

たった今、この居酒屋に入ってきたのが横島。そして彼に声をかけたのが雪之丞だ。
他のメンバーは・・・

「何かありましたか?」
「最近は横島さんも遅刻せんようになったのにのー?」
「なんぞ仕事でも入ったんか?」

ピート、タイガー、政樹である。
今日はこの5人の旦那衆が、久々に全員揃って酒を飲む約束をしていたのだった。

「ちょっと出掛けに一悶着あってな〜・・・」
「なんだ?」

上を脱ぎながら座敷間に上がってくる横島に、雪之丞が問い掛ける。

「朱と珠洲がな・・・」
「なんだ、またですか?」

一体何があったのだろうかと注目していたピートが、それを聞いて破顔失笑した。

「横島さんの所は相変わらずですのー。」
「まったくや。」
「クックックッ・・・」

残りの面子もコレだけで状況を理解したのか、皆一様に笑いを噛み堪えている。

「馬鹿ヤローーーッ!今日のはいつもより全然大変だったんやぞっ!?流石にヤバかったんじゃーーーっ!!?」

そんな親友たちの態度に、横島は必死で言い聞かせようとリアクションを返した。

「なんでえ?てめえのガキにやられそうになるなんて、おめえらしくもねぇ・・・」
「ですねぇ?」

雪之丞とピートが再び怪訝そうな顔を見せる。

「オイ、六道!」
「な、なんや?」

それを無視して、横島は政樹に詰め寄るとギリギリと歯軋りをしつつ声を絞り出す。その只ならぬ剣幕に六道は若干腰が引けた。

「冥瑠ちゃんに良く言って聞かせろ、と言っておいたはずだぞ俺はっ!」
「な、なんやて?まさか、また式神を貸したんか?ワ、ワイはちゃんと言って聞かせたで?人に貸すもんやあらへんて!?」

横島の娘の朱、珠洲と六道の娘の冥瑠は共に小学6年生で大の仲良し。そして、いわゆるヤンチャな盛りでもあった。
一般的なヤンチャな盛りというのが何歳なのかはともかく、横島はもう何年もヤンチャな盛りというものををズーーーーーーーッと経験していた。
というか、なんだかこのまま大人になっても変わらないんじゃないかと思って冷や汗が溜まる事もあったりする。

「確かに今回のは貸し出しじゃ無い。」
「な、なんや?せやったらまさか、また冥瑠が一緒になってお前を襲ったとかか?そ、それかてアカンて・・・」

こちらも娘のお転婆というか天然というか・・・とにかく悩み事の尽きない六道は、自分の娘が今度はいったい何をしたのかと恐れていた。

「カオスと厄珍が作った、霊力ディスクがあるだろう?」
「霊力ディスク?」
「ああ、あの霊力をコード分解して記録出来る・・・・・・CDみたいなやつですよね?」

霊力ディスクとは、様々な特性の霊力をそのままの形で保存出来る記録媒体のことである。
アナログな霊力をデジタル記号で表記する事により、その保存に成功。
今までの霊力を蓄えるという概念から、霊力の記録保存という新しい概念を生み出したのである。
今までも霊力の保存は可能だった。普通は霊力というものは使えば使いっぱなしで、2度と戻る事は無い。だから体力の回復を待つのと同様に、霊力の回復も時間をかけて自然に任せるのが普通である。
とはいえ、無くなった霊力を外から補充する事も可能なわけで、緊急時にGSがその手段を用いる事も多い。方法としては他人から霊力を注いでもらう等だが・・・
これを無機物で行うのが霊力の保存という技術だ。これの一番の例が精霊石だと言える。自然界に満ちている霊力が、特定の地脈の元に集まり結晶化したものが精霊石だ。純粋な霊力の塊であるからこそ精霊石は莫大な効力を発揮する。
尚、精霊石の値段が馬鹿高いのは、現在の技術でそれだけ高密度の霊力を保存する事が出来ないからだ。
更に言えば、これはいつまでたってもそう大きく変化する事も無いだろう。
それだけ霊力の保存は技術的に難しいのである。
とまあ、それはさておき・・・
カオス&厄珍が開発した霊力ディスクの説明をしよう。
先程も言ったとおり、霊力の保存は難しい。とはいえ不可能という事もなく、保存率は悪いがある程度は可能である。だが、やはり決定的に保存率が悪い。
いつか話題に出た、数百マイトの文殊の作成に数万マイトの霊力云々というのもつまりはそういう事情である。
そこで発想の転換をしたのが、ヨーロッパの魔王Dr.カオスだった。
霊力をそのまま保存するのではなく、01コード化して記録する。音や映像の保存に使われた事と同じ事を成し遂げたのだった。
そして専用の再生レコーダーでコード還元して、全く同じ現象を発言させる。少しの霊力漏れもなく完全な状態で。それは世紀の発明だった。
専用ディスクと専用レコーダーを開発、特許取得、独占販売・・・・・・カオスと厄珍の未来はウハウハの左団扇だ!
の、はずだったんだけどね・・・・・・

「あれは結局、霊力レコーダーのほうが上手くいかなかったんでしょう?」
「記録は出来たが、再生は出来ず・・・ぶっちゃけ意味ねー代物だわな。」

そう。専用ディスクこそ上手く出来たものの、それを再生するレコーダーの方が作成出来なかったのだった。

「まぁ、カオスさんと厄珍さんらしいですのー・・・」
「そうなんだよ!そのはずだよなっ!?じゃあ、何でなんだぁっ!?」

横島は喚き出す。

「だから、いったい何があったんや?」
「十二神将を丸ごと全部コピーしたディスクを朱と珠洲が持ってたんだよっ!?」
「なにっ!?」

それを聞いて全員の反応が止まった。

「しかも、何故か音楽再生用のウォークマンで再生できてるんだよーーーーっ!!?」
「なにーーーーーっ!?」

横島は少し前の事を思い出す。

・・・・・・・・・・・・





「父上〜♪」
「パパ〜♪」

俺が家に帰ると、朱と珠洲が駆け寄って出迎えてくれた。
それぞれ半人狼と半妖狐なのだが、はじめっから人間社会で育ったお陰でなにも問題無く日常生活を送れている。

「朱〜、珠洲〜ただいま〜♪」

俺は身をかがめて2人の愛娘を抱きかかえた。いささか洋風なコミニュケーションだが、俺はこれが気に入っている。

「父上勝負でござる〜!」
「今日は勝ぁ〜つ!」
「おおっ?よ〜し、どんと来〜い!パパは負けんぞ〜っ!」

俺はこの2人にある約束をしていた。俺に1撃食らわせる事が出来たらなんでも1つ言う事を聞いてやると。
それ以来、2にんはあの手この手で頑張って俺に向かってくるのだった。
うんうん。子供のうちからしっかりと頭を使うのは良い事だなぁ。
と自分の教育方針に満足しながらも、俺は2人と庭へでる。

「では、参るでござるっ!」
「それっ!」

が、今日は何か様子が違っていた。2人とも手にはCDウォークマンを持っていて、再生ボタンに指をかけていたのだ。
そう言えば、CDってメディアも随分寿命が長いな・・・
性能は年々向上してくけど、基本的な方式は全然変わらないもんなぁ・・・
などと暢気な事を考えていた俺の思考は、瞬時に固まる。

―― チュッ、ンモ〜、ガーッ、シャキーン、ゴーッ、シャーッ、ヒヒ―ン、メェ〜、キキッ、バサバサ、ガルル、ブヒィッ ――

「なんですとーーーーーーーーっ?!!」

目の前に、見覚えのある式神の皆様が現れました。

―― チュッ、ンモ〜、ガーッ、シャキーン、ゴーッ、シャーッ、ヒヒ―ン、メェ〜、キキッ、バサバサ、ガルル、ブヒィッ ――

しかも2組いますがな?!

「・・・・・・・・・・・・はっ!?そうか、これってあれだろうっ?!なんで再生出来てるのか知らんけど、カオスの作った霊力ディスク!」
「正解でござる〜。原理は分からんでござるが、便利なものでござるな?」
「冥瑠に頼んで式神コピーして貰っちゃった♪」

笑顔な娘がちょっと怖かったのは父の秘密だ。

「ばっ、馬鹿っ!?とにかく疑問は全部置いておいて、お前らに十二神将が使いきれる訳無いだろうがーーーっ!?ああっ、だからさっさとしまいなさいっ!」
「はははっ!大丈夫でござるよ。この間実験したでござるが・・・」
「なんとか命に別状無いくらいで済むわ。」

俺は教育方針を間違ったーーーーーっ!!!

「既に実験済みなのかいっ?!それでなんで・・・」
「あ、そろそろ危険かも・・・」

―― バリバリバリ、ドゴーーンッ、シュバババ ――

「うぎゃあっ!始まったーーーーーっ!!?」

そこでプッツン大会が始まった。

・・・・・・・・・・・・





「・・・・・・・・・なにせいつもの更に2倍。本気でヤバかった。」
「そ、それは・・・」
「地獄絵図・・・」
「良く生き残りましたのー・・・」

傍で聞いてただけでも、身の毛がよだつ思いのほかのメンバーだった。

「発現できる時間が極端に短くてな。10分も持たなかったから何とか逃げ切ったよ・・・」
「ああ、なるほど・・・」

横島の説明に納得するピート。だが、それでも洒落にならんなーと思っていた。

「し、しかしお前の所の娘は教育がなってないんじゃ無いのか?いくらなんでも自分の身を危険に晒してまでとは・・・」

雪之丞が冷や汗を拭いながらそんな突込みを入れる。

「いや、あの状態なら間違いなく俺があいつらの事を、身を呈して守りに入るだろうって所までを計算に入れた作戦だったらしい・・・」

目に涙を貯めながら、それを思い出してしみじみと語る横島だった。

「はは、はははっ、さ、さ流石・・・」
「それで力を使い果たしてグッタリとしてた俺は、それぞれに1撃ずつ入れられたよ・・・・・・フッ。」

横島は自嘲的な笑みを浮かべる。

「ま、なあ何とか無事だったんでしょう?良かったじゃありませんか?ハハッ。」
「お、おう!そうだぜ横島。ほらっ!まぁ飲めよ!」
「こっちの焼き鳥がなかなか美味いですけん。食べてみてつかぁさい、横島さん。」
「・・・・・・すまん。冥瑠には言っとくわ。」

それぞれ、慰めの言葉をかけつつも、

―― そんな目には会いたくないなぁ〜 ――

と全く同じ事を考えている友人一同だった。
旦那衆の晩餐はまだ続く・・・


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