ザ・グレート・展開予測ショー

失われたドクロ(2)


投稿者名:MAGIふぁ
投稿日時:(03/ 2/17)



これはとある暴走する半吸血鬼のお話である。



「美神さん!美神さん!美神さん!!」

突然、凄い勢いでドアを開けて美神除霊事務所に入ってきたピートは、ツカツカツカ…とそのままの勢いで所長室目指して歩いていった。

「…何だったんでしょう?」

「さぁ…また美神さんが何かやって、唐巣神父が倒れたとかじゃないか?」

それを呆然と見送った横島とおキヌは、いかにもありそうな理由を見つけ出して納得していた。



「シロちゃんを下さい!!」



というピートの叫びが聞こえてくるまでは。

ガンッ!!

どんがらがっしゃーーん!

「ぅえふっ!げふっごふっごっふっ!!」

おキヌが机に頭をぶつけ、

シロタマが屋根裏部屋からの階段を転がり落ち、

横島がお茶を気管に入れてしまって思いっきりムセた。



「い…いきなり、何言ってるの?」

そして美神は呆れていた。

他のメンツに比べれば冷静に見えるが、目の前で必死の形相で言われた為インパクトが強すぎて、驚く事さえ出来なかったというだけだったりする。

「だから!シロちゃんを下さいって言ってるじゃないですか!なんならタマモちゃんでもっ…」

しかし、暴走状態のままピートは突っ走る。アクセル全開。むしろ更にシフトアップする勢いだ。

「何を言っているでござるかー!!拙者はせんせーのモノでござるっ!」

ここでやや顔を赤らめたシロが乱入した。

彼女も女の子。あそこまでストレートな事を言われては、内心複雑なものがあるらしい。

「私でもって…どーいう意味よ?」

「ピートさんって…そういう趣味の人だったんですか?」

「何があったんだ?ピート…」

シロに一歩遅れて他の面々もやって来た。

タマモは不機嫌に、おキヌと横島は一歩引いた感じで少し遠巻きにピートを見ている。

しかし、そんな事では暴走ピートは止まらない。さっきシフトアップしたギアはトップに入りっぱなしである。

「横島さん!!シロちゃんを下さい!いいですねっ!!」

「あ、あぁ?」

勢いに負けて、つい頷いてしまう横島。

その返事を聞いた暴走ピートは即座にシロの両手を握って捕まえる。

「許可は取りました!シロちゃん、一緒に行きましょう!!」

「え、えぇ?あうあうあう………せ、せんせぇ〜〜〜!」

「………………はっ!?おっ、落ち着けピィーート!」

自分の方を見て泣き出してしまったシロを見て、呆然としたまま勢いに流されていた横島は正気に戻った。このままではシロが攫われてしまう。

暴走ピートは通常のツッコミでは止まらないと判断して、文珠“平”を叩き込む。効果はこの前実証済みだ。(横島タイガー極楽大作戦!参照)

カッ!

横島が投げつけた“平”文珠が光って効力を発揮し、我に返るピート。

「先生っ!拙者…拙者…怖かったでござるよ〜〜…」

「あ〜〜、よしよし…もー大丈夫だから…」

目の前には、泣きながら横島に縋りつくシロと、他の人物達からの白い目。

思い返せば、自分は事情も何も説明していない。

「え〜〜っと…取り合えず話を聞いてくれますか?」

「………………是非頼むわ」

美神はため息をつきながら承諾した。



「唐巣先生がいなくなった?」

「ええ、そうなんですよ。もう3日も帰ってきてないんです…もう心配で心配で…」

場所を応接間に移して、全員でピートの話を聞く美神達。

「それであんなに慌てていたんですね」

「だからと言ってあれは無いでござろう…」

他のメンツは一応は納得したようだが、シロはまだご機嫌斜めなようだ。

「探せる所や心当たりはもう大抵…それでシロちゃんを借りて探してもらおうかと…」

「ああ、そう言う事…いきなり真剣な顔してシロちゃんを下さい!って言うから何事かと思ったわよ…」

美神の言葉に、まったくだ。と頷く事務所メンバー。

「それで…先生を見つけるのに協力してくれませんか?」

「う〜〜ん、そうねぇ……」

考え込む美神。しかし、以前似たようなケースで金縛り(カネしばり)になった彼女用の対策をピートは心得ていた。

「あ、これは気持ちという事で…それと今回の事なんですけど、多分オカルトアイテムが関わってると思うんです」

そう言って諭吉さんを一枚美神さんに差し出し(お金がある理由はアルバイト ウィズ ヴァンパイア参照)“平”文珠の効果か、それだけでは無くオカルトアイテムという金になりそうな話で駄目押しまでするピート。

「オカルトアイテム?」

エサにピクッと反応する美神。

「ええ。水晶のドクロっていう…」

「水晶のドクロ!?本物なの?」

「本物かどうかは分かりませんけど、間違いなく魔力はこもってました」

「よっしゃあ!唐巣先生は私が見つけてあげるわ!任せなさい!」

ガッツポーズで宣言する美神。どっから見ても、どさくさに紛れてドクロを自分の物にする気満々だ。

「はい!よろしくお願いします美神さん!」

頭を下げるピート。しかし、彼は唐巣を見つけてくれたらお礼をする、とすら言っていない。

成功報酬を匂わせるだけで美神を動かせたのだ。何度でも頭くらい下げるだろう。



その駆け引きの横では…

「先生…拙者ピート殿に協力したくは無いでござるが…」

「そういうなよ…唐巣のおっさんを放っとくわけにもいかんだろうし、第一美神さんに逆らえんしな…」

「そうでござるな……先生、拙者の傍にいて下され……」

シロはさっきからずっと横島の右手を抱えて離さなかったが、その手にギュっとしがみ付く。

「あ〜〜…分かった。分かったからそう甘えるなよ…」

そう言いつつ、まんざらでもない様子の横島。一人っ子の彼は自分に甘えてくれる存在に慣れておらず、弱いのだろう。

ここまでシロが甘えて、自分を頼ってきた事はなかったのでそちらに気を取られた横島は気付かなかった。

おキヌとタマモが、自分達をジッと冷たい目で見ながらお茶を飲んでいる事を…

そして、そのお茶のカップがフルフルと振るえて、たまにピシッと音を立てている事を…

アーメン。



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