ザ・グレート・展開予測ショー

西条輝彦のとある日常


投稿者名:マサ
投稿日時:(03/ 2/17)

1990年代以降の高度に発達した文明の影で、現代社会の秩序と安全を脅かす闇の住人たち。
そして、その力を悪用する犯罪者たちが着々とその姿を増やしつつあった。
このような時代の中、万民の平和の為、邪悪なる力に対抗すべく国連刑事警察機構(ICPO)に発足された一つの『課』。
その名も、「超常犯罪課」、通称「オカルトGメン」である。
そして、彼は新しく設置された極東の島国にある、日本支部に配属されたエリート。
彼はこの世の科学では解明できない悪を滅するために極楽からやってきた正義の戦士…なのかも知れない…!?

今回は、その男・西条輝彦の一日を本人のナレーションを織り交ぜて紹介しよう。









   ***西条輝彦のとある日常***

―夜には美しき東京の夜景を満喫できる都内有数の高級ホテルであるここ、ネオ東京ホテル。
―その一室が言わずと知れた西条の住居だ。



今朝も何時も通りの時間に目覚めると直ぐに自慢の髪の毛を整えるため洗面所へと移動する。
男たるもの、身だしなみが大切なのだよ、諸君!
何処かの丁稚のような格好では、何時か令子ちゃんも僕との格の違いにゴミ扱いされて捨てられるさっ。
そして、その時こそ令子ちゃんは僕のものに……ふっ…ふふっ…ふはははははははははっ!

鏡に向かい、今日も愛用のムースで髪形を整え始める。
「う〜ん、どうもムースのノリが悪いな…。最近は特にそうだ。……そう言えば、この頃横島クンが夢に出てくるような…あ〜っ、思い出したくもない!」

身嗜みを整え、スーツに身を包み、僕はダイニングへと移動した。
「今日もお早いですなー、ぼっちゃん」
「おはよう、キヨ」
笑顔のキヨに僕も笑顔で返し、椅子に腰を掛ける。
テーブルの上には今日も世話役のキヨがホテルの厨房を拝借して用意した朝食が綺麗目の前に並ぶ。
「うん、何時もながらいい味付けだ」
ベーコンエッグを一口食した所で一言言った。
これも僕の毎朝の習慣だ。
「おおきに、ぼっちゃん」
「ん〜、これも美味い」
互いに笑う。

「さて、そろそろ行ってくるよ」
「行ってらっしゃいませ、ぼっちゃん」
深々と礼をするキヨに見送られ、僕は足早に部屋の出入り口を抜け、出勤する。










オカルトGメン日本支部(のある)ビル・地下射撃場。
僕はここで国民を救うため正義の名のもとに日夜訓練を重ねている。
「ははははははっ!僕の毎月のムース代の責任を取って大人しく正義の銃弾を食らいたまえ!!」
ドンッドンッドンッ…
人間、何を的にするかで命中精度は変わってくる。
だからこそ、僕はこの世の“悪”に向かって撃つようにしているのさ。



―ターゲットに横島の写真を貼り、見事に蜂の巣にする西条。
―なんだかんだでほぼ毎日のように銃弾・その他という形で国民の血と涙の結晶・税金を大量に消費する公務員であった。










射撃練習の後はオフィスでの書類仕事だ。
「はい、西条クン」
「ありがとうございます、先生」
ことっ、とデスクにコーヒーを置いてくれる僕の師であり、未来の“お母様”…ふふふっ。
それに対して、僕は白い歯をきらりと光らせ、お礼言葉で返す。
市民の安全のために仕事をしつつ、相手の親とにこやかに会話できる。
素晴らしい環境じゃないか。
もう笑いが止まらないねっ。
はーっはっはっはっ!

「ほぁ、ほげっ、ほげあっ!ほげあっ!」
おっと、ひのめちゃんが起きたようだ。
「あ、ミルクが欲しいのね」
流石先生、動きが素早い…。
それにしても、赤ん坊は可愛いなぁ。
前に僕が近付いたらいきなり火達磨にされて、それから距離を置くようにしているが、あの時は何故いきなり僕を攻撃したんだろうか。
この完全無欠の美青年が例え赤ん坊であろうと嫌われる筈は無いんだが。
きっと機嫌が悪かったんだろう。

午前中に仕事を一段落付け、僕は昼食を取るために白昼の街中へ歩みだした。









さて、昼食は何処で済ませようか。
今日はあそこの喫茶店が良さそうだな。
何だって?
何故喫茶店なのか?
ちっちっちっ、社会の奉仕者は贅沢なんかするものじゃないのだよ。

店に入るとからんからん、という音色に続いて店員の愛想の良い声が店内に響く。
適当に辺りを見回し、開いている席を探す。
時間帯からして、それなりに混んでいる時だからね。
ん〜、あのあたりが良いな。
「ここ、空いているかな?」
「「あ、はい。どうぞ♪」」(うっとり)
座っていた二人の女性が頬を赤らめて僕を促す。
ふっ、また女性が僕の魅力の虜になってしまったか。
美形というのも罪だね。
ふっ…。

そして、軽い昼食を適当に済ませると午後は何時も行く所が決まっている。
流石に時と場合にも寄るが。










とんとんとん……がちゃっ
「やあ!」
愛想良く、笑顔でそのドアを開ける。
「あら、西条さん」
「こんにちはー」
「今日は何しに来たんだ?」(じろっ)
僕が片手で会釈して挨拶しつつ室内に入ると、にこやかに返す妹(仮)とそのアシスタントの少女、そして不機嫌な素振りをする同じくアシスタントという名目だけの“おまけ”の姿がそこにある。
もうお分かりだろう、ここは妹(仮)であり、未来の僕の妻である令子ちゃんが経営する除霊事務所だ。
「随分とご挨拶じゃないか、横島クン」
はははっ、僕はそんな事で怒るほど心の狭い人間ではないのさ。
まだまだ子供だねぇ、横島クン。
「五月蝿いわい!…ん?(くんくん)……なんか良い匂いが…」
「ああ、そうだ。知り合いがデセールを贈って来てね」
そう言って僕は手に持った紙袋を胸の辺りの高さまで持ち上げる。
「何ですか?“でせーる”って」
アシスタントの少女が小首を傾げる。
「フランスの高級クッキーのことよ」
おぉ、流石は令子ちゃん。
「オカルトゼミ時代の友人が得意でね。沢山贈って来たからお裾分けってやつだよ」
「ふぅ〜ん、どんな“女”の人なの?」
うっ、流石に鋭い…。
このままでは僕の身に危険が…。
「やだなぁ、令子ちゃん。これはあっちが勝手に贈って来ただけだよ」(汗)
「当てにならない言い訳ね」
「いや、だから……」

「ん〜、こりゃぁ美味い」
「横島クン、何時の間に…」
「あ〜、お先に〜」
「遅いわよっ!」
「(がつん)いでっ!」
…どうしてだ。
どうして令子ちゃんは僕よりもこんな見るからにアホな高校生にこんなに自然に…。
やはり邪魔な存在のようだ……。










―その夜、ネオ東京ホテルの一室の明かりだけは深夜遅くまで灯っていた。



「ふふふっ…あとは以前に小笠原クンから譲ってもらったこの呪いの人形を……」



―小さな丸テーブルの上に描かれた魔方陣の真ん中に怪しげな藁人形を置き、これまた怪しげな笑みを浮かべる西条の姿がそこにあったとか無かったとか………。
―しかし、実際にそれほど良く利く呪術の人形などがあった場合に小笠原エミという人物が他人に譲るかは言わずもがなであろう。






                     ― 完 ―

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