ザ・グレート・展開予測ショー

橋姫伝説 その2


投稿者名:弥三郎
投稿日時:(03/ 2/16)


一夜明けて今度は吉野に向かう事になった横島たち。
しかし、集合時間が来ても横島の姿は現れない。
「ルシオラさん、横島さんはどうしたんですか?」
「ええ、あなた達が逃げた後、辻本さんが簀巻にしていたんだけど……まさか、あのまんま?!」
「へ?あのまんまって?」
「ベランダに蓑虫のようにくくりつけたのよ。辻本さん、その事忘れているんじゃぁ……」
「あ、いけね、忘れてた。てへっ」
辻本のその一言でルシオラたちは大いにずっこけた。

「横島君ごめんねー、これあげるから」
「いらない」
忘れ去られていた事にすっかりすねている横島。それをなだめようとしている辻本。
他人から見ればはなはだ滑稽である。

横島たちを乗せたバスは奈良県に向かっていく。
ちょうど三重と奈良の県境で室生寺に立ち寄る。
その後、奈良の桜井にある安倍文殊院に立ち寄る。このお寺を創建したのは安倍晴明の御先祖様である
安倍倉梯麻呂(あべのくらはしまろ)であると言われる。
つい最近ではあるが安倍晴明堂が平成12年に再建されている。
「ありゃま、メフィスト関係のがここに。」
「そうですね。あ、それよりもここで出されるお菓子と抹茶はおいしいんですよ。」
「ピート、お前以外と物知りだな。」
「唐巣先生が教えてくれたので。」

そして一行は吉野の山に入っていく。
南北朝時代、北朝系の天皇を擁立した足利尊氏に対抗するため、京都を追われた後醍醐天皇が
南朝を開いた土地でもあり、それから60年にわたる内戦の幕開けとなった土地である。
一行は如意輪寺に入った。
ここは、後醍醐天皇の御陵があるところであり、また楠木正行が四条畷の決戦に向かう際に歌ったと言われる
『かゑらじと かねておもえば梓弓 なき数に入る 名をぞとどむる』
で有名なお寺である。
その後、後醍醐天皇が御所に使ったとされる吉水神社に向かった。
ここも悲劇の所であり、さらに昔の源平合戦直後、源義経が兄の頼朝に追われる身となったときのこと。
彼の妻であった静御前との別れの地でもある。
「悲しい話ね。」
ルシオラが涙を浮かべている。自分の体験した事と思いを重ねているのだろう。
「ああ、だけど、お前にそんな思いはさせねえ。」
ルシオラの思いを察したのだろうか、横島はルシオラの頭をなでて安心させようとしている。
「なんか妬けちゃうね。」
「そうね。でも幸せそうね。」
愛子と辻本はそんな二人を見て優しい視線を送るのだった。

宿に入った横島たち。外では桃の花が咲いている。
「ああ、腹減った!!飯はまだか〜。」
「その前に班長会議ですよ。横島さん行ってらっしゃい。」
「わかったよ、ピート。行ってくる。」
横島が会議に行こうとした時、聞き覚えのある男の声がした。
「ああ、横島君。いいところにいた。」
西条である。ICPOに所属している彼であるがなぜこんなところにいるんだろうと考えていた時
担任の先生に呼ばれた。
「横島君、彼から話があるそうだ。どうやら重大な事だ。」
「横島君、まずGSメンバーを全員呼んでくれないか?」

5分後、ロビーには横島、ピート、タイガー、そしてルシオラの4人が集まった。
「西条、ここまで来るとは何やら大変な事らしいな。」
「ああ、あるんだが、その前に君たちに会いたいとおっしゃるお方がいてね。そのお方にお会いしてからだ。」
西条が席を立って『陛下、どうぞこちらへ』という。
そこには長い髭を生やし、紫色の服を着た神々しい波動を出している人がいた。
「こちらにおわす方は後醍醐天皇陛下だ。」
一瞬の間を置いて全員の口から
「ええ〜〜!!」
という驚きの叫びが上がった。
「陛下はもうお亡くなりになっておられる……」
「御隠れあそばすと言いなさい!!」
「いや、いいのじゃよ。この者たちが驚くのは無理も無い。朕は確かに死んだが残留意志と言ってもいいかの。」
天皇の説明はこうらしい。
北朝と南朝に別れる時、自分は吉野側に逃れていった。その時、京都の結界が戦乱で破れてしまい
京都の霊的安定が崩れてしまった。その後、配下の者を北朝に遣り結界を張り直させたのだが
成功せず応仁の乱が起こってしまったという事。
その後、張り直す事に成功したのは安土桃山時代。織田信長の協力も得たと言う。
その後、結界は保ってきたのだが最近になって京都の開発のため結界が弱くなってきていると言う。
「京の安定は日の本の国の安定となるのじゃ。今は都が東に遷ってしまったが、霊的な力は京都を中心に
 流れておる。その霊脈が乱れると言う事は日の本の国の乱れとなる!
 おぬし達にはその乱れを修復してほしいのじゃ。」
「しかし、あれだけ大きな都市を守る結界は聞いた事がありません。東京でさえこのような結界は見た事がありませんが」
ピートがもっともらしい事を言う。京都より大きい都市である東京にはその結界が無い。
そのかわり、寺院がたくさん東京には存在する。特に皇居を中心とする地域にはたくさんの寺院が存在している。
あまつさえロシア正教(お茶の水のニコライ堂のこと)まで東京の守りの一員となっている。
その寺院の存在によって東京の霊的秩序は保たれているのだ。
しかし、東京よりも寺院数が多い京都では結界が存在する。なぜであるか。
「それはじゃな、京に呪いがかけられておるからじゃ。」
「呪い?」
「ああ、橋姫と言う昔いた人物がいてな。朕が生きていた頃よりも300年も前の事じゃ。」

橋姫。
この者は平安中期にいた人物で現在は縁切の神様として有名な人である。
しかし、橋姫の死は壮絶なものだったと言う。
京都の北にある賀茂神社付近から呪いを呟きながら歩いていき、そして今は跡形も無い伏見の巨椋池で入水自殺を行っている。
それによって京都の町に呪いが発生し、疫病などが流行った。
その呪いを食い止めたのが当時の主要道路であった山陽道である。
この類いの呪いは大きな道路などを呪いをかけられた方向と直角の形で敷くと破る事ができると言うものである。
しかし、橋姫の呪いはものすごく強大であったため、山陽道を整備すると共に、結界を張る事にしたのだ。
これが京都にでき上がった結界の由来である。
現在では呪いの線上には名阪国道、京滋バイパス、名阪高速道、東海道本線、東海道、山陽新幹線が走っており
その呪いは弱められていると思われた。
「しかし、結界が無くてはこの楔も意味がないんじゃよ。」
結界は呪いへの霊力供給を断つ事ができる。しかし、その結界が弱まっている今、呪いが再び活動を始めるのは
時間の問題とも言えた。
「事態は深刻なんですね。」
天皇の替わりに西条が答える。
「ああ、事態は深刻で、あと5日で呪いが復活するかもしれないと陛下はおっしゃられている。それまでに
 楔を強化するか、呪いのもとを断ち切るしかないんだ。それにはアシュタロス戦のGSメンバーを全員招集する事になった。」
「げ、そこまで話が進んでいるんですか。」
「作戦の指揮は私がとるわ。」
「隊長!!」
いつの間にいたのだろうか、美神美智恵が西条の後ろに姿を現した。
「しかも、結界の弱体化は作為的な物が見られるわ。何か裏にいるかもしれない。」
「うむ、朕もそう思っていたところ。美神殿。是非とも日の本を守ってくだされ。」
「陛下、ご安心ください。さぁ、みんな。やるわよ!!」
楽しい修学旅行から一転、戦いの場に身を投じる事になった横島たち。一体どうなるのか?

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa