魔人Y−32
投稿者名:NAVA
投稿日時:(03/ 2/14)
六道邸炎上。
それを知ったのは、リリスの作り出した異空間を抜け出した直後。
横島は走る。
走る。
走る。
走る。
転ぶ。
走る。
走る。
走る。
立ち止まる。
悩む。
決心。
魔力を解放。
文珠を生成。
『飛行』
六道邸が近づく。
六道邸が燃え盛る。
六道邸が崩れ出す。
――――怒り。
唐突に、六道邸から霊体ボーガンの一斉射撃。
魔力の壁で防ぐ。
続いて、六道邸から霊波砲の一斉掃射。
魔力の壁で防ぐ。
お返しに魔力砲の乱れ撃ち。
無造作に、的確で、圧倒的な、必殺の一撃。
倒れる敵――――協会直属特殊部隊。
そして横島は、燃え盛る六道邸に降り立つ………。
―――― エピソード32:he leaves from his lovers and friends. ――――
横島の目に映るもの。
燃え盛る屋敷と、倒れ付す使用人。
逃げ惑う使用人達と、追う特殊部隊。
パンッ
一人、年かさの女使用人が後ろから撃たれ、倒れる。
倒れた女の傍に駆け寄り、まだ息のある彼女に銃を撃ちこむ。
一発、二発、三発。
頭部、頭部、左胸。
齎されるのは死。
悪意に彩られた死。
ココロガ冷エル。
シコウガ止マル。
「うわぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
太く、眩しく、真っ直ぐと。
魔力砲が撃ちだされる。
女を殺した奴ら。
――――今度は!!
心が黒くなる。
純粋な殺意に囚われていく。
そして心が・・・・・・壊レテイク。
◆
ピッ、ガ――――ッ
『こ、こちらCチーム!!こちらCチーム!!
コマンダー応答願います!!!』
「こちらコマンダー。
どうした?」
『横島忠夫を発見!!!
しかし!!!
く、来るな!!!
ひ、ひぃいいいいいっ!!!!』
ザ――――
途切れる通信。
――――反撃を受けたか。
そう判断した特殊部隊の指揮官は指令を出す。
「こちらコマンダー、こちらコマンダー。
Aチーム及びにBチーム!!
横島忠夫を発見!
Cチームの援護に向かえ!!!
最悪の場合、始末しろ!!!」
指示を出した後、ニヤリと笑って振り返る。
「六道女史?
横島忠夫の捕縛も、時間の問題ですな」
式神を持たぬ彼女はこれと言って特徴の無い、霊力が高いだけのGSと変わり無かった。
捕縛しても一切怯える様子が無いのが気に食わなかったが、いよいよ希望を絶った。
サディスティックな気分で話し掛けた相手の表情は、嘲るような、蔑むような、それでいて哀れむような。
そんな表情だった。
そして、
「死んじゃ駄目よ〜」
彼女はのんびりとそう言って、目を瞑った。
その言葉は、誰に向けられたモノだったのか・・・・・・・・。
◆
未だ燃え盛る六道邸において。
二つの影が動いていた。
「や、やめろ!!
やめてくれ!!!!」
特殊部隊の隊員の一人が、横島に片手で首を掴まれて持ち上げられている。
「じゃあ、俺の問いに答えろ。
これが最後のチャンスだ」
横島は冷酷に応じる。
相手の隊員は両手両足の骨を砕かれ、抵抗する術を持たない。
「そ、それは・・・・・・・・・」
横島の後ろから、狙撃しようとしている仲間の姿が見える。
意識をこちらに集中させなければならない。
「それは?」
パンッパンッ!!!
横島に捕まっている隊員も、狙撃した隊員二人も、横島の死を確信した。
しかし、それはあっさりと裏切られる。
二発の弾は横島の手前、1mくらいで静止。
「サンキューな」
横島はニッコリと微笑んで、振り返った。
その瞳に映るのは、半透明状のルシオラクローンが銃弾二発を摘んでいる姿。
「ついでにそっちの奴らも頼むわ」
横島がそう言うと、少し離れた場所にいた隊員二人をルシオラクローン達が囲む。
――――なっ?どこから?いつの間に?
隊員達がその疑問を満たすことはなく、物言わぬ肉の塊と化す。
そして仕事は済んだとばかりに、横島の周りを飛び回る。
「何なんだよ!!
それは何なんだよ!!!
お前は何なんだよ!!!」
Aチーム、Bチーム、Cチーム。
六道邸を強襲した部隊唯一の生き残りとなった隊員が、錯乱しながら叫ぶ。
「んなことはどうでも良い。
とっと話せ。六道女史はどこだ?」
◆
バンッ!!!
指揮専用トレーラーの中で、コマンダーが簡易デスクを叩く。
「何故だ!!
何故どのチームも応答がない?!!」
既に六道邸の中では戦闘が終了しているようだ。
屋敷が燃える音は聞こえるが、先ほどまで続いてた戦闘の喧騒は無い。
任務完了のコールが無いことに不審を抱き、こちらから通信を開いたが、一切の応答が無い。
――――まさか全滅したのか?
空恐ろしい想像に囚われようとしたその瞬間。
トレーラーが爆発音とともに激しく震えた。
「な、何だ?
状況を報告せよ!!!」
彼は奥にいる情報仕官の方を振り向こうとして、失敗した。
「???」
――――捕えた六道女史の周りに淡い光が?
その光は徐々に人の形を取り始め、最後は女性らしき姿になる。
その数3名。
全員が同じ顔をしている。
六道女史はそれを見て、最初こそ驚いていたが、次第に悲しげな表情に変わる。
彼女達は3人がかりで結界らしきものを張り、六道女史をガードし始める。
――――誰だ?どこかで・・・・・・?
『ルシオラ』
その単語を彼が思い出す前に、トレーラーは大爆発を起こした。
◆
「ふわ〜〜〜〜」
六道女史が目を覚ましたのは、生き残りの使用人達が集まっていた離れの物置小屋だった。
「「「「「「「「奥さま!!」」」」」」」」
使用人達が一斉に心配顔を向けてくる。
「ふにゅ?」
脳が覚醒して来るにつれて、六道女史は全てを思い出す。
「横島君は〜?火事は〜?」
使用人達の中で、一番の年長の者が丁寧に答えた。
「横島様が屋敷全体を一瞬で凍らせて火事を消火、後に解凍なさってくれたので、火事は収まりました。
奥様を我々に預けてからのことです」
「GS協会の人達は〜?」
一瞬、使用人達の表情が曇る。
「・・・・・・・・・生存者は一人も」
「そう〜。
仕方ないわね〜。
それで、横島君はどこに〜?」
「・・・・・・・・・行ってしまわれました」
「どこに〜?」
「分かりません。
我々に土下座して謝り、ここに留まれば更に迷惑がかかるからと・・・・・・」
「何か言ってたかしら〜?」
「奥様に謝っておいてくれと。
我々にも本当に申し訳ないと」
「そう〜。
・・・・・・・・横島君は何も悪くないのに〜」
六道女史の言葉に、使用人も全員頷く。
「ここに居る者は全員、あの方に助けられた者ばかりです。
奥様を助けていただいたし、何も気にするなと申し上げたのですが・・・・・・・・・」
使用人達の様子を見ながら、六道女史は暗鬱な気分になる。
――――これで事態は更に悪化するわ〜。
◆
「人間が相手とは言え、圧倒的だな」
感心した表情をするのはメドーサ。
彼女は、いや、彼女達は未だに六道邸と横島の行動をモニターしていた。
「あれはルシオラクローンだよな?
ネクロマンシーとも違うし・・・・・・。
あれは一体?」
デミアンが怪訝な表情で呟く。
「人間の言うところの守護霊みたいなモノよ。
それの強力版かな・・・・・・?」
リリスが自分の考えを纏める意味で、解説をする。
「研究所での最後を覚えてる?
横島が魔族化した時、その魔力で低級霊達が具現化しちゃったでしょ?
その時、ルシオラクローン達も姿を現したじゃない?
多分、あの時に横島に憑依したのね」
メドーサが驚きとともに問う。
「霊体が魔族に憑依ですか?
魔族もまた、霊体みたいなものですよ?」
「それはその通りなのだけれど。
彼って半魔族だし、それに基いた、彼の新しい能力としか言えないわね。
明らかに彼は、ルシオラクローン達を使役していたわ。
しかも、ルシオラクローン達もある程度の意思を持って従っている」
「16体の式神を抱えてるようなモノですか・・・・・・」
「そうね、恐らくエネルギー源は横島本人の魔力。
これがルシオラクローンだけに起こる現象なのか。
それとも横島が望めば対象を問わないのか。
こればっかりは、本人に聞いてみないと分からないわね。
前例の無い能力だから」
さて。そう掛け声をして、話題を転換する。
「彼は我々の接触を待っているはずよ?
誰が迎えに行く?」
そう言いながら、リリスはワルキューレとジークの方を見て微笑んだ。
数週間後。
魔界は神界・人界に向けて、新たな魔神の戴冠を宣言することとなる。
――――第二段階終了。
今までの
コメント:
- とりあえず、絶望しても嫌悪しても、彼はまだ人間のままですね。
そういえば、ルシオラ守護霊達に違和感とか驚愕とかは感じてないんですね・・・
感覚で繋がっているって感じがします。
いよいよ魔界へGOですか? (KAZ23)
- 目覚めの六道女史の「ふにゅ?」と言うセリフがツボにハマってしまいました(場違いな挨拶)。前回のリリスが言っていたように、魔界に行くか行かないかに関しては横島クンには殆ど選択の余地が残されていない段階に入ってしまったようですね。GS協会の特殊部隊の隊員たちが取った非道な行動の数々で、横島クンの中に厭世感の自暴自棄な気持ちが生まれなければいいのですが...(汗)。決して自分のせいとは言い切れないはずなのに、屋敷の使いの者や、六道女史に謝罪の言葉を残していくあたりに横島クン「らしさ」が残っている気がします。いよいよ魔人化計画は次の段階へと進んでしまうのでしょうか? 次回も楽しみにしております♪ (kitchensink)
- どうも、弥三郎です。
うわぁ〜、悲惨な上に横島君の苦悩、苦悶が伝わってくるような……
人間は希望があってこそ生きていける生物です。
横島君が「希望」を捨てたとき、そのときこそが魔王となりえるのでしょうか? (弥三郎)
- 土下座を謝罪に使用するあたりに彼らしさが残っているようですが…
やりたいようにやった後、彼はどうするつもりなんでしょうか? (MAGIふぁ)
- GS協会……最悪……もう消えろといいたいぐらい……
たぶん上の奴らって愚か者ばかりだろうな。
六道さんが助かって良かった……もし死んでたら……(青い顔)
次回も楽しみにしてます! (リュート)
- いよいよ横島クンの魔人化が顕著になってきましたね。
横島クンが人間でなくなってしまうかどうかよりも
横島クンが自分を見失わないかどうかの方が気になります。
彼には自分を見失わず、彼のままでいて欲しいです・・・ (ハルカ)
- 今までの経緯があったとはいえ、ここまで横島が簡単に人を殺す(?)描写はどうかと・・・(実はみんな生きてる?)
もうこの時点で『人間』の横島(人格?理性?)は死んだのかなぁ・・・なんてことを考えてしまいます。
にしても16人のルシオラをスタンド(違)として使うとは・・・やるな、横島(笑) (ユタ)
- 横島が完全に壊れないことを祈りながら、ルシオラクローン達との活躍を期待してます。
まあ、GS協会の行動は最悪やね・・・いろんな意味でね・・・
次回も楽しみに待ってます、頑張って下さい! (仲神 龍人)
- う〜ん、六道女史無事でよかったなあ・・・。
ハラハラさせられる展開ですね、今後の横島君の行動が気になりますね。
次回を楽しみにしております。 (影者)
- 申し訳ございません、入れ忘れてしまいました。 (影者)
- ルシオラ(幽霊モドキ)に自我が有るようで少しうれし。
黒っぽい精神構造になりかけな横島も良し。(マテ)
賛成で。 (紫)
- 憎しみに駆られても人を助けようとする横島君がカッコイイッす。
ルシオラに守られる横島が、いいっす。
・・・つーか、心底、GS協会滅茶苦茶にしてくれないかな、と。もう、まじでぶっ壊れてしまうくらいに・・・(駄目 (veld)
- ども、この作品に初めて感想を書くファントムです。
たった今、今までの魔人Yシリーズを呼んできましたが、いや〜横島君が強いことは良い事ですな〜。しかしGS協会のいやな上層部にはもはや滅んでもらいたいというほどむかついてます。
(ちなみにルシオラクローン達を倒した美神達にもこれでもかというほど凄まじいぐらい殺気がわいたのは内緒♪)(ぉ
で、今回の感想ですがGS協会に対してもう慈悲は絶対必要無いと判明、即殲滅してほしいものです。
それと何とか六道女史と使用人数名が助かっていてほっとしました。
長々と長文になりましたが次回を楽しみに待ってます。 (ファントム)
- はじめまして。一読者のまんちゃんです。
私は基本的にはダークは嫌いなのですが、このシリーズは大好きです。
と言いますか、大好きになりました。今回初めて読み始めたもので・・・。
横島君が人を殺害する事に抵抗を感じてらっしゃる方もいらっしゃるようですが、私はその点にはあまり抵抗がありません。
彼の魅力の一つに「種族の壁が無い」事がありますが、それは敵にも適用されるのではないかと・・・。あくまで私の考えであって皆さんに押し付ける気は全くありませんが。
次回以降も楽しみに待っています。 (まんちゃん)
- 実は、今まで用意していたプロットを破棄しました。
やはり勢いだけで書いてる私に、そんな物は不要なようです(爆)
今後は皆様の希望が反映されるかも知れない・・・ニヤリ
とりあえず、みなさんが共通してる疑問に関してのレス
>ルシオラクローンに関して。
一応、これがルシオラ救済作第一弾です。
どうしてこんな現象が起きるのか、横島がそれをどう思っているのか。
次の話辺りでちょっと触れたいと思います。 (NAVA)
- >横島の人格的変化。
基本的に変わってません。
横島は魔物だろうが、人間だろうが、公平に接する人間であることは確かだと思っています。逆に言えば、魔物だから殺すという視点が欠けております。しかし、彼の心理状態は人間寄りあったと推察されますので、魔物は退治するモノという固定観念は否めません。しかしながら、彼自身が人間ではなくなったために、魔物を殺して良いから、人間だって殺して良いという、心境に至っております。一連の事件が、彼の心のベクトルに変化を与えた。そうご理解ください。じゃないと、私、もっと酷いこと書かないと(爆 (NAVA)
- というわけで、コメント返しスタートw
>KAZ23さま
「人間のまま」というよりは、「横島のまま」ということにしておいてくださいw
>kitchensinkさま
厭世的・・・。ふむ。書きかけの次話の横島は厭世的かも知れない。というか、話自体が(以下略w
>弥三郎さま
ぶっちゃけた話、話自体の後半から、横島の反撃が始まります。
それは後ろ向きな発想から生じた希望に縋ってのことです(謎
>MAGIふぁさま
今後もある意味、好き勝手にやってくれますよ。うちの横島君は。多分w (NAVA)
- >リュートさま
何と申しますか・・・協会がこんなことをする理由は、別に傲慢だからではなくて、もっと馬鹿馬鹿しい理由なんですが・・・馬鹿馬鹿し過ぎて、私、顰蹙買うかも知れません(汗
>ハルカさま
まぁ、妖怪やら幽霊やら珍しくない世界ですから。
別に人間辞めたって、周りの反応に変化は無いと思うんですよね。
そんなわけで、彼が彼でいられるか。それが確かに大事です。 (NAVA)
- >ユタさま
基本的にみんな死んでます。ですが、ご希望ならヤマサキだけ生存させてみようかしら?(爆
スタンド・ルシオラクローンの元ネタはガンダムです。
ガンダムのファンネルです。ふと思いついて、魔族化したんだから、新能力を付けてやろう!ガンダムのファンネルみたいなのが良いなぁ。から、みにマリファンネルっていうチャットのネタを思い出しまして。だったらルシオラで(以下略w
>仲神 龍人さま
初めまして♪コメントありがとうございます。
ルシオラクローンには、色々と利用方法がありそう(実は未定)なのでご期待くださいw (NAVA)
- >影者さま
いくらなんでも強くなった横島がいて、六道女史を殺させるのもなぁと、活躍の場として救出に成功させましたが、彼女のこの後の扱いがどうしたもんか・・・^^;
>紫さま
目指せ、『箱庭』以上の黒さってことで(ぉ
シリアス・ダークを標榜している私があっさりと越された作品なんで(笑
ルシオラの扱い、良くなったでしょうか?(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
>veldさま
その辺りが横島の横島たるゆえんと申しましょうか。
こんな話を書いてて何ですが、私は等身大の横島が好きだったり(爆 (NAVA)
- >ファントムさま
は、初めから読んだのですか?(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
初期の自分の作品って、読んでて鬱になるんですが(汗
短いし、妙に実験的だったり。
まあ、それを読んで尚、今後に期待していただけるとは嬉しい限りです。
頑張ります。
>まんちゃんさま
『ちゃん』に『さま』を付けるのか・・・(謎挨拶w)
てゆーか、貴方も初めから・・・(汗
言い訳は以下略させて頂いて、ダークは良いですよぉ?
紫さんの『箱庭』も良い雰囲気ですよぉ?w
それと、横島の心理状態に関しては、全く貴方の言うとおりです。
そういうものを想定しております。
きちんと読み取っていただけて幸いです。 (NAVA)
- ┃━┏┃.oO(横島の心理状態に関しては、後で本編できっちり語った方が良いのかも。いや、語ろうw (NAVA)
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