ザ・グレート・展開予測ショー

2人と朝


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 2/14)

―― チュン、チュン、チュン、チチチチ ――

カーテンの隙間から日の光が漏れ入る部屋。どこか遠くからはスズメの鳴き声も聞こえてくる。

―― キィー ――

そんな軽い音を立てて、その部屋の扉は開かれた。そしてその向こうから、草色のエプロンを身に付けた銀髪の女性がそっと中に入って来る。

「旦那様、旦那様〜・・・朝でござるよ〜、起きてくだされ〜・・・」

その女性はスタスタと部屋の中に入り・・・いわゆるキングサイズのベッドへと近づくと、この部屋の主である人物に声をかけた。

―― 旦那様 ――

彼女は別にメイドや家政婦などではない。
となれば当然、彼女の旦那様とは彼女の良人の事である。

「ん〜・・・・・・シロか〜?ふぁ・・・」

寝ぼけた声で返事をするのは、彼女の良人・・・名前を横島忠夫と言う。
彼は頭まですっぽりと布団を被っており、いかにも「まだ起きんぞ〜」という意思を明確に表示していた。

「今日は割と早くから仕事が入っているでござるよ〜・・・早めに起きて、朝の散歩を済ませるでござる〜・・・」

そして、彼女の名前はシロと言う。彼らは半月前に結婚した、ホヤホヤの新婚さんだった。
ユサユサと布団をゆすり、彼を起こそうとするのだが・・・

「ん〜・・・眠い〜・・・すま〜ん。今日は散歩無しで〜・・・」
「え〜?それは駄目でござるよ〜・・・ほ〜ら〜・・・・・・起きるでござる〜・・・」

しぶとく抵抗を繰り返す良人に、こちらもくり返し声をかけていく。布団を揺さぶる手にもだんだんと力がこもって来た。

「あ〜・・・シロ〜・・・・・・そんなに揺らすな〜・・・」
「ならば起きるでござるよ〜♪朝の散歩に行くでござる〜♪さ・ん・ぽ〜♪さ・ん・ぽ〜♪」

歌うように軽やかなテンポを付け、シロは横島の身体を揺さぶりつづけた。

「あ〜・・・分かった分かった・・・起きるよ〜・・・」
「きゅ〜ん♪」

横島はついに根負けして、渋々と布団の中から這い出してきた。

「おはようでござる〜・・・だ・ん・な・さ・ま♪」
「ん・・・おはよ、シロ。」

朝の起き抜けとはいえ、そこは新婚の夫婦だけあって、お互いの顔を間近で見るだけで幸せな温かい気持ちが胸の奥から溢れ出してくる。
それは途端に2人に笑顔を作るのだった。

―― チュッ ――

と・・・シロはそのまま顔を寄せて、軽く一つくちづけをする。

「ん・・・シロ・・・」
「えへへ・・・おはようのきすでござる〜・・・」

そして照れて頬を紅く染めた。

「ん・・・・・・やっぱり、まだちょっと眠いな〜・・・」
「え〜・・・?そんな〜・・・だ〜ん〜な〜さ〜ま〜ぁ〜・・・」

しかし、そこで横島はそんな無粋な事を言ってしまう。当然ながら、シロはむくれてしまった。

「ん〜・・・もう一回キスしてくれたら目が覚めると思うんだけどな〜・・・」
「えっ?」

とぼけた顔で、そんな事を言う横島。そして、シロにも彼が何を言いたいのかが分かったようだ。
少し膨らませていた頬が、途端に元に戻る。

「も〜・・・しょうがない旦那様でござるな〜♪特別でござるよ〜?」
「ん♪」

台詞とは裏腹に、シロの顔は・・・頬が紅く染まりながらも、とても嬉しそうだった。

「ん〜・・・」

もう一度、ゆっくりと顔を寄せていくシロ・・・
横島も瞳を閉じて、その近づいてくる唇を待ち受ける。
そのまま2人の唇は端から触れ合・・・

―― クシュッ ――

「えっ?」
「はっ?」

・・・うかと思われた瞬間、部屋の中に可愛いくしゃみの音が響く。
その突然の音に、2人は一緒にその音がした方を向いた。

「ん〜・・・・・・もう朝〜?」
「!!?」
「?!!」

その場所とは、横島のベッドの中。横島の直ぐ隣。
本当に眠たそうに目をこすりながら、モソモソとその布団の中から這い出してきたのは・・・

「タマモッ!?」
「なっ!?タマモッ!!なっ、何故っ?!」

フサフサに拡がった、ボリュームの有る金髪を特徴ある形でまとめた女性。
彼女の名前はタマモ。九尾の妖狐という歴史にも登場するような大妖怪のはずなのだが、今の彼女を見ればその形容詞はただ一言『愛らしい』だった。
これはシロにも言える事だが、この2人は女性と言うよりはむしろ女の子と呼んだ方が正しいような外見である。

「ん〜・・・あ、タダオ〜♪おはよ〜・・・」

寝ぼけ眼であっても、やはりシロ同様に横島を見つけると嬉しそうに微笑む。
『ふにゃ』という擬音が付きそうな表情を彼に見せ、タマモは朝の挨拶をした。
その様子に、横島はドキッとさせられる。

「お・・・おう!おはよう・・・い、いや?それはいいんだがな?」
「ん〜・・・なあに?・・・・・・・・・ああ!」

横島の怪訝そうな顔を見て、こちらもいぶかしむタマモだったが、彼女は少しだけ考えると何かに気がついた。

―― チュッ ――

「!!」
「はい。おはようのキ・ス♪」
「あああああああっ!?」

そしてクスッと1つ微笑むと、顔を寄せて横島にキスをする。突然の事にそれをまったく無防備に受けてしまった横島は驚きの表情を浮かべ、傍らでしばし固まっていたシロはその事に気がつきようやく驚きの声を上げた。」

「ん?あれ?シロがいる・・・・・・・・・なんで?」
「それは拙者の台詞でござるーーーーーっ!!!」

現状を理解したシロは、凄まじい形相でタマモを睨みつけた。

「なな、なんでタマモが旦那様の隣に寝ておるでござるかーーーーーっ?!!!ああーーーーっ!?しかも、何故に裸でござるかーーーーーっ?!」
「ああっ!?そういえば、なんで俺も裸なんだあっ?!!」
「うわっ!?コラ、そんな大きな声出さないでよ。もう・・・」

タマモは冷静に耳を抑えて答える。

「別にいいじゃない?夫婦なんだし。あ、タダオのパジャマ脱がせちゃった♪この方がタダオのぬくもりをいっぱい感じられるし♪」

はい。そうなんです。実は横島とタマモは、半月前に結婚したばかりのホヤホヤの新婚さん・・・

「そうではないでござるっ!旦那様は昨日は大きな除霊で疲れたから、1人で寝ると言っておったたではござらんかっ?!」
「ん〜・・・別に疲れるようなことはしてないし.夜中に潜り込んで、隣で寝てただけだから平気・・・」
「ぬおーーーーーーっ?!!!」

シレっと答えられて、シロは再び爆発した。

「貴様っ!またしても抜け駆けでござるなっ?!今月は我ら2人が平等にという取り決めだったではござらぬかっ!!」
「なによ〜?別に、シロが来なかっただけじゃない。私の所為じゃないでしょ?」
「ぐぬおーーーーーーっっ?!!!」

先程より1段階大きな爆発。どうやらシロは口では叶わないらしい。

「おまえら〜・・・朝から喧嘩すんなよ〜?たのむからさ〜・・・」

毎度のこととはいえ、やはり頭が痛い横島だった。

「旦那様っ!早く起きて散歩に行くでござるっ!!」

横島の左腕を引っ張り、布団から引きずり出そうとするシロ。

「散歩なんか行かないでさ〜、もう少し2人で寝てよ?」

横島の右腕に腕を絡ませ、そのまま引き倒そうとするタマモ。

「うおーーーーーっ?!両方から引っ張るななーーーっ!!」

傍目には殺してやりたいほど羨ましいのに、とても困った顔をしている横島。
これは『新たに』2人のお嫁さんを貰ったこの横島さん家では、割と良く有る光景だったりする。

「旦那様ーーーーーっ!!」
「タダオ〜♪」

この家の朝に、穏やかな日々は余り無い。










・・・・・・・・・・・・

「シロちゃんとタマモちゃん・・・またやってますね。」
「良く飽きもせずにまあぁ・・・」
「フフフ相変わらず仲良しですね♪はぁ・・・・・・でも、まだあと半月も残ってるんですよ〜?」
「ん〜・・・・・・・・・ま、しょうがないって。新婚さん月間ってことで・・・」
「解禁になったら、私もいっぱい甘えようっと!」
「あ〜・・・そうしなさいって。ま、私も・・・・・・・・・かな?」
「ふふふふふふ〜♪」
「ふふ〜〜〜ん♪」



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