ザ・グレート・展開予測ショー

時事ネタ(^^;


投稿者名:逢川 桐至
投稿日時:(03/ 2/14)



──バレンタイン狂騒曲 Case2──



「ねぇ、今年はどうするの?」

「えっ? 今年は、って?」

 お湯に漬けられたボールの中、チョコレートを掻き混ぜる手は止めずに、話を続ける。

 放課後の調理実習室。
 その二人の少女がこんな所に居るのは、当然翌日の準備の為。

「アレ、あなたでしょ?」

「な、ななな、何の事かしら…」

 長い黒髪が、せつな、ぴくっと揺れる。
 泳ぎきっている視線が何ともあからさまで、隣に立つ少女の顔に苦笑が浮かんだ。

「あの後、一人で黄昏てたじゃない」

「み、見てたの?!」

「うん、ばっちり」

 がくんと肩を落しながらも、慣れた作業なのか湯煎の手は止めない。

「前にさぁ、学校まで来てた人とか、2年の… 何てったっけ? あの娘とか。
 なんか、最近人気有るみたいじゃない」

「…うん」

「あ、そろそろいいんじゃない?」

「そうね」

 溶かしたチョコを型に流し込む。
 掌サイズのハート型と、10個一組の一口サイズのハート型。

 ヘラで平らにして、余ったチョコは予備の型へと。 こちらは自分達で摘まむおやつ用である。

「で、どうするの?」

 誰かに上げる為に、普段籠らぬ調理室なぞに居るのだ。

「…うん。
 そっちこそ、どうするのよ?」

「今年も、ピートさんにかな。 どの道、イベントとして楽しみたいだけだし」

 実際、彼の元には山と積まれる事だろう。 親しいと言えるほどの仲でもなし、結局教会の方に寄付されてしまう事になる。
 それを見越しての一口サイズなのだし…

「で?」

 この大きめの型、これ自体、彼女のハンドメイド。
 気合いの入り方からして違う。

「判らないのよね。 青春のイベントとして楽しみたいだけなのか…」

 型をそのまま冷蔵庫に入れている、彼女の顔が少し曇る。

「それでいいんじゃないの?
 あ、イベントとしてって事じゃなくて、判らないって事の方、ね」

 お茶を準備しながら、言葉を続ける。

「好きなのか、愛してるのかなんて、そもそもちゃんと判ってる事の方が少ない気もするし。
 何にしたって、ウチのクラスの男子の中じゃ一番なんでしょ?」

 リボンで結わえたポニーテールを揺らして、コーヒーカップを手渡しながら顔を覗き込む。
 微かに、それでも彼女は首を縦に振った。

「なら、それでいいじゃない」

「そう、よね」

 本体である机に腰掛けた、彼女の顔にも笑みが浮かぶ。

「いつもみたいに青春を謳歌するんでしょ?」

「ええ!」

 窓から差し込む夕日に照らされて、赤く染まる実習室に二人の笑い声が響く。
 明日の騒動を想像してか、楽しげな響きをもって。



 【おわる】



────────────────────



……ぽすとすくりぷつ……

 次に転がすのは、『或る朝…』の続き、シロりべんぢの予定だったのですが、コレになっちゃいました。
 急いで書いてるから、出来がちょつとアレですが(^^; 思い立って1時間では、私じゃあコノ程度。 シーズン物だけに日をずらすのも難なんで、そのまま後悔……もとい公開。

 シロりべんぢは、なんか書いてたら方向性が変わっちゃって(苦笑)
 結局タマモが前面に押し出された揚げ句、18Kってモノでも無いんだけど、ここ向きじゃない様な代物に…(爆)
 そんな訳で放置プレイ。 続きでないなら、あっちの小ネタにでも転がすんだけど。 欲しい人います?

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