ザ・グレート・展開予測ショー

きっと想いは……


投稿者名:斑駒
投稿日時:(03/ 2/14)

きっと想いは通じる。
伝えたいという意志を力にして。
形あるものを人に手渡しで贈る事ができるように。
あなたにも、きっと……





「チョコレート!? ……私にですか?」

「はい。いつもお世話になっているお礼に。……受け取って、もらえます?」

キッカケは、本当に些細な事だったかもしれない。
それでも私は確かに、彼にチョコレートを贈りたいと思った。
それが事(こと)の始まりで、それが理由(わけ)の全て。

「でも私は、受け取るための手もなければ、いただいたチョコレートを食べるための口もありません。お気持ちは嬉しいのですが……」

知っていた。
彼は私たちと同じように話し、私たちと同じ時を共に過ごしているけれど。
全てが同じようには行かないのだということ。
でも。それでも。これだけはなんとかなって欲しい。
これは、私のワガママ。

「大丈夫! 私に考えがあるんです。……横島さん、お願いしますっ!」

「へいへい。よっ………と。 ―――ホラッ、おキヌちゃん」

お願いしてからほんのしばらく。
無造作に手渡されたのは翡翠色の小さな玉。
これが、私の願いを叶える唯一の希望。
大事にぎゅっと握りしめる。

「ありがとうございます!」

「本当にそんなんで上手くいくんかなあ?」

分からない。
でも、
やってみるしかない。
それは、単に私の思い付きに過ぎないけれど、
他に方法はないのだから。
必ず出来ると信じて……。

「………」

決意と共に、無言でコクリと一つうなずく。
そして、両手に包み持ったチョコレートと小さな玉に、想いを込めてゆく。
ともかく一途に。伝えたい全てを、特殊な力に載せて。

 キイイィィィィン!!!

不意に、握った手の中から柔らかい光が零れる。
目に一瞬焼きつく、『贈』の一(ひと)文字。
光が落ち着いてからそっと手を開いてみると、その上には何も無い。
小さな玉も、チョコレートも……。

「よ、横島さんっっ!!」

……届いた。
確信を持って、顔を上げる。
目が合い、お互いの確信が伝わる。
そしてそのまま視線を中空に移す。
姿見えぬ者が送る、目に見えぬ大切なものを待ち受けるために。


「……。……ありがとうございます! チョコレートの、霊魂に染み渡るような甘さが。文珠の霊力に込められた、温かい想いが。大変嬉しかったです」

お礼。
それは、贈り物が受け取られた証。
込められた想いが、相手に届いたという証。

「……いいえ。どういたしまして!」

嬉しかった。
贈り物を褒められて。お礼を言われて。
でも、なにより。
想いがちゃんと伝わって。
伝わる事が…確認できて……。


「しっかし、おキヌちゃんもやさしいよなあ。わざわざ人工幽霊一号にチョコを味わわせてやろうってんだから」

「え? そ、そんなことは――」

余韻に浸っていたところに、唐突にかけられた声。
一瞬、返答に窮してしまう。
……でも、違う。

「みんな横島さんのおかげです。ありがとうございました」

そう。
本当にやさしいのは、横島さん。
私の突飛な思い付きにも、真面目にとりあってくれる横島さん。
いつでも私のワガママにつきあってくれる横島さん。
そんなやさしさに、私は……


「……と、ところで。横島さんっっ!」

「ん、なに? おキヌちゃん」





きっと想いは通じる。
伝えたいという意志を力にして。
人工幽霊一号にチョコレートを贈る事ができたように。
横島さんにも、きっと………

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