ザ・グレート・展開予測ショー

LONELY FLOWER


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 2/12)


 さよならを言えば、全ては終わる。
 さよならを言えば、けりが付く。
 そんな、簡単なことだったら、どれほど楽だったろう?

 例えば、誰かの言葉に傷ついた人がいたとする。
 その人に優しくすれば、悪い人に思われるはずもなくて。
 でも、それは純粋な意味での好きって感情じゃない。
 はっきり言えば、それは真実の愛じゃない。
 いや、私がその愛ってのがどういうものなのかは知らないんだけれど。

 私を見て欲しい、ってのは、きっと、間違いないんだと思う。誰よりも、私を見ていて欲しいってのは。
 でも、それは、特別な人と言うフィルターを通してのものじゃなく―――色眼鏡つけないで私を見て欲しいってこと。もっと、純粋に見て欲しいと言うこと。
 確かに、クールな女の子が時折見せる優しさに惹かれるって言うパターンの中に当てはまっているのかもしれないけれど、そんなのってない気がした。
 もっと、真面目に私を見てよ?





 感傷に浸ってるあいつに声をかけたのが運の尽き。
 昔の女のことなんて聞かされたくない。
 「何で過去の事をどうこう言うのよ?
 今を見なさいっ!!
 忘れるなとは言わないわよっ!!
 でもねっ、あんたは間違ってるっ!!
 誰が何と言おうと、あんたのその顔はその子への侮辱よっ!!
 顔が悪いのは仕方ないにしてもね、笑顔くらい作っときなさいっ!!」
 適当なことを言っていた。
 多分に本心を付け加えつつも。
 その時あいつは怒ってたけど
 次の日から笑顔になってた。
 
 それで、私に言った。

 「お前が好きだ」





 そんな馬鹿げた話ってあり?
 あいつは勘違いしてる。
 きっと、勘違いしてる。
 私は自分の考えを押し付けただけだ。
 忘れるな、でも、笑ってろ。
 そんな自分の身勝手な願いを、昔の彼女を使ってあいつに頼んだだけだ。
 でも、あいつはそんな私を優しいと言った。


 寂しい顔をされるのは嫌だった。
 みんなといるのにどうしてこんなに悲しい顔をするのよ。
 寂しくないでしょ?
 みんながいる―――私がいる。
 もっと、周りを見渡して?
 寂しくなんてないでしょ?
 だから、泣きそうな顔はしないで?
 お願いだから―――


 あいつを一人にしている周りの連中が許せなかった。
 仕方がないとか、そんなことを言っている連中が。
 放っておいて上げることがあの子の為だとか大人ぶってる連中が
 許せなかった。
 何より、あいつを一人にさせていること
 それに気付いている自分がいるのに
 何もできないことが歯がゆくて
 無力感と焦燥感に身を焦がしている今の私が
 悔しくて
 許せなかった。



 泣きそうな顔をしてる。
 どうして泣かないのかと聞いた。
 泣かないんじゃない、泣けないんだ。とあいつは言った。
 どうして泣けないの?とあたしは聞いた。
 分からねえとあいつは笑いながら答えた。
 あたしはぶん殴ってやった。



 不愉快だから殴った。
 そんなことを言いながら笑うあいつが気に食わなかった。
 ほんの少しだけ―――痛かったら泣けるかな?
 そんなことも思いもした。ほんの少しだけ。 



 叫べばいい。
 寂しいのなら泣けばいい。
 苦しいのなら声に出せばいい。
 他の誰かが見捨てても
 あたしはきっとあんたを見てる。
 何もしてやれないかもしれない。
 ただ、突っ立ってるだけかもしれない。
 それでも、あたしはあんたを見てる。
 頼りなくても、それでも、あたしは本当のあんたを見てる。
 だから、私にだけは本当のあんたを見せて?
 そして、本当の私を見てよっ。


 
 
 「・・・タマモ?」

 「何よ?」

 「・・・いや、普通は女の子だったらもっといたわって接すると思うぞ?」

 「何で私があんたに優しくしなきゃいけないのよ?」

 「いや、別にいいんだけどな・・・打ちひしがれている男に鞭を打つような真似
を・・・」

 「いいじゃない、結果よければ全て良しと」

 「まぁ、吹っ切れたってのはあるけどな・・・かといって・・・」

 「・・・何か不満でも?」

 「・・・いいや。俺にはお前の素直じゃないながらの優しさと愛が感じ取れたからな、うん」

 「・・・馬鹿」






 断ってしまえば良かったかも?
 時々はそんなことを思う。
 でも、そのことで傷つけてしまうのが怖かった。
 それに、嬉しかったって言うのも事実だ。
 どうして、ここまで身勝手な思いを好意的に取れてしまうのだろう?
 そんなことを聞いてみても。
 答えはいつも決まってるんだから考える方としても馬鹿らしくなる。







 


 確かに、身勝手かもしれない。
 あいつの言葉は酷く独善的で。
 今はいない彼女を馬鹿にしているものとさえ思えた。
 でも、きっと、あいつも気づいてはいないだろうけれど。
 あいつは泣いてたんだ。
 言葉を叩きつけながら
 顔をくしゃくしゃにして
 凄く悲しげな顔を浮かべながら
 泣いてたんだ。
 俺の衝動的に出してしまった言葉で、傷ついたのかと思ってた。
 でも、あいつは俺の言葉なんて聞いちゃいなかった。
 あいつは、ただ、寂しそうだ、という理由だけで泣いてた。
 本当に、笑っちまうくらいに単純なことで。
 何故だろう?今まで考えてきたこと、感傷的になってた心が唐突に晴れてった。
 自然、心の中に彼女の顔が浮かんできた―――そう、ルシオラの笑顔が。
 今まで見てきたものがまるで虚像だったかのように。
 美化されることなく、曇りのない眼で見たあいつの姿。
 全てを包み込む慈愛に満ちた笑顔。
 気付く。
 俺は、いつからあいつの泣き顔しか浮かばなくなってたんだろう?と。



 本当の私を見て欲しい。
 それにはもう少し時間が必要かもしれない。
 心変わりするかもしれない。
 そんなことはないってあいつは言ってるけど。
 目移りしても仕方がない、魅力的な女は周囲に揃ってる。
 諦めそうにもない連中―――上等じゃない。
 私の魅力で、あいつを落とす。見せ付けてやるわっ。







 「なぁ、タマモ?」

 「何よ?」

 「俺のことどれくらい好きだ?」

 「・・・馬鹿?」

 「いや・・・辛辣だな、そりゃ」

 「・・・そうね」

 「ん?」

 「きつねうどんくらいは・・・好きかな」

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