ザ・グレート・展開予測ショー

帰ってきた横島 ―21―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 2/10)

『ギョルアアアァァッッ!!』
「ふんっ!」

―― ドゴゥッッ! ――

「キメラ・・・しかもこんなに巨大な・・・・・・」
『グギャルァァッッ』

私はその・・・まるで神話にでも出てきそうな容姿の合成獣が繰り出す攻撃をかわすと、1つ舌打ちをした。

「神通棍っ!」

―― シャキンッ ――

霊力を込め神通棍を伸ばすと、相手の弱点を探す。

『無駄ですよ美神さん。いくら貴女でもコイツには勝てません。まぁ、その身で知る事になるでしょうがね・・・フフフ。』
「ふんっ!」

室内の何処かに有るのだろうスピーカーから、この施設の主だろうと思われる人物の声が響いてくる。
いけ好かない声だ。40歳前後、小太りのハゲ親父ね。
私は瞬時にその容姿を想像する。ま、どうでも良い事だけど・・・

―― ドゴォンッッ ――

前足(?)の一撃が床にクレーターを作る。だが、それでも思ったより小さい穴だ。
この部屋全体が巨大なシェルターか、それ以上に堅固な構造になっている訳ね。

『グルゥギュワァオウアアァァッッ!!』
「ま、貴方に恨みはないんだけど・・・・・・」

―― ピュキィーン ――

私は、目の前の罪無き哀れな生物にいささか同情しつつも・・・

『バッ!?バカなっ?!!こんなはずは・・・』

―― ザシュッ ――

「はっ!はいっ!せやっっ!!」

合成獣の構造上、どうしたって霊基構造が不安定になってしまう部分を狙って神通棍を振り下ろす。

『ギャルアアァッッ!!?』
『何故だっ!?いくら弱い部分と言っても、人間の力でこんな事・・・』

それは一体、何処の人間と比較して言っているのかしらね?
少なくともこの程度の事、私が知る限りでも実行できる人間は複数人いるわよ?

「あまり私を舐めないで欲しいわねっ!」

―― ズビュッッ ――

『ギギョアアアアアアアァァッッッ!!!』

そして、神通棍を合成の為の核となる霊基結晶へと突き刺す。

「さようなら。極楽へ行きなさい・・・」

―― ドゴーンッ! ――

爆発して四散する、名も無き合成の獣。

『そ・・・そんな・・・』
「さあ、もうおしまいかしら?」

スピーカーの向こうの男に向かって、私は冷ややかな声を浴びせる。

『ふ、ふん!私の研究の成果はまだまだこんな物では・・・』
『ホールドアップ!そこまでだっ!』

ん、どうやら成功ね。

『きっ?!貴様らはっ!?』
『この建物は完全に制圧した!無駄な抵抗はやめ、大人しく・・・』

スピーカーの向こう側が途端に騒がしくなる。
馬鹿な男。この程度の陽動も見抜けないなんて・・・
こんな世俗から全てを切り離した場所で研究三昧してれば、そりゃあ仕方ないことかも知れないけどね。
貴方みたいなタイプで、尚且つ自分が天才だなんて思っている人間ほど、意外な程にこういう姦計には弱い物なのよ。
勉強になったわね。自称天才さん。

『美神指令、お疲れ様です。この建物の制圧は無事完了いたしました。』
「ごくろうさま。他のポイントからの連絡はどうですか?」
『順調です。現在3分の2の作戦ポイントから完了の連絡が届いています。他も全て順調との事。』

ま、ここが本命なのは間違いないでしょうね。

「了解です。では、貴方たちは引き続きこの研究所の家宅捜索を行ってください。この様子なら、まだまだ余罪は膨らみそうですものね。私も少し調べたい事が有りますので、しばらく単独行動します。
『了解しました。』

良し。ひとまずこれで安心ね。

―― あとは ――

・・・・・・・・・・・・




「令子ちゃん、お疲れ様。」
「西条さんもね。」

―― チン ――

僕は今、お気に入りのバーで令子ちゃんとグラスを触れ合わせている。最近では何物にも変えがたい至福の時間だ。

「すまなかったね、こんな遅い時間に仕事に呼び出してしまって。」
「大丈夫よ。だって・・・」

僕の誘いだからかい?いやあ、嬉しいなぁ。

「西条さんのまわしてくれる仕事って、すっごくワリが良いんですもの♪」

クッ!
ハハ・・・まあ、そうだね。確かにそういう仕事を厳選して、玲子ちゃんに紹介してるのさ。
気に入ってもらえたみたいで嬉しいよ。

「ふぅ〜、しっかし意外に手間取ってしまったわよね。」
「そうだね。僕と令子ちゃんの2人がかりで行った除霊にしては、手間取った方かもしれないな。」

なに、それも2人っきりの時間が長くなったと思えば良いじゃないか?

「Gメンの他の人達にも来て貰えれば良かったのにね。」
「うん。まあ、今回はちょっとタイミングが悪かったね。他の人達はみんな出払っていた時だったから・・・」

フフフ・・・当然、そういう時間帯を調べたんだよ。どうだい、令子ちゃん?僕はこんなに君の事を思っているんだよ?

「ま、なんにしても無事に成功して良かった。」

失敗する要素なんて最初からなかったから当然だがね。

「それより、どうかな?ココ、最近見つけたんだけどなかなか良い雰囲気だろう?」
「うん、そうね。店の雰囲気もだけど、カクテルも美味しいわ♪」

そう言って、令子ちゃんはグラスの中身を次々に飲み干していく。
相変わらず凄い飲み方だな・・・
もう少し雰囲気があっても良いんだが・・・まぁ、なに。些細な事さ。

「ハハハ。気に入ってもらえたなら何よりだよ。」
「はぁ〜・・・美味し〜♪」

むっ?
周囲の視線を感じるな。これは・・・ああ、なるほど。
どうやらいつもの事だ。
ハッハッハッ♪
なにしろ、これだけの美男美女のカップルだからね。女性の視線も男性の視線も、僕らに釘付けになってしまったな。
やはり、僕達はお似合いって事だよ。早く令子ちゃんにも気がついて欲しいものだね。

「マスター、ボトルワンプリーズ♪」
「かしこまりました。」

うああ、令子ちゃん!ペース速いよっ?!
ああ、だがしかしっ!
僕はほんのりと紅く染まった令子ちゃんの横顔を見て思う。
最近の令子ちゃんはとても可愛くなった。無論、前から可愛かったよ?
だがね、最近の令子ちゃんは・・・そう

―― 輝いて見える ――

そう言っても過言で無い程に綺麗になった。

「今度あいつも連れてこよう♪」

―― ピシッ!!!! ――

僕は認めないよ。

「ハハハ、令子ちゃん。あいつって言うのはもしかして彼の事かな?だとしたらいけないよ。彼はまだ未成年じゃないか?」

令子ちゃんが今、こんなに輝いて見えるのが・・・

「もう〜・・・西条さんってば相変わらずお堅いんだ・か・ら〜♪入学したての大学1年生だってコンパで浴びるほど飲まされるのよ?あいつだってへっちゃらよ。へっちゃら〜♪」

あいつに『恋』をしているからだなんてねっ!!
そんな天変地異が認められる訳ないだろうっ!?

「あいつだって、もう副所長なんですからね。ボチボチ大人の貫禄も欲しいのよ。」
「大人の貫禄?横島君に?ハッハッハッ、それは当分無理なんじゃ無いかなぁ?」

ってか奴には一生無理だ!!
あんな色情魔がこの世に生息している事自体に腹が立つぞ!

「そんな事無いのよ、西条さん。横島クンって、最近凄く落ち着いてきてね?私のほうがドキっとさせられちゃう事もあるんだ〜・・・へへへ♪」

ああっ!?
なんでそんなに嬉しそうに奴の事を話すんだい、令子ちゃんっ!!

「まぁ、その所為でさ・・・クライアントの女性とかに人気あるんだよね〜。ちょっと複雑。」

フッ!

「そういえば、彼の事が気になっている女性って意外に多いみたいだよね?いやあ、彼も隅に置けないなぁ♪もしかして、こっそり付き合っている人とかいるんじゃないのかい?」

人の好みをとやかく言うのは趣味じゃないんだが、それでもあんな奴が好きだっていう人間の気持ちは全く理解できないね。

「ムッ!」

フフフ、令子ちゃんは少し気分を害したみたいだね?
ハッハッハッ!これで横島君の評価はダウンだな。

「はぁ〜・・・・・・そうなのよねぇ。」
「はっ?」

と、突然令子ちゃんがため息をついた。

「横島クンって改めて考えると随分モテルのよね。最近は特に・・・」

な、何を言うんだい令子ちゃん?

「私がアイツのことをどう思っているのか、あと1つ自身が無いんだけど・・・アイツが別の女性と仲良くしてると、確かに腹が立つのよ。」
「き・・・気のせいじゃないのかい?」

嘘だっ?!嘘だといってくれっ!!

「これってやっぱり、私が横島クンの事を・・・」
「れ、令子ちゃん!グラスが空いてるよ?!ほらっ!もっと飲もうっ!!」

その先は、断じて言わせる訳にはいかないぞ!

「あ〜・・・大分良い感じね♪でも、これ以上は明日の仕事に触りそうだわ。ボチボチ上がりましょうか?」

なにっ!?もうかいっ?

「そうかい?それなら今度は僕の部屋で・・・」
「少し酔い覚まししたいから、今日はこのまま歩いて帰る事にするわ。西条さんはタクシーでしょ?」

いや、令子ちゃんちょっと・・・

「ごちそうさま、西条さん。また、良い仕事あったらまわしてね♪おやすみなさい〜♪」
「あ、ちょっ・・・」

―― カランカラ〜ン ――

・・・・・・・・・・・・




「・・・・・・・・・・・・フフフ、なぁに・・・まだこれからさ。」

くっ!

「マスター!ボトルワンプリーズ!」
「お客さん・・・・・・深酒はいけませんよ。」

ふんっ!

「・・・大丈夫だ。僕はまだまだ、酔っちゃいない。」
「・・・・・・・・・かしこまりました。」

そうさ、まだまだこんな事で大勢が決まったと思ったら大間違いだよ、横島クン!
令子ちゃんに相応しいのはこの僕さっ!
断じて君じゃあ無いっ!!
見ていたまえ横島クン!僕が大人の恋愛術と言うモノを存分に見せてあげるよ。
フフフ・・・

「・・・ハハハハ・・・・・・・・・クックックックッ・・・」
「・・・・・・・・・若さですねぇ。」



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