ザ・グレート・展開予測ショー

ハンター3


投稿者名:運値
投稿日時:(03/ 2/ 9)

深夜。
六道女学院に蠢く影が3つ。

よく見ると3人は雪之丞・ピート・横島である。
彼等は、彼等の黒幕『日本ソックスハンター協会』の理事であるMr.Cの命令により、寮に忍び込み靴下を漁っていたのであった。

「…でも、本当にこんな事して良いのですかね?」

この中で一番の常識人であるピートは、罪悪感があるのか少し躊躇いがちに呟いた。

「あ?何を今更。この中で一番の古株が」
「………」

雪之丞が厭らしい目と共に言う。それに反論できない自分。

ピートは思う。自分は何故この道に足を踏み入れてしまったのか。
後悔していないといえば言えば嘘になる。しかし、芳しき芳香は一度嗅ぐと常習となる麗しき麻薬。
もう戻れない茨の道。

ピートはソックスハンターとして目覚めた昔に思いをはせる。

(思えば、あの時あの人に逢わなければ…)

それは1年ちょっと前。僕はあの人に窮地を救われたんだ…。

僕の父が永き眠りより目覚め、島民を支配し始めた時にその人に救いを求めた。
嘗て、彼のローマ教会の怒りを買い破門された凄腕のGS。

彼は自分の依頼を二つ返事で承諾した。
報酬の話をしたとき、彼は無欲の風で金銭は必要経費しか要求しなかった。
ただ…彼はこう言ったのだ

「僕は、神に仕える身だ。邪悪を滅するのは僕の使命だからね。…そう言えば」
「はい?」
「いや、なに。君のお父上は目覚めてから着替えをしたかね?」
「いえ。あの服は彼の一張羅だと思いますが」
「そうか。ならばお金は要らないよ。だが、もし彼の駆逐に成功した暁には、君のお父上の靴下を頂けないだろうか?」
「……へ?」

思えばこの時、頭の片隅で信号機が黄色のランプを点滅させていたと思う。
…でもあの時の僕はまだ、普通の世界に楽園があると信じていたんだ。


事が済んで、彼に靴下を渡したとき彼の喜び様は異様だった。

「いや〜、すまんね。僕は悪魔を葬った記念に靴下を集めているんだ」
「?」
「良くあるじゃないか。そういうジンクス」
「…まあ、そんなものですかね」


何かがおかしい。日常生活から突如、非日常に足を踏み入れたような感覚。
この時、この感覚を信じていれば、この蟻地獄に足を踏み入れる事は無かったかもしれない。


彼に再開したのはそれからすぐ。GSになって島民の窮状を救う為に彼に弟子入りしたんだ。

GS試験本番。皆から確実と言われたけど、それが凄いプレッシャーになって。しかも、僕は上がり症で物凄く緊張していた。普段の実力の半分も出せなかったんだ。

そんな中、彼がメドゥーサ達一派に襲われて生死の境をさ迷ってるって言われたんだ。

しかも、今度の相手がその一派の関係者らしい。
横島さん達の前では強がって見せた。
でも、僕は…駄目だった。弱い人間(?)だったんだ。




緊張




勝てる気がしなかった。
控え室で、僕は久しぶりに涙を流した。この不甲斐ない自分に。
そんな時、試験会場に向かう前に彼から渡された物があることを思い出した。

「君は絶対に受かるよ。…でも、もし緊張してどうしようもなくなったらこの袋を開けてみなさい」

彼の台詞が脳裏に蘇る。

僕は懐に忍ばせていたそれを開けてみる。

そこには…




白い






真っ白い靴下が入っていたんだ。






「な!?」

僕は絶句した。一体こんな物をどうしろと言うんだ!!!

(これは僕の緊張を柔げようとするあの人なりのジョークか?)

一瞬そんなことを思う。しかしあの人はそんな事をする人じゃない。じゃあ、この靴下に何の意味が?

そんな時、僕は彼が除霊前によくする儀式を思いだした。
彼は、仕事前にかなりの頻度で股間から出した赤い布切れを鼻に当てる。

(…まさか、これを鼻にあてろと言うのですか!!!)

若干、彼に対する嫌悪感が顔に浮かぶ。
でも、彼は何の意味も無いことをする人間じゃないはずだ。これにはきっと何か理由があるに違いない。

…僕は、心を決め、それを徐々に鼻に近づけていった。


そして



薄れる意識。

ガクガク震える首

…その中で、僕は確かに神に逢ったんだ。

鳴り響くファンファーレの中で神は言った。


『汝、常識を捨てて靴下を捕れ』


そして、僕は悟ったんだ。臭いの前に、人の賎・貴賎はなく、神も悪魔も無い。あるのはただ『靴下』だけ。楽園はこの先にあると。

こうして、僕はあの人の、Mr.Cの右腕としてこの世界に足を踏み入れた。







ピートがトリップしているのを横目に横島と雪之丞は手当たり次第に靴下を回収していく。そして、あらかた回収し終わると無線で本部に連絡をいれた。

「作戦完了。末端価格1億の靴下は回収したぜ」
「了解。本部へ帰還せよ」
「…へ、言われるまでも無い」

雪之丞はまだトリップしているピートに言う。

「おい、帰るぞ。ダンピール!!!」
「僕をその名で呼ぶな!!!ってあれ?もうハントは終わったのか?」
「お前がトリップしている間にな」

横島が言う。ピートはバツが悪そうな顔をして自分の分の靴下が入った袋を持つ。

「じゃ、行こうぜ」

それを合図に、3人の人影は物凄いスピードで建物を後にする。






この後、末端価格1億の靴下をめぐり、美神達を巻き込み大変な事態にな
るとはこの時まだ誰も予想していなかったのであった。

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