ザ・グレート・展開予測ショー

帰ってきた横島 ―20―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 2/ 9)

―― ズズズ〜 ――

「はぁ〜・・・」

―― パリッ、ポリッ ――

「おキヌちゃん、ちょっと良い?」

おせんべいをお茶受けにしてお気に入りの緑茶を飲みつつ、最近はまっている連続ドラマを見ていたら美神さんに呼ばれた。

「なんれふか〜?」

私はおせんべいを咥えたまま返事をする。ちょっとお行儀わるかったかな?

「急用が出来て、出かけなくちゃいけなくなったの。悪いんだけど、ひのめの事も見てて貰えるかしら?」
私のお部屋に入ってきた美神さんは、20歳年下の妹、ひのめちゃんを抱いていた。
ひのめちゃんは最近、歩くのが上手になってきた・・・とはいえ流石に、まだ1人でほおっておく訳にもいかない。
1週間前に隊長さんが海外出張に行かなければいけなくなって、今週はずうっと美神さんが預かっている。

「いいですよ。1人も2人もそんなに変わんないです。」

そして、ココにはもう1人の赤ちゃんが・・・今は眠っていた。
横島蛍ちゃん0歳と2ヶ月。
横島さんの娘さんにして、あのルシオラさんの生まれ変わりという・・・私にとってはちょっと複雑な女の子。

「はぁ〜・・・おキヌちゃんってタフねぇ〜、私はだ〜め。やっぱ、子供はしんどいわぁ・・・」
「ふふふ、美神さんったら。」

私は美神さんからひのめちゃんを受け取る。

「あぅ〜・・・ほた〜、ほた〜・・・」

ひのめちゃんは、蛍ちゃんを見つけると嬉しそうに手を伸ばす。

「ふふ・・・相変わらず、ひのめちゃんって蛍ちゃんの事が好きですよね♪」
「ははは。なのよね〜・・・いったい、な〜んで気に入ったんだろ?」

美神さんも苦笑する。でもそれは、微笑ましい光景を見る視線なんです。やっぱり赤ちゃんって可愛いですよね。

「あ、じゃあごめんねおキヌちゃん。もう、行くから。あ、あと下手すると朝まで帰って来れないかもしれないから、横島君が帰ってきたら伝えといて。」
「分かりました〜。いってらっしゃ〜い♪」

―― バタン ――

美神さんはドアを閉めると、直ぐに出て行った。
急用ってなんだろう?
最近、横島さんが帰ってきてからの美神さんって、前以上に楽しそうにお仕事をこなすようになったものね。
今日もお仕事なのかな〜?
もしかしてデート?・・・・・・・・・なんて事は無いわよね。今の美神さんなら。

―― ふう ――

横島さんが帰ってきてからの美神さんって、横島さんに対して凄く素直になった。それに横島さんを本当に信頼するようになってるし。

―― しかも ――

横島さんの方も、美神さんに信頼されてることが分かってるから凄く頑張ってる。だから最近の2人は、凄く良い感じ。
これってちょっとまずいかな〜?とか思うんだけど、私は横島さんも美神さんも好きだし、あの2人が上手くかみ合っているのって結構見てて気持ち良い。
でも、やっぱりモヤモヤする時もある訳で・・・

「複雑だな〜・・・」

私は眠っている蛍ちゃんと、その横で蛍ちゃんに抱きつくような格好になっているひのめちゃんを見ながら呟く。

「あなた達は良いね。こ〜んなに可愛くて、みんなに愛されてる。」

赤ちゃんなんだから当たり前だけど、ただ居るだけで周囲に愛されてるものね。

「私なんか、どうやったらあの人に愛してもらえるかな〜って、いつも悩んでるのよ〜?」

あなた達もそのうち、こんな悩みを持つようになるのかしらね?ああ、でも蛍ちゃんはどうなるんだろう?!
ルシオラさんの記憶が戻って、横島さんとくっつこうとするのかしら?

「それは、いけない事なんですよ〜。」

いくら前世がどうでも、今は父と娘なんですからね。ここは私たちに譲ってください。貴女はもう一つ先の来世でね?
なんて言っても、今の蛍ちゃんじゃあ分かって貰えませんけどね。

「禁断の愛だなんて・・・・・・横島さん本気なのかしら?」

まさかなぁ。いや、でも・・・アノ横島さんなんだし。とは言え、幾らなんでも娘に・・・
ああ、でもっ!蛍ちゃんはルシオラさんで、2人は愛しあっていて・・・いやいや、それは前世の話。とは言っても、横島さんには今世の話なんだし・・・
そもそも横島さんは記憶が戻って欲しいって思っているのかしら?それとも、このまま娘として育てていくつもりなのかしら?今の横島さんって、その辺の事が見てて分からないのよーっ!せめてそこの所がどっちなのか教えてくださいっ!横島さーーーんっ!!

―― プシュー ――

はぁ・・・脳みそパンパンでふ〜・・・

「はぁ〜・・・」

ため息が漏れる。こんな事考えるのって、私だけなのかな〜?
美神さんは全然その辺にこだわってるそぶり見せないし。シロちゃんは自分が横島さんを支えてあげるだなんて言ってるし!タマモちゃんなんか全然そんな感じじゃ無かったのに、横島さんが帰ってきてから露骨に好意を示すようになったしっ!!

「ライバル多いな〜・・・」

最近ちょっと縁が遠くなったからやや安心とは言え、小鳩ちゃんと愛子さんからも目を離せないし。
意外なところではベスパさんがちょっと怪しいんだけど・・・
それに何と言っても!

「最近の横島さんってモテルんだもん・・・」

別に、私が好きになった横島さんだって所は全然変わってない。
優しい所も、いざって時に頼りになる所も、笑顔が素敵な所も・・・
前からそうだった。
変わったのは・・・

―― スケベじゃ無くなった所 ――

私がそう言ったら、横島さんは驚いた顔で「そんな事ないぞー?!俺は今でもお姉ちゃん大好きじゃーっ!!」って答えたっけ。ちょっと心外そうに。
なんで、スケベじゃ無くなったって言われるのが嫌そうなのかな?と思って隊長さんに聞いたら「彼、まだ若いんですもの。もう女に興味が無くなったなんて言われたみたいで嫌だったんでしょう?自分はまだまだ現役だって主張したいんじゃないかしらね?」だそうです。
男の人も難しいですね。
まぁそんな訳で横島さん自身は否定するんですけど、やっぱり明らかに前と違うんです。
前は美人の女性と見れば見境無く飛び掛っていたのに、今ではそんな事がなくなりました。隊長さんが言うには『適度にスケベ』で、私が一言でいえば落ち着いてきたんだと思います。
やっぱり、父親になったからなのかも知れませんね。

―― だから ――

前は気付きにくかった横島さんの良い部分に、たくさんの人が気付くようになっている。
この間、クライアントの女性が・・・

『横島さんって若いのに凄く落ち着いていて素敵ですね』

なんて頬を赤くして言って来るし!
しかも又、連絡差し上げても宜しいでしょうか?だなんて!?そんなの駄目に決まってます、もうっ!!

美神さんの代わりって事で特別講師として学園にやって来て、1年生の授業を見たらしいんだけど・・・

『横島さんってちょっと良い感じじゃない?』
『私もそう思う〜♪』
『また授業しに来て欲しいね!』

なんて1年生の間でちょっとした噂になるしっ!
昔の横島さんの事知らないから純粋に格好良いGSっていう風にしか見てないんだものーーっ!
貴女たちは、まだまだGS修行をしっかりしないと駄目なあんですよっ!!男の人にうつつを抜かしていちゃ駄目なんですーーーっっ!!
もうっ!

・・・・・・・・・・・・

「なんだか悔しいな。」

横島さんの良い所に最初に気付いたのは私だと思う。自惚れじゃないですよね?
前にそれっぽい雰囲気で告白らしい所まで行ったのになぁ・・・
どさくさで無い事になっちゃったし。横島さんの馬鹿・・・
なのに、いつのまにかこんなにモテモテになっちゃって!
だいたい、横島さんが無防備なのもいけないです。あれだけ好意を向けられても全然気がつかないなんてどうかしてます。いえ、気がついちゃうのもそれはそれでまずいんですが・・・

「そんなに誰でも彼でもに愛想を振り撒いちゃ駄目なんですから。」

そのうち刺されちゃいますよ?

「あぁぅ・・・・・・」
「あら?」

そこで蛍ちゃんが目を覚ました。逆にひのめちゃんは眠っちゃったみたいね。

「あ〜・・・どうしたのかな、蛍ちゃん?もうおねんねの時間ですよ〜・・・」
「あ、あう・・・だあ〜・・・」

人差し指を差し出すと、一生懸命ニギニギしてくる。
やっぱり可愛いなぁ〜♪
私も欲しいな、赤ちゃん・・・・・・

―― ポッ ――

いやだ、私ったらっ!!は、は、は、はずかしーーーーーーっっ!!
何を思ったのかは、誰にも内緒にしなきゃ。

「うん、やっぱりそうよね。」

私は蛍ちゃんを見て穏やかな気持ちを取り戻す。
色々とあるけど、とにかく横島さんはここに帰ってきてくれた訳だし・・・
わたしはわたしのやり方でゆっくり横島さんと仲良くなっていこう。

「ただいま〜」
「ただいま」
「ただいまでござる〜」

あっ!横島さんが帰ってきた

「あ〜♪」
「あら?蛍ちゃんにも横島さんの声が分かるの?」

もしかして、だから目を覚ましたのかしら?だとしたら凄いわね・・・

「ふふふ。それじゃあ、一緒にパパを迎えに行きましょうね〜♪」

私は蛍ちゃんを優しく抱き上げた。

「ママといっしょに♪」

きゃ〜!なんちゃって、なんちゃって〜♪



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