ザ・グレート・展開予測ショー

上下左右、何処何処へ!?


投稿者名:人生前向き
投稿日時:(03/ 2/ 9)




 
 あと二日で夏休みだというのに担任に呼び出されてしまった横島は、どうせ出席日数のことだろうと、渋りながら生徒相談室に向かった。最後の授業が体育だったため、着替えるのも面倒だとジャージの姿のままであった。本来、生徒手帳に不必要時のジャージの着用は禁止と記載されているが、それを知っているのは初代校長と机幽霊の愛子だけであろう。雑に扉をノックして、返答を待たずにノブに手をまわすと、まず始めに彼の目に入ったのは意外な人物だった。担任と向かい合って座っている女はなんとも真面目な声で横島
に挨拶した。


 「こんにちは、横島君。」

 
 横島は自分の目を疑った。何故この場所に彼女が存在しているのだろう。頭の中で彼女の重苦しい挨拶が反響している。その場に固まっている横島に担任は、椅子に座るよう促した。横島は四角いテーブルの一辺を申し訳なさそうに占拠すると、自分の前にあった、いつもならあるはずも無いお茶を口につけた。


 「よ、横島君、こちらはオカルトGメンの隊長を勤めていらっしゃる、美神美ち・・・。」


 「美神美智恵です、よろしく。」


 「こ、こちらこそ」

  
 横島君などと白々しく呼んでくる担任に嫌な顔をした。初対面を装っているように美智恵は横島に自己紹介をして、握手を求めた。それにつられて横島もまるで美智恵を知らぬように、汚れている手をズボンで拭き握り返した。


 「え〜なんだ、横島君。彼女はその〜〜・・・・」


 「先生、私のほうから説明させていただきます。」


 「す、すみませんね。」

 
 ゆきづまった担任に美智恵はそう告げると、バックから紙のようなものをだし横島の眼前に見えやすい位置に置いた。それは何かのパンフレットらしいが、外国語で書かれているため横島には読めなかった。その様子を見てクスリっと笑い、美智恵はパンフレットについて説明を始めた。


 「これはね、来年ベルリンにできる国立大学なんだけど、初めてドイツで霊能科を作ることにしたらしいの。そこで国は本腰を据えて、お金に糸目は付けずに世界に誇れる霊能科をにしようということになったのよ。いう通りに多額のお金を使って、素晴らしい設備と一流のなかの一流のゴーストスイーパーをスカウトして講師にいれたのはいいのだけれど、問題は将来性があり優秀な生徒がいなければ意味が無いっていう事なのよね。世界中のありとあらゆる人物を調べた結果、数名の高校生が選ばれたのよ。」



 「!?」

 
 横島は美智恵の口から出てくる自分の力に相応していない話に天を仰ぎながら聞いていた。美智恵は一度彼の母である百合子と会ったことがあり、お互い気が合い友達関係を築いてしまったのだ。それ以来横島にとって美智恵は、彼の雇い主以上に恐れている人物になった。他にも恐れている要素は山のようにあり、特に多いのが、彼にたいして猫撫で声を出した時だ。その時はきまってオカルトGメンの仕事の手伝いを横島個人に要請してくる。助けを求めようとも、美神達、事務所メンバーは連れ去られていく彼を哀れむように首を振る。もともとオカルトGメンは超エリート集団であって、彼らが困難を擁する事件というのは一般のGSなど手も足も出せないものばかりである。さらに彼の場合、アシストにつく側ではなくつかれる側なのだ。オカルトGメンは東京都だけに留まらず、要請があれば全国各地に起こる霊的障害の事件にあたる。この前はもっとひどく香港まで連れて行かれた。



 「というわけで横島忠夫君、あなたはその大学から逆指名を受けたのよ。」


 「いやです!」

  
 「ふふふ、ごめんなさいすでにご両親は承諾してくれたのよ。」


というわけなのだ。断ろうにもすでに母百合子に連絡を入れ、いつも事後承諾とということになっているのだ。


 「お時間を割かせて頂いて申し訳ありませんでした。でわ、私は失礼します。」


 「あ、はい!。」

 
 最初から最後まで圧倒されてばかりの担任に一礼すると、美智恵は部屋から出て行った。担任は今まで我慢していたタバコを震える手で口に持っていくと、ゆっくりと紫煙を揺らした。横島は肩を落とし、すでに冷めてしまったお茶を飲むんだ。二人とも何も喋らず時間が進む。担任は二本目になるタバコを箱から出し100円ライターで火をつけ、そして想いかねて横島に聞いた。


 「お前って凄い奴なんだなぁ。」


 「はぁ、すんません。」


 横島は条件反射で頭を下げてしまった。


 「それよりどうするんだ成績は、出席日数もぎりぎりだしこのままだと卒業できないぞ。」


 「う〜〜ん。」


 「校長は出席日数や成績なんてどうにでもなる、これは本校きっての名誉だ!何て言ってるけど・・・・・特別補習受けるか?。こちとらお前に卒業してもらわんと何言われるかわかったもんじゃないからな。」



 「お願いします。」


 横島は力なく答えた。相談室を出て、学生服に着替えた。浮かない顔をしている横島に声をかけた愛子だが、いまだ衝撃から回復していない横島は、返事もままならず教室を出た。バレンタインでひどい目にあった下駄箱でくつを履き替え外に出る。そして校門前にあった、頭だけ確認できる見慣れた車に、怒りを覚え歩を早めた。


 「やっほー。ほらぁ、ひのめもやっほ〜。」


 「に〜に、ちっふぉ〜。」


 先程会ったときとはうって変わり、ひのめを抱きながら軽い声で話し掛けてくる美智恵に、覚えてた怒りがどこかに飛んでいってしまった。ひのめを連れて来るというのもさすがである。横島達、事務所のメンバーはひのめの教育上に悪いと、ひのめの前では決して怒鳴ったり、騒いだりしないことにしている。美神にさえ言わないが、ひねくれ者は一人で十分、この切実な思いは美智恵も、横島も、オキヌも、シロタマも、さらには唐巣神父までのひのめに対する暗黙の教育姿勢となっていた。


 「怒る気失せましたよ。」


 ハァ〜と溜め息をついた。


 「どうせ事務所に行くんでしょ、その前にちょっとおばさんとデートしましょ♪」


 「手伝いは嫌ですよ。」


 「あらら、私をそんな眼でみてたのね。」


 ひどいわ〜と、わざとらしく泣いてみせる美智恵を急かし、横島は車に乗り込んだ。美智恵はひのめをベビーシートに座らせ車を発進させた。前の話の続きをいうと、オカルトGメンに協力するにあたりもう一つ、横島が元から無い頭を悩ませる問題がある。それは美智恵の一番弟子であり部下でもある西条輝彦である。出会った当時から横島に対して良い感情を持っていなかったのだが、最近になりそれがますます悪化し会うたびに嫌悪の念を顔にさえ出すようになってきた。美智恵も気づかないわけは無く、西条のあからさまな態度を一度は戒めもした。しかし一向に改善する兆しのみえない弟子の態度に嘆息を洩らしている。


 「で、何で西条がいるんすか?」


 「君は挨拶というものを知らないのかい。」


 「じゃあ、お前からすればいいじゃねぇか。」


 「僕の方が年長者だ、年下が先に挨拶するのが礼儀だろう!」


 「年功序列の制度は日本の悪い習慣だぞ、留学帰りの西条君。」


 「なんだとぉ!!!」


 「やめなさい西条君。」

 
 「ですが・・・」

  
 「やめなさい。」


 美智恵は西条をたしなめ、横島に軽く頭を下げた。


 「急な仕事が終わったとこなのよ、ごめんんさいね、先にオカルトGメンの事務所に西条君を置いてくからデートはそれからにしましょう。」


 「やけに重要なデートそうですね。」


 「やぁ〜ね、ただのデートよ。」

 
 オカルトGメンの事務所は横島の仕事場の隣である。そう考えてみると重要な用件ともうかがえるが、相手が相手であるためただ世間話かもしれない。隣でハンドルを握っている掴み所の無いデートの相手に、先行き不安な横島であった。


 


                                                                 (たぶん)続く・・・





今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa