ザ・グレート・展開予測ショー

帰ってきた横島 ―19―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 2/ 8)

都内某所。とあるマンションの屋上。
時刻は21時過ぎくらい。
俺たちは、初対面の人物と対峙していた。

「俺はー!俺はーーっ!俺が一番なんだーーーっ!!!」
「やれやれ・・・・・・思い込みもココまで来ると哀れやなー。」

絵画コンクール、なんたら展に出品応募したが、鼻にも引っかからずに落選。
本人だけは大賞を取る気満々だったらしく、そのショックで首吊り自殺。
その後アトリエにしていたマンションの一室を主な根城に、悪霊として現れるようになる。
しかも、コンクールの主催者や審査員の枕元にまで立つようになってしまった・・・か。

「あいつらー!!俺が一番なのにーーーっ!!いかさまだーーっ!!八百長だーーーっっ!!!許さないぞーー!!許さないぞーーーっ!!」

ったく・・・

「はっきり言って、おまえの絵が下手だったんだ。他人を恨む前に、自分が努力すべきだったんだよ!しかもそんな事ぐらいで命を粗末にしやがって・・・」
「だまれーー!!何も分からんしろーとがぁーーーっ!!俺の芸術を理解出来んやつは死ねーーーーっっ!!!オマエも!オマエもっ!!オマエもだあぁーーーっっ!!!」

ふん!こんな奴に情けなんぞいらん。

「シロ、タマモ!お前らだけで出来るか?」
「うおーっ?!やらせて頂けるでござるかーーっ!!」
「ふふん。楽勝よっ♪」

まあ、ぼちぼちこいつらにもこういう事を慣れさせていかんとな。

「相手がこんなんだろうと、油断だけはするなよ!・・・じゃあ、やってみ?」
「うおーーっ!!」
「ひゅっっ!!」

俺がGOサインを出すと、2人は待ってましたとばかりに飛び出して行っちまった。
前より随分と霊力の凝縮がスムーズになったシロの霊波刀。
かなりの数と大きさをコントロール出来るようになったタマモの狐火。
良く修行してるよなぁ。
どちらも武器として申し分無い威力だ。

「刀の錆となれっ!!」
「燃え尽きるが良いわっ!!」

身体能力の方も、流石に妖怪だけあって2人とも人間離れしてるしな。
このレベルの悪霊なら、例え1人づつだったとしても問題無く勝てるだろう。

―― あとは ――

不意の出来事とか、変な失敗とかを俺がカバーしとけば大丈夫だな。
いつもは喧嘩も多い2人だけど、除霊の時のコンビネーションは抜群に良いのも好材料。

「これでとどめっ!」
「・・・でござるっ!」

―― ボウッ! ――
―― ズシュッ! ――

「ぎょああああああああああっっっっっ!!!!?」

悪霊のいる場所の四方八方に狐火を出現させ、ソレを一斉に悪霊めがけて放つタマモ。
全身が燃え上がり怯んだ悪霊を、シロの霊波刀が切り裂き、霧散させた。
ん、上出来。

―― ガガンッ ――

って、なにーーっ?!!

「うあっ?!」
「なっ!?わっ!!」

ちょうど、シロとタマモが手をついた部分の手すりがそのまま外れて・・・

「落ちたーーーーっ?!!」

二人はもつれ合い、地上めがけて落下する。
ここは50階建てマンションの屋上だぞーーーーっっ?!

「やばっ!!」

俺は直ぐ、2人の後を追いかけて飛び降りた。
ああ、だがっ!このままじゃ追いつかん!

『風』

俺は手を上に掲げると、その1文字を描いた文珠を作り出した。

―― ビュウッ! ――

途端に急激な突風が巻き起こり、俺の身体は重力に引かれる以上の速度で落下していく。
おっしゃ!なんとか間に合うっ!!
目の前にはしがみ付きあっているシロとタマモが見える。

「おいっ!しっかりしろっ!手を掴めっ!!」

俺の叫び声に反応して、シロとタマモが同時に手を伸ばしてきた。
あと、ちょい・・・
もうちょっと伸びろ、俺の左手!
後ちょ・・・・・・

―― ガシッ ――

しゃっ!!

『浮』

2人の手が同時に俺の左手を掴んだ。それを確認すると同時に、俺は右手で再び文珠を生成する。今度の文字は『浮』・・・

「はぁ〜・・・間に合った〜・・・」

地上までもう10mも無いぞ?滅茶苦茶やばかったぁ!!

「うおぉぉぉぉ・・・せっ、せんせぇ・・・」
「ヨ、ヨコシマ・・・・・・はは・・・」

2人の声は震えている。顔も蒼ざめとるな。
必死で俺の腕にしがみ付いている手から、身体自体が震えているのも伝わってきた。

―― フワフワ〜・・・スタッ ――

そこで地上に到着。

「ふぅー。」

俺は一息ついた。だけど、それだけじゃあ駄目だ!

「まずは、確認だ。2人とも、無事か?!」

俺はすっかり憔悴している2人に向かって言う。

「は、はいでござる!拙者は無事・・・でござるよ。」
「わ、私もっ!大丈夫よ。」
「そうか。」

ま、落ちただけだしな。身体には問題無いか。
それよりも、少し落ち着かせた方が良いな。

・・・・・・・・・・・・




「さて、今回の除霊の反省会だ。」

頃合を見計らって、俺は2人に話し掛ける。シロもタマモも、除霊に関しては俺の話を真面目に聞いてくれるから、実は俺も話しがいがあるんだよな。
だからこそ、変な事は言えないし。だから俺も必死に勉強してたりする。

「霊を祓うって事にかけては、2人とも問題無い。それぞれ良く修行してるし、戦い方も様になってきたと思う。ま、だからこそ今回は2人だけにやらせて見た訳だけどな。」

俺が肯定的な意見から入ったので、2人は嬉しそうだ。
が・・・

「でも、まだやっぱり未熟だな。最後のあれはいただけない。」
「うっ!」
「くっ!」

まぁ、ここを言われるのは分かっている事だろうからな。

「あれは、除霊対象しか目に入っていなかったって事だな。あまり一つにばかり集中しすぎるのも良くないって勉強だった訳だ。」

言われるたびに、2人の表情は見る見る曇っていく。
ああ!こんな顔されるの苦手なんだよなー・・・だが、甘やかしてはイカン!
俺がこいつらを・・・

―― 守ってやるんだからな ――

だからこそ、少しでもこいつらの技術を上げてやらなければ。
俺が美神さんにして貰ったように、今度は俺がこいつらを鍛えてやるんだ!
とは言え、

「ま、昔の俺に比べたら全然マシさ。一つ一つ気をつけて修正していけば、直ぐに1人前のGSになれるって♪」

今度、おキヌちゃんたち六道学園の3年生が、GS試験を受ける。六道学園では3年生にならないと受験を許可してもらえないんだそうな。更に3年生でも学園内での試験に受からなければ許可してもらえないらしい。
そんな所が例年、全体の3割の合格者という驚異的な合格者を輩出する理由の一つなんだろうな。
あ、ちなみにおキヌちゃんは32人の『一般枠』とは別の『特殊能力者枠』ってので受ける。ネクロマンサーの笛が吹けるってのが対象理由だそうだ。
美神さんに、『あんたも、あの時文珠が出せていたら特殊能力者枠で受けられたのにね。』って言われた。
稀少且つ強力な能力がその対象になるらしい。ま、俺の事はどうでもいいんだが・・・
シロとタマモがGS試験を受けると言ってきた。シロは元々そのつもりだったらしいが、タマモも「私も受けるから」って宣言したので俺たちは少しビックリしたんだよ。
理由を聞いたら「シロより役に立ってみせるわ」って答えたもんだから、一悶着有ったんだけどね。
相変わらずライバル心一杯だなぁって言ったら、鈍感って言われた。
なんでだろう?

「ご教授かたじけないでござる!拙者、必ずや立派なGSになって、今以上にせんせいのお役に立つでござるよっ!」

シロが土下座してそんな事を言う。はぁ〜、こいつのこの固い所ってなんともならんのかな?普段はかなりフランクなくせして、こう言う事に関しては頑として譲らないからな。

「ま、私の方がシロより役に立ってみせるけどね♪」

タマモのほうは微笑みながらそんな事を・・・・・・言ったらどうなるか分かるのになぁ。

「だまれ、女狐っ!大体さっきはタマモの所為であんな目に会ったのでござる!」
「なんですって?!馬鹿犬っ!!よくもそんな事が言えるわねっ!!?」

こうなるんだよなぁ・・・
どうして、こいつらってこうも喧嘩しあうんだろうか?

「折角、せんせいに誉めて・・・」
「それなら私のほうが・・・」

はぁ・・・
ま、俺もこんな事で悩める位には成長したって事にしとくか。
昔からは考えられんよな。俺が誰かにモノを教えるなんて・・・
一時的にシロの師匠になった事はあったけど、あれははっきり言ってそんな上等なもんじゃ無かったし。
クローンノイド社にいた1年。やる事無くって、修行っぽい事してたのが良かったなー。あと、借りた本が全部霊能関係の本ばっかりだったしな。他に読むもの無かったから、英語の本だってのにいつの間にか全部を暗記する程に読み尽くしたし。
色々為になってるよなー。
そうじゃ無かったら。たったの2ヶ月でここまで出来るようになるなんて有り得んかったろう。

―― 弟子か ――

ちょっと良いもんだな。自分の技術を誰かに教えるってのは。
まぁ、こいつらが優秀な生徒だって事も有るのかも知れんが・・・

「せんせいは渡さんでござる!」
「それはこっちの台詞なのよっ!」

ん、そういえば蛍はそろそろ寝てるかな?グズって無ければ良いけどな。おキヌちゃんに迷惑かけてないかなー?
さっさと帰るか。

「おーい。そろそろ帰るぞー。」

俺は一触即発な2人に声を掛けると、1人で歩き出した。

「あっ?!待って欲しいでござるっ!」
「先に行かないでよ、ヨコシマっ!」

2人はどうやら喧嘩を止めて追ってくるらしい。そいつは良かったな・・・
日常が充実してるってのは良いもんだ。
あの2人も多分、あれで充実してるんだろう。

―― 幸せってなこんな毎日かもな ――

俺はそう思った。


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