ザ・グレート・展開予測ショー

陽光の差す街で


投稿者名:トンプソン
投稿日時:(03/ 2/ 8)

月がその地を照らしていた。



ビル群に囲まれた狭地に立ち、彼女はその光を全身に浴びていた。


日光は路面凍結したアスファルトを白銀に輝かせ、煌き輝く光の花道を作り出している。
彼女はそのちょうど中心に立っていた。

両腕で体を冷気からかばい、地を睨みすえるにして全身に日の光を浴びていたのだが。

凍るような冷遇な視線も吹き抜ける。
しかし彼女の力を試すよな冬の太陽、その光は試練に似た光槍を与えてくれさえする。



そっと顔を上げる。
視界からアスファルトが消えても、凍結路面はその存在感を失う事はない。

街のニオイを、騒音を、冷気をそして街の厳しさを・・・
視界を上げることにより、普段は感じられないものまで感じられるような気がする。
その存在は弱まるどころか、かえって強まったかのようだ。



竦めている身体ををそっと締める。
今はけっして恩恵を預かることの出来ない温かい光。
若し可能ならその太陽から夏の光をを掴む事ができるのではないか・・・

顔は空を向いていないため、その両目から太陽を見る事はできない。
しかし、見てないからこそ今は厳しい冬の光が当たり前のようにあるのではないか。


あたりを漂う冬の光。
嗅覚で、聴覚で、触覚で、自分の全てで感じる。

冬のの光の力が・・・いや、心が流れ込んでくるのを感じる。
体を駆け巡り、彼女の心を優しく包み込む。


(明るい・・・・・・・・・)

心が満たされていくのを感じる。
どこか毒々しい充実感。

過去には現実にやってきた行為。


(夜の女だった私なのに・・・・・・・・・)

かつてある男が最後に見せた時の感覚。


悪事であることにすら事に気付きもせず、失う事しか考えなかった日々。
今この瞬間だけ・・・・過去に浸る陰気さを味わう。

過去に縛られるつもりはない。
それは彼女の、彼女の今の生活に反する事だから。
だから純粋に今の普遍的な気持ちを感じる。


それでも絶えがたき感覚に心が少し揺れ動き、ほんの少し目線が下がる。

手足に徐々に感じる陽光の力を借りて、過去の思いに別れを告げる。
思ったより難行だったことに少し戸惑いを感じた。


開いた両目が閉じる。
捕らえられていたであろう光が一瞬で霧散していくのを感じる・・・・

耐え難い安堵感が体を襲う。

国を滅ぼした充実感。
それが一瞬彼女の心に蘇る。

思わず襲ってきそうな光にぶつかりそうになったが・・・・・消えた。

一時の過去の光をそっと太陽に返す。
未練なぞ無い筈だ。


(太陽の光を浴びる資格は・・・・もう手に入れたわよね・・・)

自分に言い聞かせるようにそっと思う。


夏の光はもう手に入れている。
掛け替えのない四つの光。

くん、とハナを鳴らしその光たちの気配を感じる。


その存在は歩道にいる。
現実の感覚でその夏の光たちを感じられる事に安堵する。

安堵は僅かだが余裕を彼女に与えてくれた


再び冬の太陽に気持ちを戻し、思う。
今度は冬の太陽そのものの美しさを・・・・・・




上空に漂う結晶のような太陽。

白金の太陽は、黒い雲を退治して、触れることすらなかった。
まるで雲が太陽を一一筋でも触ることをおそれるかのように・・・・



強く吹く風が弱まり、彼女の髪をふわりと落ち着かせた。
先ほどまでしんしんと冷える地面に髪が少し触れる。



地面の冷気が、ややボサボサの髪を整える
白銀の髪は金に染まり、ポニーテールの髪はロングへと変わる。


髪が吸った氷の粒は水に変化し小さく輝く。
それは彼女を包み込み、淡い金色ののドレスを作り出す。


太陽が彼女を魅せ、彼女もまた太陽を魅せた。






ふと視線を感じる。
振り返るとそこに彼女の保証人が立ち竦んでいた。


「どうしたのよ?」
どこかぽおっとした表情の保証人に問いかける。
「あ、ああ・・・・なんか、綺麗だなって思っっちゃって・・・・」

「そうなの?うれしいけど・・」
そう答え、空に浮かぶ太陽に視線を移す。

「ん〜、まぁいっか。綺麗っていうより可愛いって奴?やっぱ」
「?」
保証人の言葉意味を掴みかね疑問符を浮べた所に、別の声が飛び込んでくる。


唯一の男の子が、
「さっさと来いよ!置いてくぞー!」

黒髪の少女が、
「横島さん、タマモちゃん、帰りますよー。」

短髪の赤いアクセントをもつ少女が
「早くするで御座るよ。ノロ狐〜」


「いくわよ?」
歩き出す美神に思いっきり頷き、綺麗より可愛いってなによ!と最後の声に返しつつ、歩み出す。


美神のの体と少し距離が離れたからであろうか・・・・冬の太陽に少し心細さを感じる。
呼び声に答え少し早足で歩く横島に、小走りで追いつき歩みを合わせる。

縋る様にしてその腕に抱きついた。

「どうしちゃったのよ」
「・・・寒いのが嫌なの。」
二人の歩みを少し遅め、彼女は小さく呟いた。

美神は何か言いたげだったが、彼女は有無を言わせず抱きつく腕に力を込めた。


(この守銭奴の気まぐれが私に夏の光をくれたのよね・・・・・)

光の内の一つ、そのぬくもりを感じながら彼女は満足そうに目を細めた。

歩みを進める先には同じように温かい光たちが待っている。
四つの光全ての温かさを感じる期待に胸が膨らむ。



さっき冬の太陽が押し付けてきた光とは何が違うのだろう?

彼女は疑問に思った。
しかし、きっと答えはもう知っているのだ。





失った光はもういらない。
心に蘇る事はあっても、それは虚構の域を出ないだろう。

だが、過去の失われた光は事実だ。
心にしまっておくだけでなら、害はもうないはずだ。

失った事で、その大きさを知っているのだから・・・・


頼るべきは、今傍にある光。
近くにある光ほど失いやすく、失った時にその自分の想像を超えた大きさに気付く。

気付いていないからこそ傷つくのだろう。
気付いていない事を知っているから一緒にいたいのだろう。


守ってくれるから、こんなにも温かく感じるのだろう。

その本当の大切さを知るためにも一緒にいる。
永遠に知る事のできない、光の価値を求めて・・・・・



(ずっと、ずっといたいな・・・・)

彼女の今を言葉に応じるような冬の太陽から夏の光の瞬きを感じたような気がした。






太陽はかつての彼女を監視していた。


妖艶な美女に代わることも出来なかった

聖なる存在。

過去の彼女には不要な存在。


だが、現在の安堵感を再び心に蘇らせる力もあり・・・・・・


どれも今の彼女にとって有益な、魅力のある力。


彼女は夏の太陽ににた今の太陽に力を願った。
彼女が今、最も望むことを・・・・・・・・・・




(願わくば・・・今の大切な仲間たちと一緒にいられるように監視して・・・・・)


白金の太陽に・・・その光に、小さく祈った。


彼女の願いに、言葉を繰らぬ太陽はただ神々しくその街を照らしていた。

普遍の太陽になんとなく満足そうな表情を浮かべる。
寒かったな・・・・と、冬の太陽が満ちていた世界に別れと礼を告げて・・・・・・



タマモは今一緒にいるべき光たちの元へと戻っていった。

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