ザ・グレート・展開予測ショー

帰ってきた横島 ―18後半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 2/ 7)

<中半からの続き>


「しかし、小僧は人気者じゃのう?」
「イエス・ドクター・カオス。横島さんは・皆さんに慕われて・ます。」
「横島君は、様々な試練を乗り越えて来たからね。それに辛い思いもしている。他人に優しく出来る青年に成長したと思うよ。」
「神父もそう思うアルか?ワタシもそう思うアル♪ボウズもあれで、結構良い所有るやつだからな。意外にモテル奴アルね。ボウズの癖に羨ましいアル。今度、新製品の実験台に使ってやるアルよ♪」
「わしも、文珠の研究とやらをしてみたいの。たとえ幾百の凡庸な天才がさじを投げようとも、この大天才ドクターカオスの手にかかれば、その力を再現してみせようぞ!」
「その時はワタシの店で全部買い取るアルよ♪」
「ノー・ドクター・カオス・・・・・・成功率0.03パーセント以下・・・」
「は、ははは・・・」




「さて、じゃあそろそろ魔鈴の店に移ってパーっとやろうか?」

美神さんが全員に向かってそう言うと、みんなこぞって賛同する。
結局このメンバーってお祭り騒ぎが好きなやつらばっかりなんだよな。

―― でも ――

今のうち、決心が鈍る前にこの問題を片付けておかないとな。

「美神さん、ちょっと良いですか?」
「ん、何?」
「一つ、言っておきたい事があるんです。」

本当なら、これだけの我侭を許して貰った直後にして良い話じゃ無い。それは重々承知している。
でも、これはしておかなければいけない話だ。
俺は決意を込めて口を開く。

「俺、蛍っていう家族が出来たじゃないですか?コイツには絶対辛い思いをさせたくないんです。」
「ふ〜ん・・・・・・で?」

良かった。とりあえず美神さんは真面目に聞いてくれるみたいだ。

「給料を上げて貰えないでしょうか?」

―― !!? ――

俺がその一言を口にしたとき、周囲から一斉に驚愕の悲鳴が上がった。

「よよよ、横島さんっ!ななな、なにも今そんな事いわなくてもーーーっ!!」
「せんせーーーっっ!!勇気と無謀は違うでござるーーーーっ?!!」
「バカッ!馬鹿ヨコシマッ!!なんて事言うのよっ?!」

事務所の面子の反応はこんなもんだ。他の人の反応もだいたい似たりよったり。

「・・・・・・・・・・・・」

美神さんがジッと俺を見ている。今までならこれに耐え切れずに逃げたんだろうけど、もうそんな訳にはいかない。

「横島・・・・・・・・・アンタもう首になってるのよ?」
「えっ?!」
「ただのバイトが、1年も無断欠勤したのよ?当然でしょ?」

があっ!?そういえばっ?!

「美神さんっ!?なんて事言うんですかーーっ?!」
「せんせいが折角戻って来たと言うでござるのにーーーーっ!!」
「美神だって、ヨコシマが帰ってくるの待ってたじゃないっ?!」

ああ、でもそれって当たり前かも。1年の無断欠勤・・・・・・やばいよなぁ、普通。

「ねえ、横島。オタク、アタシの事務所で雇ってもいいワケ。今のオタクは使える人材なワケだから、むしろこっちから頼むワケ。親子2人が生活するには十分な待遇を用意して向かえるけど、どう?」
「あ、ちょっと待てっ?!どうだ、横島!俺とコンビ組まんかっ?元々一臂狼な俺だが、お前となら上手くやっていけるとおもうんだが?!」
「そうだ〜、横島ク〜ン。六道学園で〜実技指導の教師を募集してるんだけど〜・・・」
「なんだったら、妙神山に来ればいいでしゅ!修行はキツイでしゅが生活には困らないでしゅよ?」

と、途方にくれている俺に一斉に声が掛けられた。
が・・・

「ストップ!!」

そんな勧誘を、美神さんの一声が静める。

「横島君。はっきり言ってなかったから、今言うわ。」
「はい・・・」

うっ!やっぱ少し怖いな〜、真剣な美神さんて・・・

「バイトとして雇っていたけど、もう貴方はクビです。」
「うっ!」

や、やっぱり?クビっ!?あああ!!やっぱりなぁ・・・

「美神さんっ!!あのっ、私のお給料から半分くらい横島さんにっ!」
「拙者のお小遣いからも・・・」
「私のも・・・」

ああ、おキヌちゃんもシロもタマモも、みんないい娘やなぁ・・・
でもそりゃあマズイ。
ケジメはしっかりしとかんとな。幸い、就職先はなんとかなりそうだし。
本当は・・・

―― ここで働きたいけど ――

我侭言い放題じゃマズイよな。

「すいませんでした、美神さん。我侭言ってしまって。俺・・・」
「もしも!」

えっ?

「もしも、まだこの職場で働きたいなら、アンタ・・・」

もしかして?!条件付きだけど働かせてくれるんですか?
ああ?!でも給料が下がるんじゃあやっぱりココでは働けない!

「この事務所の共同経営者になりなさい。」
「はっ?」

い、今、美神さんなんて言った?

「事務所の名前も『美神&横島除霊事務所』にするわ。」

ちょ、ちょ、ちょ!

「ちょっと待って下さい、美神さんっ?!!そそそそ、それって一体どど、どーゆー事っすかぁーーーーっ?!!」

訳分からん!?なんだ?いったい何をどーやってそんな話になるんだ?!

「令子ちゃんっ!?それは一体どーゆー事なんだいっ?!!」

あ、西条が復活した。

「どうもこうも、言葉通りよ。横島君には経営者としてこの事務所に居てもらうのよ。」
「だだだだだ、だから何故そんなっ?!!」

西条が酷く取り乱してる。だが、俺も人のことは言えん。
そうだよ、美神さん!いったい何故なんだっ?!

「横島君って、実力は有るじゃない・・・でも仕事はしょっちゅう失敗するでしょ?」

うっ!痛い台詞・・・

「足りないのは責任感なのよ。」

せ、責任感っすか?

「失敗しても誰かが尻拭いしてくれる限り、多分ずっとあんな感じね。」

い、言われてみれば・・・いっつも美神さんを便りにしとったなぁ。

「だからね、横島君を使うにはこれがベストなの。私と一緒に経営者になってもらって、相応の責任を負ってもらうわ。」

そ、相応の責任っすか?

「自分だけじゃなくて、従業員の命も生活も、自分の責任で面倒見なきゃいけなくするのよ。」
「なっ!?そ、それは・・・」

なんぼなんでも、それは無理じゃないっすか?!美神さん、俺は・・・

「アンタ、もう男だろ!親なんだろう!?」
「!!」
「いつまでも甘えるな、横島っ!!コレぐらいでビビッてて、その子を幸せにしてやるなんて言えるのかっ!!?」

―― !!! ――

くぅー・・・相変わらずキッツイなぁ美神さんは。
でも、だからこそ・・・

―― 響くなぁ ――

「答えはっ?!」

そうだよな。俺の答えは決まってるんだ。

「・・・・・・・・・・・・宜しくお願いします。美神さん。」

俺はそう言って頭を下げる。そんな俺を見て、美神さんもニィと笑った。

「宜しく、パートナー!」

そして右手を差し出してくる。俺はその右手を握り返して・・・

「はい!」

美神さんに笑い返した。




「嘘だ・・・これは夢だ・・・ハハハ・・・・・・こんな現実は有る訳無い・・・」
「よくやったわ令子!まずはパートナーとして、一人前の男として認めたのね?そして互いに助け合いながら苦楽を共にしていけば!やがてパートナーとしての信頼関係は、男と女の関係へ・・・」
「あの美神君がこんなに、ウウッ・・・こんなに成長するなんて・・・・・・クウッ!私は、私はっ!主よ、今日のこの喜びは・・・」




「じゃあ、今度こそ魔鈴の店に行くわよー!」

―― オオーーッッ!!! ――

やれやれ、ちょっと思いがけない事になっちまったな。
でも・・・多分これって、美神さんが俺を認めてくれたんだ。
それは、

―― すげぇ嬉しい ――

「でも、これからは本当に頑張らんとな。蛍だけじゃ無い、おキヌちゃんとシロとタマモの命と生活を俺が守らなきゃいけないんだし・・・・・・なにより、美神さんの期待は絶対に裏切れん!」
『私もそう思いますよ、横島さん』

あっ!

「人工幽霊一号!?そう言えば、お前にまだ挨拶してなかったな?悪い、ただいま。心配か苦労か、かけちまったか?」
『はい、貴方がいなくなって事務所の雰囲気が暗くなりました。もちろん私も心配しましたよ。』

そっか・・・

「すまん。」
『いえ、貴方が帰ってきてくれて嬉しいです。横島オーナー。』

オ、オーナー?!

『これからは、そう呼びます。経営、頑張って下さいね。』

そっかあ・・・こいつも扶養家族みたいなモンになるんだなぁ。

「ほら、横島君なにしてるのー?みんな外に出ちゃったわよー!」

っと、美神さんが読んでる。

「じゃ、行って来る。これから宜しくな、人工幽霊一号!」
『はい、横島オーナー』




懐かしい人、懐かしい場所、懐かしい感覚・・・
俺は今、ココにいる。
そう・・・
俺は、自分のいるべき場所へと帰ってきたのだ。
願わくば、これからもこの場所に・・・
この場所が、俺の居場所である様に・・・
俺が守っていけたらなら良いと思う。




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