ザ・グレート・展開予測ショー

ルシデジャ♪(二)


投稿者名:パープル遼
投稿日時:(03/ 2/ 6)

「・・・美神令子監修『マジカル・ミステリー・ツアー』?」

「・・・しっかし、なんつーかたまに変な仕事するよな美神さんって・・・」

「なんなのかしら?」

「どうもお化け屋敷みたいなのじゃないかな。」

「入ってみる?」

「やってんのかな?人いないぞ。」

これだけ混雑した中で、ここだけあまりにも空いている。係員しかいない。

「すいませーん。ここ、やってるんですか?」

「あ、すいません今ちょっと機械の調子が悪くて整備が・・・あ、ちょうど終わったみたいです。・・・本当なら多人数で入るのですが、今ならお二人だけで入れますよ。」

ルシオラの問いかけに、にこやかに係員が答える。

「ラッキーじゃない。行きましょ♪」





「へええ。おキヌちゃんって、昔は幽霊だったんだ・・・普通逆よね。」

「逆って・・・まあその通りだけど・・・」

「あ、ヨコシマ!!・・・ふーん、結構良くできてるじゃない。・・・まだ見習い?」

「・・・この時代の苦労は凄かったな俺。良く生きてたもんだ・・・文珠もなかったし。」

「ねえねえヨコシマ、昔の話聞かせて?・・・GS試験の時のとか。」

「ああ、あんときはメドーサのヤツがなあ・・・」

仲良く談笑しながら、ロボットに付いて歩いている。だいぶ話がはずんでいるようで、もはやあのぎこちなさは(あんまり)ない。
・・・どーでもいいがこのロボット、凄い技術である。こんな所でこんな風に使われるべき物なのだろうか。

「ふーん、他には?」

「そうだな・・・マリアと美神さんとで中世に行ったことがあるぞ。」

「中世!?ああ、時間移動ね。」

「そ、カオスの爺さんの若い顔はなかなか笑えたぞ。それでヌルってヤツがな・・・」

ルシオラは横島の話を熱心に聞いている。関係の深さの割に、昔の彼を知らないのでこの機会に色々聞いておこうと思っているのだ。
そんなことをしているうちに、ふと横島が立ち止まった。話に集中していたルシオラは一歩先で止まる。

「どうしたのヨコシ・・・」

次の瞬間、横島はルシオラを押し倒していた。

「な!?・・・ちょっ、こんなとこで・・・」

赤く・・・なっている暇もなかった。次にはルシオラの立っていた場所に・・・

ずがあんっ

と、なにものかの『腕』が突き刺さったのだ。

「な、何よアレ!?」

その『腕』はぐねぐねと気持ち悪い音を出しながら、奥の暗がりへ消えていく。
そして見えなくなったと思ったら、また別の暗がりから凄い勢いで突っ込んでくる。
今度は転がって避け、跳ね起きる。

「なんだあ!?アトラクションじゃ・・・ないよな。悪霊か!?」

「また来る!!」

三度目の攻撃。今度の狙いは、横島。

「この!・・・っ!?」

霊波攻撃をしようと、ルシオラが掌に力をためる。が、なぜかうまくいかない。それどころか・・・

「・・・っ・・・気持ち・・・悪い・・・?」

膝をつく。顔色も悪い。

「!?・・・ルシオラ!!・・・どうした、大丈夫か?」

何とか攻撃を避けて駆け寄り、心配そうに声を掛ける。

「ごめ・・・ここ、何か変・・・力はいんない・・・」

「分かった、文珠を・・・出ない!?どーなってんだ!?」

「・・・!?・・・床見て・・・これ、霊力吸収の結界だわ・・・」

「なんでそんなもんがこんな所にあるんだ!?」

そこへまた攻撃。

「クソ、逃げるしかないってか!?得意分野だけどな!!」

ルシオラを抱え上げ、走る。・・・俗に言う、『お姫様抱っこ』ってヤツで。ルシオラはぐったりして、横島の首に手を回している。
来た道は、塞がれてしまった。奥へ、走る。


しかしなぜ二人とも結界に気づかなかったのだろうか。
横島は仕方がない。基本的に人間は霊力、霊体というモノに対して、神族魔族は当然として、野生の獣とすら比べられないほど鈍感だ。GSといえども、それなりに意識しなければ、自分の霊力が下がっているなんて気づかないものなのだ。
ではルシオラは?確かに彼女は霊体の固まりで、自分の霊体異常にはすぐ気づくはずである。しかし今は数ヶ月前の――後のGSには『大戦』と呼ばれる――戦いの後遺症で霊体が不安定になっている。本来ならこの程度の結界など、たやすく破れるほどの力を持っているのだが、そのせいで感覚が狂い結界に気づかないだけでなく、力をあっさりと消されているのだ。

閑話休題。


「ううおわああ!?」

走る走る。逃げる逃げる。
だんだんペースの早くなってきている『腕』の攻撃を、横島は全てかわしきっていた。大した体力である。
と、前方に扉が見えてきた。

ばがんっ

その扉を蹴り開けて、急いで閉じる。・・・そこで、これで少しは休める、と思ってしまったのがマズかった。

ひゅっ

「・・・しまっ・・・!!」

ばきゃっ

油断して強烈な一撃を食らう。・・・それでもルシオラを庇えるあたり、この男の良いところだろうか。
吹き飛ばされて、壁に叩き付けられる。額から血を流して、気絶しているようだ。
・・・たぶん平気だろう。目が『ぐるぐるギャグ目』だし。

それでもやはりルシオラには心配なようで。
ふらつきながらも側により、声を・・・掛けようとしたところでその声が響いた。































「やったぎゃ!!やってやったぎゃ!!いちゃいちゃしてるおみゃーらが悪いんだぎゃ!!」




「・・・・・・・・・・なに、こいつ・・・?」

『変な丸いの』。それがルシオラの第一印象だった。
確かに『変な丸いの』だ。グニャグニャした丸い胴体に、頭、腕、足、尻尾などが申し訳程度に付いている。
ただし腕は伸びるようだ。先ほどの攻撃の正体はこれだろう。

「げあっひゃっひゃっひゃー!!この調子でいちゃつきバカップルを粛正してやるだぎゃー!!」

「ゆーえんちでデートなんかする輩はみーんな敵だぎゃー!!」

「楽しい夏の思い出なんか作らせないんだぎゃー!!死ね!!だぎゃー!!」

『変な丸いの』は、生まれて(?)初めての戦果に――ルシオラが目に入らないほど――狂喜しているらしい。独り言を叫んでいる。
本当ならこんなのほっといて逃げたいのだが、出口をその丸い巨体で塞がれているので、ルシオラは意を決して口を開いた。

「・・・おまえ、なんなの?」

「ぎゃ?・・・び、美人に声を掛けられたぎゃ・・・」

「おでは『コンプレックス』。夏の陽気のカゲにひしめく、陰の気をすする妖怪だぎゃー!!」

「聞いたことないわね・・・生まれたての下等妖怪ってトコかしら。」

「・・・そーいうおみゃーも人間じゃないぎゃ?・・・そーだいいこと思いついたぎゃ!!

「・・・なによ・・・」

なんだか凄く嫌な予感がする。

「そこの男の息の根を止めて、おみゃーをおでのもんにするだぎゃ。」

あっさりと、外道極まりないことを言う。

「!!・・・そんなの、許すわけないでしょ!!」

体の不調を無視して気丈に言い放つ。相手がコンプレックスよりももう少し格好のいい敵だったら、倒れている横島の目が『ぐるぐるギャグ目』でなく普通に気絶しているのだったら、非常に絵になる。・・・残念ながらそうではないが。

もたもたもた

走っているつもりらしい。

ぺしっ

攻撃したつもりらしい。

「・・・・・。」

「・・・・・。」

「・・・なんでおまえには結界が効いてないのよ!!」

「・・・結界?」

「足元見なさい、足元!!」

言われて下を向く。自分の腹で足が見えない。ちょっぴり悲しくなったが、どうも床に変な模様が書いてあるのは分かった。

「・・・こんなもん、気合いとこんじょーだぎゃ!!」

「ワケわかんないわよ!!」

「ま、それはともかく一緒に来るだぎゃ。」

「イヤだっつてんでしょ!!」

「・・・それならしかたないぎゃ。」

「力ずくで連れていくだぎゃ。」

ぐいーん

腕が伸びてルシオラを掴み、持ち上げる。

「れっつごー」

「きゃー、いやー、起きてーヨコシマー!!」

ぴく

「今・・・ヨコシマ・・・と言ったぎゃ?」

「・・・言ったわよ・・・?」

「その男はもしや『ヨコシマタダオ』というのかぎゃ?」

「・・・そうよ・・・」

ぼとっ

「きゃっ!」

コンプレックスはルシオラを取り落とした。手がわなないている。
その巨体をぶるぶると、ふるわせている。怒りからか。恐怖からか。ルシオラには分からなかった。

「・・・我ら一族に力を与えし者・・・」

「・・・我らが始祖にして最高の・・・」

「・・・我らの存在の柱・・・」

「・・・その『ヨコシマタダオ』が・・・」

「・・・よりにもよってこんな美人と・・・」

「・・・・・」

「・・・神は死んだー!!!!!」

ずがーん

自爆した。

「どーゆう意味だてめえ!!」

「あ、ヨコシマ起きた?」

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