ザ・グレート・展開予測ショー

帰ってきた横島 ―17後半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 2/ 6)

<中半からの続き>


ズバリ、確信を付いた台詞。横島は一瞬、驚愕の表情をしたが。直ぐに又いつもの顔を作った。

「この話をして、誰かに『私が産んであげる』って言われるの恐れたんじゃない?」
「はは・・・な〜に言ってるんすか〜?そんな事無いっすよ〜。ってか、俺の子供っすよ?誰も産んでくれませんって。隊長の考えすぎっすよ〜。」

横島はヘラヘラしながらそう言うのだが、実際は下を巻いている。美智恵が言ったような思いを、確かに横島は抱いていた。

自分が愛した女性を産んでもらう事への抵抗。一体誰がそんな役割を買ってくれるだろうか?でも、もしかしたら誰かがやってくれるかも知れない・・・・・・同情で。事情を知っている面子なら絶対に有りえないって話じゃないよな。そもそも自分を好きになってくれる女なんて、これから先現れるのだろうか?きっと現れないよな〜。いや、万が一俺を好きになってくれる女性が現れたって、その娘にルシオラを産ませるのは・・・・・・むしろそっちの方が酷い話じゃないのか?いかん!八方塞がりだ・・・
なんて事を確かに考えていたのだ。
彼が鈍いのは相変わらず。彼を愛してくれる女性も、多分同情からだけでなく彼の子供を産んでくれえる女性もそれなりにいるというのに、それには全然気がつかない。
とは言え、確かに複雑な事情なのは間違いないだろう。
さっきはこの話はしなかったが、これも今回の事のきっかけの1つである。

「ふ〜ん・・・・・・まあ、そう言う事にしておくわ。」

美智恵はそんな思いに薄々気がつきながらも、あえて深く追求しなかった。
ちなみに、この話に及んでからジッと考えるような仕草を見せる女性が何人かみえる。どうやら自分に照らし合わせて考えてみたようだ。そして見せる複雑な顔。やはり、簡単に答えを出せる問題では無いのだろう。

―― ポンッ ――

と、そこで横島の身体が元に戻った。文珠の効果が切れたようである。

「そうだわ、横島君!?文珠の効力ってこんなものでしょう?どうやって女性の姿で出産まで固定していたのかしら?もしかして受精した後は胎内に戻さなかったの?」

それを見て、美智恵はまた一つの質問をした。もともと、文珠の効力はそんなに持続する物では無いはずだ。普通の体外受精なら、受精後は母体の子宮に着床させるはずだから、少なくとも10ヶ月程度は女性のままでいなければならないはずである。でも、文珠ではそんなに長期間の変化は無理。となれば、受精後は母体に戻さず培養槽ででも育てたのだろうか?それとも・・・

「もしかして代理母出産?」
「いえ、ちゃんと俺が妊娠して産みました。そっちの方法も選択肢には入ってたんすけど、出来るだけルシオラを・・・って事を考えると、母体は俺である事がベストなんだそうです。なので1年間、つい3日前まで俺はずっと奈々緒でいたんですよ。で、その方法なんですが・・・」

美智恵の考えは横島本人に否定された。

「文珠を飲みこむんです。するとですね、効力を発揮している間どんどん使われて減っていく霊力を、俺の身体から補充してくれるんですよ。この方法だと、安静にしてる限りは1ヶ月くらい効力が持続するそうです。」

横島は研究所の職員から聞いた話をする。実際にそれを試した訳では無いのだが、データから換算するとそういう結果が出るらしい。
これは予断だが・・・・・・約2名が、『恋』文珠事件を思い出してムカムカしていた。

「勿論それでも足りないわけなんですが、それは部屋の方に細工したそうです。霊力の拡散を防いで、循環の流れを操作してやって・・・常に俺自身に一定量の霊力が流れ込むような部屋なんだそうですよ。」
「なるほどね。それくらいなら確かに可能な技術だわ。」

美智恵は説明に納得する。同時に、これで大体の事は聞いたかなと考えていた。
横島の失踪の理由。何故誰にも言わずに失踪したのか?何処で何をしていたのか?どうやって今回の事を行ったのか?全部聞かせて貰った。

「あ、あとですね・・・隊長に頼みたい事が有るんですけど。」
「頼み・・・何かしら?」
「今回の事で世話になった研究員から、内部告発ってのを受けちまったんですよ。ICPOが調査中って言ってましたけど、クローンノイド社は確かに裏で条約違反レベルの心霊兵器を研究してるらしい・・・んだそうです。それを突き止めて欲しいって言われました。」

横島は真面目な顔で言う。

「ま、その辺は任せて頂戴。元々こちらでも睨んでいる訳だし、いずれ証拠を掴めるでしょう。」

―― 気になる事も出来たしね ――

美智恵は心の中で1つ反芻っして答えた。

「有り難うございます!」
「じゃあ、ひとまずこんな物かしら?後は事務所の方でゆっくりと皆で問い詰めていきましょう。。パーティーの準備も整ってるでしょうし♪」

美智恵は全員に向かってそう切り出す。横島は嫌なことを思い出して、途端に情けない顔を見せた。

「はい!はい!はい!せんせいに質問でござる!」
「うおっ!?なんだ、どうしたよシロ?」

全員が美智恵の意見に頷いて椅子から立ち上がった時、突然シロが手を上げた。

「せんせいがおなごの姿になった時の名前は、何故に『奈々緒』と言うのでござるか?」
「ああ、なんだそんな事か?ええとな、研究所の奴に『便宜上とはいえ、母親の名前が必要になる事もあるだろうから、何か考えろ』って言われてな?俺が考えたんだよ。」

横島はシロの質問に答える。

「俺の名前は『ただお』だろ?あかさたな・・・ってあ段を並べていけば、『た』の次って『な』じゃんか?なもんで『ただお』→『ななお』って決めたんだ。」
「あ・・・・・・安易ね。」

タマモは少し呆れていた。

「あ、名前と言えば!この赤ちゃんの名前って聞いてませんでしたね?えっと、当然女の子なんですよね?」

そこで思い出したようにおキヌも問う。

「ああ、ルシオラの魂が身体の生成に影響を与えたからね。きちんと娘になったよ。で、コイツの名前?それは・・・」
「そのままルシオラちゃんじゃないんでしゅか?」

横島の答えを遮り、パピリオも思った事を口にした。

「ん・・・・・・・・・それも考えたんだけどな、コイツが前の記憶を思い出すかどうか、その辺が分かってないからな。まんま同じ名前もどうかと思ったんだよ・・・・・・」
「記憶が戻らなかったらどうする気?」

美神が恐る恐る尋ねる。

「記憶が戻らなかったら、俺の娘のままで良いんですけどね・・・もし思い出したら・・・・・・実はまだ決めかねてます。難しいっすよね?ただ、今の所はコイツは可愛い俺の娘って事で良いんです。仮に記憶が戻っても、関係がどうなるのであれ娘である事にも間違いないわけですしね。」
「それって、もしもルシオラが記憶を取り戻したら辛いんじゃない?」

逆にそうなるのでわ?美神は問う。

「ん・・・・・・コイツがその時に何を望むかですね〜。ははは、コイツが望むなら父と娘の禁断の愛位屁でもないっすよ!」
「ぷっ!」

美神はその答えに唖然となった。

「それで、名前でしたよね?」

横島は愛する娘を優しく抱き上げ、その名前を口にする。

「蛍(ほたる)・・・・・・横島蛍です。」

その顔は、間違い無く親の顔だった。



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