ザ・グレート・展開予測ショー

帰ってきた横島 ―17中半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 2/ 6)

<前半からの続き>


「確かに研究はさせましたけど・・・・・・でも、オカルトGメンでやった事とそんなに変わらなかったですよ?結果のほうも今一だった見たいだし。第一、文珠は兵器として使うには大きな欠点が有るじゃないですか?オカルトGメンの研究員だってさじを投げたほどっすよ?」
「えっ?なぜ欠陥品なのでござるか?」
「はっきり言って、これ以上ないくらい上質の武器だと思うんだけど?」

シロとタマモが不思議そうに尋ねる。自分達が知る限り、文珠というものはおおよそ欠点らしい欠点がない万能の武器に思えるのだ。いったい何処に欠点があると言うのだろう?

「そうね。確かに武器として考えたなら、文珠は恐ろしいくらい強力なものだわ。でもね、兵器として使うにはさっき横島君が行った通りに欠陥があるのよ。」
「確かにそうだな。そもそも、兵器というものに求められるものは3つある。」

美智恵が横島の話を肯定すると、ワルキューレがそれに続けて語りだした。

「1つはスペック。つまり、どれだけ使い勝手の良い武器であるかという事だ。これに関しては文珠は文句なく合格点だろう。」

それは武器として使う以上、当然の事だ。これに関しては文珠は最上級の評価を得るだろう。

「2つ目がコスト。作るのに、そして維持運用するのにかかる金額だな。どれだけ強力な武器だったとしても、それに国が傾くほどのコストがかかってしまっては兵器としての魅力は薄い。兵器として運用するならば、その辺はよく考えねばならないだろう。例えば今回の場合なら・・・仮に文珠を人工的に精製出来たとしても、1個作るのに莫大な資金、人的資源、あるいは時間等が掛かりすぎては意味が無いという事になる。」

兵器として使う以上は「どれだけの資金でどれだけの効力を出せるか?」と言うものが常に重要になってくる。この辺が、ただ強力ならば良いという武器と違う所だろう。

「そして3つ目。それは量産性だ。只一つで戦局を変化させられる武器となると、アシュタロスの魔体レベル・・・・・・とまでは言わなくても、あれに伍する位デタラメな力が必要になる。そんな例外を別にすれば、一般的に兵器という物はその能力に応じた数が必要になってくるのだ。文珠1個と精霊石銃50丁だったら、兵器として優れているのは後者だ。」

文珠1個で出来る事自体は多い。だが、文珠1個で実際に出来るのは、その中の1つだけなのだ。対して精霊石銃が50丁あったならば、それを50人の兵士に持たせればいい。
目的が決まっているのなら、汎用性などさほど重要ではないのだから。

「そう言う事よ。文珠は現在、人間界では横島君にしか生成出来ない稀少なアイテムなんだけど、オカルトGメンの研究員がコレを人工的に作成してみたいって言い出してね?横島君に頼んで研究に協力して貰った事が有ったのよ。」
「ちょ?!ママッ!?そんなの聞いてないっ!?」

初めて聞く話に、美神が美智恵を睨むようにしていた。

「だって、貴女が知ったらお金取りそうだったんだもん。」
「なっ!?マッ、ママッ!!」

美神は心外だと言いたげである。
だが・・・

―― 美神さんなら言いそうやな〜 ――
―― 美神さんなら言うかも・・・ ――
―― 美神殿なら有り得そうでござるな ――
―― 美神ならそうするわね ――

事務所の面子は全員同じ事を思った。

「まあまあ、それは置いておいてね・・・オカルトGメンの研究室が出した結論はこうよ。『文珠の生成は、理論的には不可能ではないかもしれない。だが1個作ろうとするだけで最低数万マイト単位の霊力が必要と予想されるため、兵器としての価値はきわめて低い。結果的に他の研究を行った方が有意義である。』」
「ちょっと待ってっ!?何よ、その数万マイトって?!あれって精々数百マイトの霊力の結晶体でしょう?!!」

確かにそう。横島の生み出す文珠は瞬間的に数百マイトの霊力を放出する程度の筈である。美神の疑問はもっともだった。

「文珠っていうのは、凝縮系霊能力の究極の1つなの。もともと横島君の能力って凝縮系ばかりじゃない?きっと稀有な素質が有ったのね。霊力の凝縮って言うのはもう完全にセンスが物を言ってくるのよ。ある程度までなら鍛錬で出来るだろうけど、更に上の高密度高圧縮をしようとすると、放出と凝縮のバランスを限界ギリギリでコントロールする必要がある訳。で、これを人工的に行おうとすると、100マイトの霊力を外側から押さえ込むのに100の2乗・・・つまり10000マイト必要になってくるのよ。」
「つまり、せんせいはやはり凄いと言う事でござるな?」

説明を理解しているのかしていないのか、シロは目を輝かせて横島を見つめる。尊敬の眼差しだった。

「ちょっと話がずれちゃったわね。つまり、文珠っていうのはそのセンスのある人間が生み出さない限り兵器としては使えないのよ。そしてそれだと量産できないから、やっぱり兵器としては使えないって事。」
「そういう事です。ま、そんなだったから俺も協力する事にOKしたんですけどね。1年やってみて出た結果はほとんど同じでしたよ。」

横島は笑って言うのだが、美智恵は別の事を考えていた。

―― クローンノイド社は、文珠を人工的に作ることが目的だった? ――

何処かに腑に落ちない部分を感じるが、それを表に出す事はしない。

「まあ、つまり研究に協力する事が代価だったと・・・・・・それはまず、良しとします。次に聞きたいのは、何故誰にも内緒でそれを行ったのかというところよね?」

この質問には全員が興味を持っている。

「理由は複数で、だんだん変わっていきました。最初は雲を掴むような話だったので、誰かに話すなんて考えてなかったって事です。そのうち、クローン云々の話になったので、話したら誰かに止められるのんじゃ無いかって思ってしまったんですよね。」

横島は頭をかきながらポツポツリと語っていく。

「最後に・・・クローンエイド社と交渉しだしたころは、向こうから秘密にしてくれって言われましたね。重要な実験になるだろうし、トップシークレット扱いの技術もたくさん使われるので、実行の際には誰にも告げづに来て欲しいと言われたんです。」
「なるほど。結局の所はクローンエイド社の意向か・・・・・・まあ、そうよね。人工授精だけならなんでもないんでしょうけど、魂関連の部分はオカルト・・・しかも呪いやまじないの秘術クラスを使ったんでしょうし。場所すら秘密だったっていうのもそんなに驚くほどでもないわね。」

ましてや、そこでは心霊兵器も扱っていたのだから当然の処置なのだろう。

「でもそれだけじゃ無いんじゃない?貴方・・・・・・ルシオラを誰かに産ませるの嫌ったでしょう?」
「!」


<後半に続く>

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