ザ・グレート・展開予測ショー

帰ってきた横島 ―17前半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 2/ 6)

美智恵は横島をジッと見やる。
彼がこれまで話してきた事はおおよそ彼一人で出来る筈が無い。それは間違いない。
ならば、彼はどうやってそれを成したのか?
これから、その全てを明かして行かねばなるまい。

「そうね、やっぱり最初はこっちからの質問形式で行くわ。途中で補足したいことが有ったら横島君の方から言って頂戴。」
「了解です。」

横島もそれに賛同した。

「じゃあまず、今回の事の始まりから教えてくれる?貴方はいつ、なんで今回のような事をしようと考えたの?」
「そうっすね・・・きっかけは不妊治療を扱った番組を見た事でした。文珠で女になって、それで精子も自分の物を使えば、よりルシオラに近い形で子供を産むことが出来るんじゃないかな?って・・・・・・最初はほんと瞬間的な思いつきで、自分でも出来るのかどうか全然分からなかったんですよ。」

横島は、過去を思い出すようにしながら語りはじめる。
さっきまで騒いでいた他の面子も、今は静かに聞いていた。

「で・・・ですね、近所の不妊治療を行っている病院に行って相談してみたんです。そしたら、その病院じゃあ分からないって言われました。父親と母親が同一人物だなんて、過去に一件も前例が無いって。」
「それはまあ、当たり前よね。」

美智恵は苦笑する。

「ただ、その病院からオカルト治療を手がけてるっていう病院を紹介されたんです。あ、ここの名前はちょっと勘弁してください。で、その病院の先生と話をしたら、仮に父親と母親が同一人物・・・・・・つまり同じ遺伝子だったとしても、体外受精で子供を作る事は可能だと言われました。ただ、ちょっと困った事を言われたんですよ。」
「困った事?」

美智恵は静かに先を進める。

「はい。父親と母親の遺伝子が同じだと、生まれてくる子供はクローンになっちゃうだろうって。」
「そうか・・・言われてみればそうかも知れないわね。子供っていうのは基本的に父親と母親の遺伝情報を半分ずつ受け継ぐ訳だから、同一人物からそれぞれ半分ずつ持ってきちゃったら、出来上がるのは全く同じ人間・・・・・・になっちゃう訳か。」

この辺から、理解してる者と出来ない者に別れ出してきた。

「クローン人間って、今はまだ問題になるじゃないですか?あと他にも細かい問題点が色々と有ったんですよ。で、結論としてはその病院でも可能かどうかは分からないって言われましたんです。」
「じゃあ、もしかしてまた別の病院を紹介された?いわゆるたらい回し?」

今度は美神が横から訪ねる。

「はは・・・はい、そうです。ただ、今度は病院じゃ有りませんでした。それで、最終的に俺が1年間居たのはそこです。」
「それって何処なの?」

美智恵が聞く。

「アメリカ某所、とある会社の研究所です。実は研究所の有る場所自体は俺も分かってません。何しろ、入る時も出る時も目隠しされっぱなしでしたからね。まるでテレビ番組みたいでした。」
「とある会社って言うのは?それも言えないの?」

美智恵が又、尋ねる。

「いえ、こっちは口止めされてないんで言っても大丈夫っす。その会社って言うのは、クローンノイド社・・・多分知ってますよね?」
「クローンノイド社ですって!?」


(この作品はフィクションであり、登場する人物、団体等の名称は実在するものと一切関係有りません。また、この作品は特定の人物、団体等を誹謗中傷するようなものでは有りません。)


そこで、美智恵の表情が固まった。

「クローンノイド社って・・・どっかで聞いた事あるような?」
「世界で最初に、科学的なクローン人間を作り上げた会社でしょう?母体はローカルな宗教団体だとか・・・」

おキヌと美神が記憶を探る。

「クローンノイド社は、表向きには令子が言った通り世界初の科学的なクローン人間生成を成功させた会社。でもね、この会社・・・・・・ちょっと問題が有るのよ。」

美智恵の表情が重いものに変わった。

「問題って?」

そんな母の表情に、美神も真剣な表情になり尋ねる。

「ここって、表ではクローン技術を中心にした科学技術が専門だけど、裏の顔はオカルト研究所なのよ。」
「オカルト研究所?裏の顔って事は、何かヤバイ研究でもしてる訳?」

とたんにきな臭くなってきた話に、美神も眉をひそめた。

「証拠は無いんだけどね。国際法に触れるような心霊兵器を開発してるって噂があるの。もっか、ICPOが全力で調査中。」
「そ、そんな所に居たんですか!?横島さん?!」

おキヌが驚愕する。ちなみに妄想世界からは帰って来ていたようだ。

「成る程、そういう施設ならば当然幾重にも霊的な結界が施されているのでしょうね。」
「私の心眼に引っかからなかったのも頷けるのねー。」

小竜姫とヒャクメは納得する。まあ、想定していた事項の1つだ。

「あ〜、うん。いや、でも大丈夫だったって!危険な事なんて無かったし。実は俺も行ってから研究所の職員に色々と話を聞かされたんだけど・・・」

横島が語りだす。

「クローンノイド社が心霊兵器を開発してるのは本当の事です。でも、それだけなら法律には触れてませんよね?今はまだ心霊兵器に対する法規制は殆どないから、言って見ればやりたい放題って事です。例外的に大量破壊兵器とか、長期間土壌を汚染してしまうような・・・現行の兵器でも規制されている類の効力を持った奴が禁止されてる程度ですしね。」
「その、研究所の職員に聞いた事って言うのは?」

横島の発言に美智恵は関心を持った。

「クローンノイド社ではいくつかのセクションに分かれて研究をしてるそうなんですが、そんな中で俺が関わりを持ったのがクローニング研究をしているチームと、心霊治療を研究しているチームと、心霊兵器を研究しているチームの3部門のメンバー達です。他にも細々した知識が必要な所も有るんで、別に何個かのセクションから何人かづつ派遣されてきたそうですけどね。」
「前の2つは分かるけど、最後の1つはどういう事なのかしら?」

横島の話を聞いている限りでは、クローニングと心霊治療のチームは今回の事に欠かせないのが分かる。だが、最後の心霊兵器を研究しているチームというのは何も関係無さそうに感じる。そのうえ物騒だ。

「はい。今回の事は、特にオカルト的な処置も必要だった所為で・・・ちょっと考えただけでもかなりのお金と時間が掛かりますよね?当然、クローンノイド社だって只でやってくれる訳では無くてですね・・・」
「貴方から出したものも有るという事ね?」

美智恵にはなんとなく想像が付いた。

「そうです。まず、今回の事は世界でも初めての試みという事で研究データは結構貴重らしいんですが、その全てをあちらが所有するって事。もう一つは俺がそこにいる間の1年間、文珠を研究させる・・・・・・俺はそれに協力するって事の2つです。」
「文珠の研究をさせたのっ?!」

美神が驚く。文珠は世界でも類を見ないほどに使いが手の良い武器であり道具だ。もしこれが心霊兵器に転用されでもしたら、間違いなく世界のミリタリーバランスが激変する。横島はそんな危険な事に手を貸したのだろうか?


<中半に続く>

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