ザ・グレート・展開予測ショー

例えばこんな話


投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 2/ 5)


 この話はどうしようもないくらいに短編です。


 小鳥の囀りが聞こえる。
 まぶしすぎる位に明るい陽光が、窓から差し込んでくる。まどろみの目に、この光は、少し辛い。瞬きをしつつ、慣れるのを待つ。
 程よく湿って、ひんやりとした空気が汗ばんだ身体には心地良い。
 ふんわりとしたベッドの上、優しく包み込んでくれる朝の気配を感じる。
 テレビのリモコンを、手探りでベッドの上から探り出す。
 ごそごそ・・・ぴたっ・・・
 何か、やわらかいものに触れた。
 ごそごそ・・・
 ・・・何だ。枕か。
 枕の傍に、硬質なものがある。いくつもの窪み、凹凸、押してみると、柔らかな感触が手の中に残る・・・リモコン。
 テレビに向けて、赤い電源のスイッチを押す。
 ・・・ぴっ・・・
 ・・・ぴっ・・・
 ・・・テレビの画面は、真っ暗なままだった。
 テレビの横に置かれたポトスが、朝露に濡れて綺麗だ・・・。きらきらと、輝いている。
 目を移して、手に持ったリモコン(仮)をしげしげと見てみる。間違いなく、リモコン(本物)だ。
 裏蓋を開ける。―――電池が入ってない。
 ベッドから起き上がって、隣のくぼみに手をつける。
 ―――まだ、温かい。って、何をやってんだ?俺は。
 台所にいるであろう、この惨事の容疑者に声をかける。

 「なぁ、ルシオラぁ、お前、リモコンの電池とったろぉ」









 熱したフライパンに油を引いて、かき混ぜた卵の三分の一を流し込む。固まってきたらそれを手元に丸めるように寄せて、更に三分の一加える。それを万遍なく流して、固まったものを更に寄せる・・・。そして、残りの玉子を・・・。

 「なぁ、ってばぁ」

 出来たっ!フライパンを手首で返して、玉子を宙に浮かせる。ふわん、とした玉子が音も立てずに鉄の調理器具の上に落ちる。

 「なぁ、ルシオラぁ」

 「へ、なぁに?横島?」

 出来た玉子をまな板の上に載せて、十等分する。一つが、一口で食べれる程度の大きさ。それを出しておいた大皿に移して、テーブルの上に載せる。冷蔵庫の中からケチャップを取り出すのも忘れずに。

 「お前、リモコンの電池、抜いた?」

 「・・・ああ、そう言えば」

 昨日、電池を換えるつもりですっかり忘れてた。

 「布団の中で朝のニュースを見るのがひそかな楽しみになりつつあったのにぃ〜」

 「まだ、なってないのね」

 「まぁな。んでも、まどろみの中で見るニュースってのも、なかなか睡眠を促進させる意味ではいいもんだと思うぞ」

 「抜いといて良かったわ」

 いささか、彼に呆れながら、冷蔵庫の中からベーコンを取り出す。それとパンをオーブンの中に入れる。

 「食っていいか?玉子」

 「いいわよ。でも」

 「分かってるって。少しだけだよ。一緒に食べような♪」

 「うん♪」

 まな板の上で、食べやすいように切り分けたベーコンをフライパンの上に載せて、火を入れる。・・・熱してからのほうが良かったかも、載せてから思うけれど、そこまで意識するものでもない。焦げるほどでもなく、熱する程度。菜ばしで、フライパンにこびり付かないように転がす。

 「機嫌、良さそうだな?」

 「そう?」

 「いつもよりも、可愛いし」

 「あのねぇ・・・じゃあ、いつもってのは?」

 「安心しろ。俺の中ではA評価だ。今日はA+ってとこだな」

 「・・・それって、どういうことなのかしら?」

 「俺の評価基準の中で、C以上はおまえしかいないんだよ」

 「・・・?」

 「圧倒的な差をつけて・・・お前がトップってことだ」

 「・・・えへへへ・・・」

 「ベーコン、焦がすなよ」

 「分かってるわよ♪」

 フライパンを上げて、玉子の皿にかぶせるように載せる。玉子は、一つしか減ってない。

 「ベーコンエッグ、ってさ。スクランブルエッグか、目玉焼きじゃねーか?普通・・・」

 「うっ・・・別に、いいじゃない」

 「まぁ、いい、と思うけどな」

 丁度オーブンが鳴る。棚から二枚皿を出して、焼きあがったトーストにバターを塗り、皿に載せて彼に渡す。

 「バター塗るのくらいなら、自分でやるぞ?」

 「いいのよ。私が塗りたいの」

 「そっか・・・じゃぁ、牛乳出すわ」

 「うん」

 私が自分のトーストにバターを塗っている間に、彼が冷蔵庫から牛乳を取り出して、二つのマグカップに注ぐ。二人で、先週、デートの時に寄った店で買ったお揃いのマグカップ。














 「料理・・・上手くなったよな。最近」

 「うん。前は酷かったけど」

 彼女は苦笑しながら言う。確かに、前は酷かった。目玉焼きでさえ、まともに作れなかったし。そんな彼女が、今では・・・まぁ、まだ、頑張ってもらわなければいけなさそうだけど上手くなった。

 「結構、いけるよ。この卵焼き」

 「うん、おキヌちゃんから丁寧に教わったから」

 「そっか。まぁ、前に比べると格段に進歩してるな」

 「えへへへへ・・・」

 「嫁さんにするには申し分ない」

 「へ・・・」









 例えばこんな話。

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