ザ・グレート・展開予測ショー

兄妹。


投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/ 2/ 4)

いつもの時間、日暮れ時の当たり前のよおに訪れる時間。
横島は、窓からなんの感慨ももっていないかのような無表情で見ている。
屋根裏部屋に並ぶ二つのベットのうちの一つに腰を降ろし、ただ、何を言うでもなく空を見ていた。
隣にいる、女性は、そっと横島はうかがうように、見て言う。
「聞いても、いいか?」
と。
「んーなにをだ?」
ぼんやりと、覇気のない声で横島。
が、女性はおそるおそる、まるで壊れ物に触れるかのように、その言葉を紡いだ
「オマエは、あの時のことを後悔してないのか?」
と。
それがどの時のことなのかは、考えるまでもない。
横島は、すこしばかり考えるぞぶりで顎に手をあてていたが、唇を歪め言った。

「わかんね、もし分かっても、誰にも言わないって決めてるんだ俺は」

と。
ぐいっと襟首をひっつかまえて、揺さぶる。
目の前にいる男は、苦しそうに眉を顰めながらも、何も言わない。
それが、何より雄弁な答えだと知っていても、それでも許せなかった。
たったひとりの姉が、愛した男がこんな男だと知っていたとしても。
だからこそ、この男に惚れたのだとしても。
許せなかったのだ。
ただ一言いってほしいだけなのに
殺意すら、感じた。

「なんで…なんでだ、ポチ、なんで、たった一言、言ってくれないんだ。」
搾り出すように、ベスパ。
横島は、そっとベスパの肩を両手で触れる。
へらっといつもの軽い笑みを浮かべ、首を傾げる。
「んなの、もう言うやつがいないのに、言っても仕方ないだろ?」
その言葉は冷たいとすら言えるものなのに、ひどく寂しげに聞こえるのは何故だろう?
言った本人が傷ついているのではないのだろうか?とすら思えるのは何故だろう?
夕焼けに照らされている表情はいつものものなのに、違う。

「アイツは、もういないんだ」

そのことに、その事実に一番衝撃をうけているのは、この男のはずなのに、なんでこんなにも平然としているのだろうか?

「だから言っても仕方がないし、言うつもりもねぇ」
後悔していると、言えばなにか変わるわけでもない。
した事が清算されるわけでもない。
「だけど…」
言って欲しかったのだ。
ベスパはぐっと両手を握り締め、口を噤む。

たったひとりの、姉の命を奪った自分。
その原因になった行動をおこしたのだ。
その行動に、ウソはない。
後悔もしていない。
けれど、もういない人のいた、形跡はひどく儚くて。

そのひとがいないという事が、こんなにも苦しいなどとは思わなかったのだ。
そしてそれを自覚するのは、いつもきまって穏やかな時で

創造主であり、たったひとりのひとは、それを、望んだ。
死ぬことを望んだ。
だから、まだいい。
生きることに疲れ果てたあのひとは、安らかなに眠る事を望み、そしてその願いのまま逝ったのだ。
けれど、彼女は、姉は生きることを望んでいたのだ。
生き抜くことを諦めていても。
生きれるならば、生きていたいと思っていたのだ。

だから、だろうか?
時々この両手がひどくわずらわしく感じる時がある。
この両手が大切な、ねえさんに、したことはその望みを断ち切る事。
きっと誰も恨んでないことなどわかっているけど、どうしようもなく苦しい感情に囚われるのだ。

なのに、目の前の男は、苦しくない、と言う。
そんなことはないはずなのに。
ベスパは、横島を見ると横島は、笑いながら言った。

「だってそれらは、俺やアンタが死ぬまで持っていくものだろ?」

もう、いないひとへの想い。
言っても仕方ないことだし、似たような思いをした奴に、はけ口のように言うことではない。
ただ、もっておくもの。
そう、横島は言う。
ベスパは、どんっと拳で横島の胸を叩く。
「ワタシは、もう一年ののリミットを外されたのだぞ」
「ああ」
「…もしかしたら百年以上生きなければならないのだぞ」
「そりゃすげえなあ」
「……それなのに、吐き出すなというのか、オマエは」
不満げなベスパの声に横島は、くつくつと、笑い
「もちろん」
と、言い切った。
瞬時に、なんの迷いもなく。
そのあまりの、あっけなさにベスパは目を見開き、くすくすと、声を殺し笑う。

「………さすが、姉さんのほれた男だよ。」

おわり

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