ザ・グレート・展開予測ショー

I love each ot her


投稿者名:Hittar
投稿日時:(03/ 2/ 2)






それは・・・決意を胸にした青年の戦い・・・






グギャァァァ!!!

断末魔を響かせながら、人工的に構成された魂が散っていく。右手の霊波刀が無意味な安堵を生み出している・・・


ハア・・ハア・・・


尽きることのない攻撃に、確実に体力は奪われている。だが、胸には意味知れぬ高揚感と充実感が息を弾ませる・・・。“強くなりたい”・・・その一心で剣を振り、血を流しここに立っている・・・。


「コォノヤロォォォォ!!」


己の中から浮かび上がる文珠が、また魂を散らす。怖くないと言えばそれは嘘だ。自分はこんなことのできる人間じゃないことくらい、自分が一番よく知っている。何が自分をこうまでかりたてるのか・・・?その答えはすでにこの手に握っている・・・。


「負けられねぇ・・・」


そっとくちびるに触れてみる。微かに残る感触。あの決意は今も変わらない・・・いや、よりいっそう強くなっている。自分には負けられない理由がある・・・勝たなければいけないワケがある・・・


「楽しいわけ・・・ないわね・・・」


そう言ったあいつの横顔。肩を並べて歩いた時間はかすかなもの。俺にしてみれば陽炎のごとく微々たる日々・・・。けれど、その一瞬・・・その一瞬が俺を変えたことに間違いはない。俺は戦う・・・断片的でもいい・・・その永遠を求めて・・・


ブシュッッッッッ!!


避け損ねた霊波が、左腕の激痛を導く。流れ出る鮮血・・・深い淡い・・・赤。痛い・・・あまりの激痛に顔はゆがみ、息をすることさえ忘れさせる・・・。


「っつう・・・」


いつからだっただろう・・・何からも逃げ出し始めたのは。いつも傍らには頼れる者がいて、もたれ掛かることしかできなくなっていたのは・・・。そりゃあ、痛いのも苦しいのも嫌に決まっている。でも、ここで一歩でも退いたら二度とあいつの笑顔が見られない気がする。だから退くことはできない。痛みも苦しみも背負うのは俺一人でいい。俺は戦う。信頼という喜びと重圧の鎖を絡ませながら・・・。


『治』


数個目の文珠が傷をいやす。消した敵の数は、数十体をすでに越えている。体は限界ギリギリだということも分かる。だが、止まることはできない・・・何かを守り通すにはあまりにも非力だと気づいているのだから・・・。


「どりゃぁぁぁぁっっっ!!」


霊波刀が敵の眉間に突き立てる・・・「無」へと帰す魂・・・。すぐに体制を整え、来るべき攻撃に備える・・・







ハア・・ハア・・・







「・・・ん?」









次々と敵を作り出すはずの空間が、ひっそりと静まりかえっている・・・。全身に疲れがまわってきているのが分かる・・・。人はどれだけ、何かに夢中になってがむしゃらに進んでいくことができるのだろうか・・・。





ハア・・ハア・・・





(しかたねぇ・・・そろそろ休憩するか・・・)

そう思いつつ、停止用レバーにてをかけようとする。・・・・停止レバー・・・どれだけ命がけで戦ってみたところで、それは所詮、管理された戦い・・・リセットすれば何度でもやり直すことのできる戦い・・・。


(こんなことで俺は・・・あいつを守ることができるのか・・・?)


その疑問がその手の動きを鈍らせた・・・。停止レバーに手が届く寸前で、その手は遮られる。


「みっ・・・美神さん・・・!?」


俺はふとその手の主を見上げる。どことなく無表情・・・。


「それがあなた用のプログラムよ、横島クン!生きてそこを出たければ倒しなさい!!」


隊長の声・・・


ビシィッッッ!!

躊躇なく繰り出される、その攻撃・・・。それは見た目には美神令子本人に相違ない・・・。


「この美神さん、シミレーションプログラムか!?ちっ!!」


パシッッッッ!!


無言で次々と襲ってくる、その攻撃を思い切ってとめにいく・・・。それはけっして重いモノではない・・・いや、軽い!!


「かわせない動きじゃない・・・!!きっと、本物の美神さんより弱く設定してあるんだ・・・!やったる!!」


その眼には決して濁りのない純真の炎が宿る・・・。自分がここまでひたむきになったことがあっただろうか・・・。美しい勝ちなんて望むべくもない・・・顔に泥を塗ってでも俺は強くならなければいけない!!


『したっぱ魔族はホレっぽいのよ。図体と知能の割に経験が少なくて、アンバランスなのね。子供と同じだわ・・・。』

『私たちの一生は短いわ。恋をしたら・・・ためらったりしない・・・!!』

『どうせ私たち、すぐに消滅するんじゃない・・・!!だったら!!ホレた男と結ばれて終わるのも悪くないわ!!』


そう・・・もう誰にも弱虫だの、軟弱モノだのいわせはしない。俺はあいつがホレほどの男・・・ホレた女1人くらい、守ってみせる!!


「ルシオラ・・・!!ちゃんとおめーに、見る目があったってこと証明してやるぜぇ!!」

『剣』


その文珠にありったけの霊力を込め、具現化させる・・・。なぜか笑みがこぼれる・・・。自分には待っていてくれる者がいる。その喜びに間違いない・・・。


2つの力は衝突する・・・





(ここだ!!)

一瞬の隙をつき、剣をそこに滑り込ませる・・・。


だが、脳裏に美神さんの笑顔が浮かぶ・・・。決意が揺らいだワケじゃない・・・。ここでこの攻撃を決めれば勝てる・・・。これはシミレーションだから遠慮する必要はない・・・でも!


その手の力が抜ける・・・。仕方がない・・・そう思うしかなかった・・・・。




(これでいいのか?)




・・・必ず・・迎えに行くから・・・






自分の口をついて出た言葉・・・。あの時のルシオラの涙の理由・・・。

(あいつは命を賭けてまで、俺に尽くしてくれたのに・・・俺は・・・)


戦うにはそれなりの犠牲がいる・・・。傷つけあわない争いなど存在しない・・・。何かを守るのにもそれなりに痛さは覚悟しなければいけない・・・。



「俺も・・・すべてを賭けて守ってみせる!!」



その腕に力が戻る・・・。





迷いのないその一太刀・・・。



その瞬間・・・星の運命が・・・






変わり始める・・・






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