ザ・グレート・展開予測ショー

帰ってきた横島 ―15後半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/ 2/ 2)

<前半からの続き>


「俺の魂って随分死んだ訳だろ?もう自力で再生出来ないくらい。それをルシオラが補ってくれたから俺はこうして生きてる・・・・・・ように見える訳だけどさ、魂の観点から言えば俺ってもう死んでるんだよね。」
「それは・・・・・・」

小竜姫は、横島が何を言いたいのか分かってしまった。そしてそれは、確かに正しい。

「なあ、シロ・・・・・・俺って前と別の奴か?」
「はっ?」

不意に、横島はそんな風にシロに尋ねる。

「な、何を言うでござる!?せんせいは、せんせいでござるよっ!!」

シロは一生懸命否定した。横島は笑っている。

「だろ?横島忠夫っていう奴の魂は死んじまった。今ここに有るのは横島忠夫の魂とルシオラの魂が混ざり合った、全く・・・・・・って事もないけど、まぁ・・・別の魂が入った身体なんだよ。それでもさ、俺が横島忠夫っていう存在で有る事に変わりは無い訳で、少なくとも俺はそう思っている訳だから俺は横島忠夫なんだ。」
「そうね。貴方は間違いなく横島君だわ。それはここにいる人も、それに貴方の帰りを待っている他の人達にとってもそうよ。」

そう言ったのは美智恵。彼女には横島がそう言って欲しそうに見えた。まるで“そうじゃ無い”って言われる事を恐れているように。

―― 馬鹿ね ――

彼の関係者で彼をそんな風に見る者なんて居ないというのに。彼だけがソレを恐れているなんて。
美智恵はだから、さっきの台詞を全員に向けて口にした。そして全員が肯定を示すように首を縦に振っている。

「は、は・・・・・・え〜と、だからな?」

横島は照れているようだ。皆の態度が身にしみて嬉しい。

「ルシオラの魂だって、ほんの少し不純物が混じってたって・・・・・・ま、それが他の誰かの魂だったら嫌だが、それでルシオラらしさが失われる訳じゃなければ、俺はソレをルシオラだと思える。そう思った。」

そこで横島は、一度全員を見回して言う。

「それが俺の答えです。」

きっぱりと言った。
その表情に、美神達は見惚れてしまう。この男は、なんて良い顔をするようになったんだろう?事務所のメンバーは全員そう思った。
ついでに、小竜姫とワルキューレとベスパもちょっと心が揺れた。
横島の成長に素直な感動を覚える。

「・・・・・・・・・・・・でも、この子はルシオラちゃんじゃ無いでしゅよね?」

ボソッとパピリオが呟く。

「あ、それは私も思ってた。」
「どういう事?」

それにベスパも同調する。美智恵はその意味を聞き返した。

「だって、この子からはルシオラちゃんの魂の波動は全く感じないでしゅよ?」
「そう。いくら完全じゃ無くたって、ルシオラの魂だって言うんならアタシ達と共鳴する筈だろ?」

どういう事なのか?と横島に視線を向ける。

「ははっ!それはな・・・」

横島は小さく笑うと、赤ん坊のお腹の辺りに手を入れる。そして小さな布辺を取り出した。

「それって・・・霊波迷彩?ううん・・・・・・ちょっと違うわね、結界かしら?あんまり見た事無いけど・・・」

美智恵は自分の記憶を探る。だが良く分からない。
一方・・・

「!?」
「ルッ!!」

ベスパとパピリオが驚愕する。

「ルシオラっ!!?」
「ルシオラちゃんでしゅっ?!」

さっきまでは、この子供に何も感じる事が出来なかったのだが、今は完全に感じる事が出来た。
それは紛れも無く、自分たちの姉の気配。
そして、ほかの面子も別の事で驚いていた。

「これって、魔族の気配っ!?」

口にしたのは小竜姫。だが、それは全員の台詞だった
取り出した布をテーブルの上に置いてから、横島が口を開く。

「これは、魔族の霊波・・・気配を隠してくれる簡易結界です。この子はまだ自分で気配を抑えたり出来ないですから、流石にこれが無いといろんな所で問題になりそうなんで。」

―― ホロッ ――

ジッと赤ん坊を見ていたパピリオが、そのまま泣き出した。

「ルシオラちゃん・・・本当にルシオラちゃんでしゅよぉ・・・・・・」
「泣くなってパピリオ。はは・・・なんだよ、ちょっと違うとかって、全然分かんないじゃんか?アタシにはルシオラそのものにしか感じられないぞ・・・」

ベスパも、パピリオを慰めつつなんだか、嬉しくて溢れてくるものを抑えている様で・・・
横島はそんな2人を優しい顔で見ている。

「もう、出来る限りギリギリまでルシオラになるように考えたからな〜・・・・・・どうだ?これだったらルシオラが転生したって言っても過言じゃ無いだろう?」

2人の様子を見て、横島はどこか満足そうだった。
しばし和やかな雰囲気が流れる。
それ様子を見届けてから、美智恵が口を開いた。

「大体の事は分かったわ。貴方の出した答えも見せてもらいました。でもね、まだ大事な部分の説明が残ってるわよね?」
「そうね。まだ重要な事を聞いてないわ。」

それに美神も頷いて言う。

「分かってます。アレの事についてでしょう?」

そして横島にもそれは分かっていた。美智恵は満足そうに微笑み続きを促す。

「そう、これだけの事をいったい・・・」
「この子の母親は一体誰なのよっ?!」
「この子の母親は一体誰なんですかっ?!」
「この赤子の母御是はどなたなのでござるかっ?!」
「この赤ん坊の母親って誰なのっ?」

―― ガンッ ――

美智恵はテーブルにしたたかに頭を打ち付けてしまった。

「ち、違うでしょう、貴女達っ?!!重要なのは、一体どうやってこれだけの事を横島君が出来たのかって事で・・・」
「なんでよーーーーっ!!?いーじゃんそんなのっ!!今はそんな事より、この子の母親が誰なのかって事の方が全然気になるじゃないーーーっっ?!!」
「私も美神さんに賛成ですっ!!」
「拙者もでござるっ!!」
「私も。」

全員で息をピッタリと合わせて美智恵に喚き散らす事務所の面子。
横島は引きつった笑いを発していた。

「あの、その辺もちゃんと説明しますから・・・・・・は、はは・・・」
「とにかく母親の素性からさっさと説明しなさいっ!!」

美神の剣幕にそれを後押しする他の面子のプレッシャーが横島を襲う。横島は部屋の隅に置いてあった旅行用カバン・・・どうやら彼の物らしいそれに近づいて行き、中から何かを取り出した。それを持って又戻ってくる。

「はい・・・・・・これ見てください。」

興味津々で覗き込むメンバーの前に置いたのは、一枚のポラロイド写真だった。
そこに写っていたのは、

「・・・・・・・・・この娘・・・」
「・・・この人って・・・・・・」
「この御仁がこの赤子の母上殿でござるか?」
「はじめてみる顔ね?」

写っていたのは赤ん坊を抱いてベッドの上に座る女性。年齢は20歳前後か?
背中の割と下の方までサラッと真っ直ぐに伸びた髪は艶やかで美しい。
そして・・・
何かに気がついた美神とおキヌ。
とりあえずこれが母親かぁと思っているシロとタマモ。

「ベスパちゃん・・・・・・この娘なんだか・・・」
「ああ・・・・・・似てるな・・・」

ベスパとパピリオはそれに気がついた。いや、シロとタマモ以外の者は皆ソレに気がつく。

「どういうことなの横島クン?この娘は誰?」

美神がそう聞き・・・

「それに・・・どうしてこんなに似てるんですか?」

おキヌがそう尋ねた。
それを見て、横島はなんだか複雑な表情を見せる。
それでも説明を続けた。

「え〜と・・・・・・とりあえず、コイツがこの子の母親って事になります。名前は奈々緒(ななお)・・・横島奈々緒って言います。」
「名前なんかどうでも良いでしゅよ!なんでこの娘はこんなに・・・」

そこで一旦溜めを作り・・・・・・疑問を口にする。

「ルシオラちゃんに似ているんでしゅかっ?!」

そう、写真の中で子供を抱く女性はルシオラにとても良く似ていた。



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