ザ・グレート・展開予測ショー

お試し期間終了につき


投稿者名:ねこがら
投稿日時:(03/ 2/ 2)

「美神さん、今日こそ俺を一人前にしてもらいますっ!」

 事務所に来て早々、横島はそんなことを叫びつつ
 美神の事務机の上に茶封筒をばんと叩きつけた。
 茶封筒の表面には、「防ごう労災キャンペーン」の文字とともに
 GS協会のロゴが印刷されている。

「GS協会に行って、正式な免許の発行に必要な書類を
 もらってきたんです」

 美神が封筒をひっくり返すと、書類の束がばさばさと机の上に落ちた。
 誓約書、認定書、資格申請のしおりetc...

 その中にある一際分厚い書類(6枚複写)をつまみ上げながら、
 美神は深々とため息をついた。

「……これ全部署名捺印しなきゃならないの?」
「してくれるんですか!?」

 横島が驚きと喜びが入り交じった顔で美神を見ると、
 美神はこれまた深々とため息をついて言った。

「うーん、まぁ正直面倒くさいけど、せっかくもらってきた書類を
 ただ捨てるのも勿体ないしね」
「……なんか今ものすごく傷ついたんですけど」
「そうね、あんたももう高校卒業だし、いい頃合いかしら」

(まさか今まで面倒くさいから助手のままにしてたんじゃ)
 とってつけた様な美神の言いぐさに、
 横島の脳裏にそんな疑念が浮かんだが、さすがに返事を聞くのは
 怖すぎるので口には出さなかった。

「えっと、住民票、健康診断、直近6ヶ月撮影の顔写真(3cmx4cm)
 ……いろいろ要るんですねぇ」
 と、横から顔を覗かせるおキヌ。
 遠くない将来彼女にも必要になるだろう書類を、興味深そうに見ている。

「なにこの小学校のつうしんぼみたいな書類?
 私のときはこんな書類見なかったわ。なになに……
 1.除霊作業中、霊に取憑かれる、又は操られることが度々ある……○
 2.悪霊に同情することで除霊作業に支障をきたすことがある……○
 3.除霊作業中に集中力を散らすことが多い……○
 4.実は怖がりだ……○
 ……ほとんど○だわ。あんたってつくづく」
「悪かったですね、あ、ほら、8番は俺該当しないじゃないですか。
 チェック要らないですよ」
「あら本当。あんまり○ばっかりだったから、手がすべっちゃった」
「頼みますよ〜」

 修正液を振りながら、けらけらと笑う美神につられて
 横島も苦笑いを浮かべた。
 そんななごやか(?)な雰囲気で書類書きをしている二人に。

「美神さん……今、大変な事に気が付いちゃったんですけど」
 資格申請のしおりを読んでいたおキヌが、青ざめた顔で言った。

 美神と横島が訝しげに彼女を見ると、おキヌは言いにくそうに
 うつむき、問題の箇所を読み上げた。

「第10条4項……資格取得した後、1年6ヶ月以上本申請がない場合は
 資格を失効するものとする……って」

「……いちねんろっかげつ?
 試験が一昨年の6月で、今が2月だから……ひーふーみー……」

 指折り数える必要もなく。





「どーしてくれるんですか美神さんっ!!?」
 先ほどまでのバラ色気分も一転、困り切って今にも泣き出しそうな顔で
 美神に詰め寄った。

「なっ、情けないわね、資格試験なんてもう一度受ければいいじゃないの!」
 こちらはこちらで『うっかりしてた☆』を顔全体で表現している。

「でもあと半年もGSになれないままなんて、しかももう一回受けても
 受かる保証なんてないじゃないですか!
 もーこうなったら、結婚して一生面倒見てもらうしかない!
 そうだ、結婚なら紙一枚です!ををっ我ながらナイスなアイデぶぅっ!!?」

 肘鉄による適切なつっこみで横島の暴走を止めつつ美神。
 どうやら開き直った様子。

「アホかっ!いいこと、あんたはこの美神令子の弟子なのよ!
 あんたの実力は私が一番よく知ってるわ!
 GS試験ごとき、受かる保証なんていくらでもしてあげるわよ!!」

 横島ははっと息をのみ、流れる鼻血やら耳血やらもそのままに立ち上がった。
「そ、そうですね……俺だってこの一年半、なにもしてなかったわけじゃ
 ないんだ……俺、やります!」
「そーよ、だから落ちても私を恨まないでね」

 一瞬静寂につつまれた事務所の中、夕陽に照らされた二人が見つめ合う。
 横島の顔が真っ赤なのは夕陽が赤いせいではなく、
 美神の顔に汗が浮かんでいるのは夕陽が暑いためではないのだけれど。

 その時、ついさっき爆弾発言をしたばかりのおキヌがもう一発、
 フォロー不可能な爆弾を落とした。

「でも横島さん、今年から筆記試験もあるそうですよ」





「うわぁぁあああっ!!?」
 今度こそ、涙とか鼻水とかいろいろなんだかしょっぱそうな液体を
 まき散らしながら、横島は床につっぷした。
「だ、大丈夫よ、落ち着きなさいっ」
「そうですよ!あと半年もあるんですから今から勉強しても遅くないです!
 ……たぶん」
 そんな励ましになってるのかどうだか微妙な言葉が横島の耳に届く訳もなく。
「もうダメだ俺は一生GSになれないんだ絵に描いたモチだったんだぁぁぁ」


 果たして横島が正式なGSになれる日は来るのか?
 でもって美神令子除霊事務所が美神&横島除霊事務所になることはあるのか!?
 ……でもこの話は続きません。

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