ザ・グレート・展開予測ショー

ぬくい理想 後編


投稿者名:人生前向き
投稿日時:(03/ 2/ 1)









翌朝、

 六時にセットしておいた目覚まし時計に裏切られ、横島

が目を覚ましたのは10時過ぎであった。 まぁいいかと、

服を着て歯を磨こうとしたが、昨日の間に歯ブラシをリュ

ックサックにいれたことを思い出す。 しょうがないと洗

面所で顔だけ洗ってすました。 そしてリュックサックを

背負い、外に出る。今までが嘘のように綺麗に片付けられ

た部屋に一笑して、鍵を閉めた。 嫌がらせのようにあた

る太陽、道路から出ている陽炎、熱いなと言葉を洩らし、

駅にむかって歩いていく。 昨日、名前を使わせてもらっ

ておきながら、一度もはいったことの無い来来亭を過ぎた

ところで、知っている顔を見かける。



「タマモ・・・・?」


「あいにく、来来亭は私のお気に入りのうどん屋さんなの。」


「えっ!?」


「どうせ名前でラーメン屋って判断したんでしょう。ここはうどん好きの中国人のやってるうどん屋なのよ。」


「うそだろ・・・・」


「で、そんな大荷物で何処にいくつもりなの。」


「・・・・うー―ん、知らん。」


「はぁ〜?」


「いや、ただなぁ。知らないことを知りたいんだよ。」


「あてが無いってこと?」


「そうともいうな。」


「バカじゃない。」


「うるせぃ!」


「・・・・ルシオラって魔族のこと?」


 タマモは、彼女の口から彼女の知らないはずである名前がでたことに驚

いた横島に、前に美神が酔った勢いで話してくれた、と語った。 その様

がリアルに頭に浮かび、横島はこめかみを抑え、深い溜め息をついた。 

そしてタマモの顔を見るや、めずらしく真剣な目に気づき、しょうがない

と、今度は嘘を含めず自分の思いを告げはじめた。




「それがきっかけになったことは確かだ。 光と闇は相容れないもの、
正義と悪、なんて神族と魔族についてみんな言ってけど、ルシオラに会って
から、それにパピリオやぺスパ、アシュタロスに会ってから、それをおかし
く思えてくるようになった。光は神族とは違い、闇も魔族とは違う、自分で
考え、動く、喋る、食べる、聞くことができる。 自らを個々として確立し
ている全ての存在は、黒がシロになりえり、また白がクロになりえる可能性
を秘めてると思う。 いや色なんて無い。思考ができれば、全く同じ物でも
異なる環境に晒された時点で全てが違う存在なるから。 だから・・・・」


「だから?」


「それに言葉が通じ合えるんなら、みんな仲良くできないもんかな、って思っ
たんだよ。」 



 真剣に聞き入っているタマモを見て、熱弁している自分が少し恥ずかしくな

った横島は、タマモと顔をそらすように明後日のほうを向いた。 


 純粋だ、この男の考えは純粋すぎて大きいんだ。 スケベ男で、からかいの

対象としか考えていなかったタマモは、彼の思いを聞いて言葉を失った。 神

族と魔族の隔てている壁を無くすということは、創造主に叛旗を翻すことと同

じこと。 しかし彼が存在しているということは、それさえ創造主の意志かもし

れない。 この男は選ばれたのだろうか・・・。


「私もついて行くわ。」



突然の申し出だった。引き止められるとばかり思っていた横島はタマモの顔を

覗き込むように見た。


「・・・な、何年かかるかわからないぞ。」


「私のほうが寿命が長いわ。」


「旅費も無いし・・・・。」


「歩けばいいじゃない。」


「食事は・・・・。」


「GSでしょ。お金なんて旅先で稼げるわよ。 もし嫌ならこのことを・・・」


「わ、わかった、連れて行く。」


「ふふふ。」


 重たい荷物を背負いうな垂れている男を後目に、軽い足取り女で先へ進む女。
 
彼の進む道はけっして安易なものではない。 時には神族、魔族に敵対するか

もしれない。人間までも敵になるかもわからない。 しかし女は満足であった、

                           この男に出会えて・・・・・・・・










「お前、手口が美神さんに似てきたぞ。」


「うっ・・・・うるさいわね!」
















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