ザ・グレート・展開予測ショー

或る朝の情景


投稿者名:逢川 桐至
投稿日時:(03/ 2/ 1)


 あまりに寒くて眠れん。 冬なんだから、寒いのは当たり前なんだけど。
 ストーブをと思ったが、灯油の切れたソレは何の暖も齎してくれない。

 仕方なく予備の布団もも引っ張り出して、二重にして潜り込む。 と言っても、漸く使える程度の煎餅布団。 そこまでやって、尚、寒い。

 美神さんトコだから、シロもタマモも暖かく……って、シロはこの週末、里帰りとか言ってたっけ。 誘われたのだが、この寒いのに山の中へ行く気は無かったので断った。
 行っときゃ良かったかなぁ…
 けど、肉はともかく、ドッグフードを出されたら悲しいし。

 とか、思っていたら、ピンポーン、とドアベルの音。
 がちゃっとドアが開いて、入って来たのはタマモだった。

「鍵、掛ってなかったわよ」

 どうせ盗られる物なんて無いからな。 鍵は使っとらんのだ。

「何やってるのよ、ヨコシマ」

 何やってるって、寒いから寝てるんじゃっつうの。

「相変わらず、汚い部屋ねぇ」

 ぐるっと見回してそう曰うタマモ。 勝手に入ってきた癖に、太々しいなこいつ。

 それはそれとして、こんな夜中に何しに来たんだ、おまえ?

「遊びに来たのよ。 何? 来られちゃまずかったの?」

 別にまずいって事ぁないけどさ。 俺んトコ来たって、面白くも何ともないだろ?

「いいじゃない、別に。
 それより、寒いからストーブ点けてよ」

 灯油が無い。

「えっ?」

 何で俺が布団から出ようとしないと思ってるんだ?

「…はぁ。 まったく、しょうがないわね。
 ほら、ちょっと詰めなさいよ」

 へっ?

「ど真ん中に居られたら、私が入れないじゃない」

 何を仰ってるんでしょうか、タマモさん。
 って言うか、何故に服を脱いでますか〜?!

「服を着たまま布団に入ったら、皺になっちゃうじゃない」

 そりゃ、そうかも知れないけどさ。

 あっという間に下着だけになったタマモが、布団の中に入って来る。

 おまえ、俺の事、男だと思ってないだろ?

「そんな訳ないじゃない。 あんたが普段どうしてるか見てるのに」

 そりゃそうか…
 って、あのなぁ。 襲うぞ、マジに。

「やれるもんならやってみなさいよ」

 くっ…

「ほらね。 ………………………………………………………………いくじなし」

 何か言ったか?

「なぁんにも。
 あんた、結構暖かいわね」

 って、ぴったりくっつくなっつうの。

 タマモ自身は、暖かくて。 ケド、下着だけだと思うと、胸の内で天使と悪魔が葛藤してる。

「嫌なの?」

 そんな事は無いんだが…

「じゃ、いいじゃない」

 のぁあぁぁぁぁっ!
 抱き付くなってぇの… 服越しに柔らかい何かがぁぁぁ。

「ふふっ」

 おまえ、こう言う事はだなぁ…

「ヨコシマだからやってるのよ」

 はぁ、安牌扱いっすか。 いいけどよぉ。

「バカ」

 へっ?

 拗ねてる顔が何か可愛いぞ…
 って、やべぇやべぇ。 トキめくな俺の心。

 そう言やさ。

「何よ」

 こんな時間に出歩いて、美神さん、何も言わないのか?

「ベッドに身代わり置いてきたから大丈夫でしょ」

 身代わりねぇ…

 ま、いいや。
 暖かくなってきたなぁ… なんか睡魔が…

「ちょっと、ヨコシマ?
 ま、いいか… おやすみ」

 ・

 ・

 ・

 ドンドンッ

 なんだぁ?
 まだ日なんか登ってないぞ。 こんな早くに誰だよ?

「ちょっと、横島クン、ここ開けなさい!」

 開けなさいって、鍵なんかかかってないのに。

「ふぁ… ん… 入ってきた時、掛けといたわよ」

 はぁ、さいですか。

「ちょっと、聞こえてるの。 とっとと、開けなさい」

 どんどんどんと、叩きながらの大声。 近所迷惑だぞ、どうでもいいが。

「はいはい。 しょーがないわね、もう…」

 布団からタマモが抜け出た分、急に寒くなる。

 って、タマモさん。 何しようとしてますか?!

「タマモ、あん…!?」

「タマモちゃん、そんな格好で…!?」

 ちょっと、マジかぁ?!
 押し寄せて来る怒気に、一気に目が覚めた。

「よ〜こ〜し〜ま〜!!!!!」

 待って下さい、美神さん。
 別に俺は疾しい事なんて…

「横島さんが、そんな趣味の人だったなんて、小鳩、小鳩…」

 いつの間に、一緒に居たんだ、小鳩ちゃん。 って、アレだけ美神さんが騒げば、当然か。

「家出してきたタマモちゃんに手を出すなんて、横島さん、見損ないました」

 違うんだ、おキヌちゃん。 って言うか、家出って?

「おキヌちゃん、私は平気だから。 横島、優しかったし…」

 ノォオォォォォ!
 何を言ってるんだ、タマモっ!!

「アンタ、よっぽど地獄が見たいらしいわね?」
「横島さんのバカ!」
「もう知りませんっ!」

 ちょっ… 俺の話も聞いて…

「「「言い訳無用!!!」」」

 ・

 ・

 ・

 うぅ… 死ぬ…

「大丈夫?」

 んな訳あるか。

「酷い連中よね」

 元はと言えば貴女の所為でしょうが、タマモさん。

「だから、こうしてヒーリングしてあげてるんじゃない」

 なんで、朝っぱらからこんな目に…

「ヨコシマなんだから、いつもの事じゃない」

 いつもの、で済ますんじゃない…

 がくっ





「………………あんたがドンカンだから、悪いんだからね。 くすっ」


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