罪が罰
投稿者名:veld
投稿日時:(03/ 2/ 1)
二人きりの車内、もう、二度と離さないと決めた、彼女とともに、俺は夕日の見えない空を眺めていた。
「馬鹿だ・・・あたし・・・こっち側から夕日なんて見えないのに・・・」
「ルシオラ・・・」
泣き顔なんて、見たくなかった。
だから・・・ずっと、一緒にいるから。
思いを込めて―――
「いつでも、一緒に見てやる。いつでも・・・お前の傍にいてやる・・・」
抱きしめた。それでも、彼女の顔はまだ、悲しみが拭いきれない。
「駄目・・・そんな・・・」
「俺は、お前と一緒にいたい。ずっと、ずっと一緒に・・・」
乾いた音が、響いた。
「これで帰れないだろ?」
俺はそう言って、ルシオラを見つめる。彼女は、複雑な表情を浮かべていた。吹き飛んだ通信鬼を見ながら。
「・・・どうしたんだ?ルシオラ・・・」
もっと、嬉しそうな顔をすると思ってた。―――こんな顔をするなんて、思っても見ていなかった。
「・・・横島っ、ごめん・・・でも、もどったほうがいいと思うの・・・。きっと、まだ、間に合うわ。通信鬼は私たちが壊したことにすれば・・・」
「俺はお前と一緒に生きて行くと決めたんだ。もう、戻らないよ」
「・・・横島・・・私たちは・・・一年しか生きれないのよ・・・それでも、いいの?」
「・・・俺は、お前と生きて行くって決めたんだ。寿命なんて関係ないさ。その分、凄く濃度の濃い日々にしてやるからっ!!」
「横島・・・」
車内で抱き合う二人を、遠めに見ながら、ぺスパは悶えていた。(オイッ)
「・・・ポチと姉さん・・・あんな風になっちゃってたんだね・・・。うらやましいねぇ・・・私もアシュ様と・・・(ぽっ)」
もちろん、あんな風というのがどんな風だったかは定かでない。ただ、少なくとも、ルシオラが帰ってこない、何て事にはならなかった。
「・・・君が・・・人間を裏切って私の元に来た・・・横島君か・・・」
「・・・裏切った・・・そうっす。その横島ッス」
玉座に座るアシュタロスの眼前、圧倒的なその力に気おされながらも、その目をそらすことはない。じっと、主の顔を見ている。
「・・・君は、自分の仲間を・・・殺さねばならない、分かっているな」
「・・・あんたの目的は、美神さんの中にある霊気結晶だけのはずだ・・・殺す必要はないだろうっ・・・!!」
衝動に駆られて出てしまった言葉―――しかし、彼は眉をひそめるだけで、特に気分を害した様子もなく、言った。
「・・・分かってないな。彼女の魂はもう、あれと同化してしまっている。今更分けることなど出来まいよ・・・」
「・・・でも、他にも何か方法がっ!!」
「・・・ない、事もない」
「・・・!?」
「だが、どちらにせよ、一度彼女には死んでもらう必要がある」
一度―――死ぬ!?
「どういうことだっ!?」
「話は最後まで聞け。私の目的は、コスモプロフェッサーという・・・いわば何でも出来る機械を動かす燃料としてあれを求めている」
「・・・何でもできる機械・・・?」
「そうだ。一度死んでもらった後に、魂の再構築をすれば、彼女は蘇る。そして・・・」
「・・・そして?」
「彼女ら―――ルシオラ達の寿命のリミットもはずすことが出来る。もちろん、これは私に君が忠誠を誓ってくれるのなら今すぐにでもしてもいい」
「・・・あんたに、忠誠をちかうってのがどういうことなのか俺には分からない・・・でも、皆が助かるってんなら、何でもするさ・・・」
「皆が助かるかどうかは保証できない。私に出来る事は、コスモプロフェッサによることだけなんでね・・・」
「協力はする。だけど・・・あんたの目的を聞かせてくれ。コスモプロフェッサーで何をするのかを・・・」
アシュタロスは俯いた。声を振るわせながら・・・言う。
「(踏みにじらずに・・・生きたい。永遠に、悪役でいなければならない、この苦しみから抜け出したい・・・。勝つことの許されぬ戦いを繰り返す・・・そんな運命から解き放たれること・・・人間の君に話したところで分かるまい)道化のままでいなければならない、この苦しみから・・・抜け出すためだ。君は馬鹿にするかもしれないが・・・」
「・・・」
横島は、何も言わない。アシュタロスは、顔を上げ、彼を見た。
彼は涙を浮かべ、口元をまごつかせている。
「・・・どうした?何か言いたいことでもあるのか・・・?」
「分かるっ!!分かるぞっ!!お前の気持ちっ!!そうだよなっ、永遠にギャグキャラなんてやってらんねえよなっ!!したくもないのに、ギャグしなきゃならない状況に持っていかれるし、すりゃあドつかれるしっ・・・そうだよなっ、やってらんねえよなっ!!」
「・・・あの・・・」
「いや、わかる、わかるわかるよ〜!!しかも、あんた、俺よりもずっと前からそんなキャラ演じてんだろっ!!すごいよっ、本当にっ」
「・・・いや・・・だから・・・」
そこまで言って、アシュタロスは思い返していた・・・今までの戦闘を。
「ふふふっ、この奇襲攻撃っ、神族どもは予想もすまい・・・」
ライトのついたヘルメットを被り、安全第一と書かれた蛍光たすきをかけながら、つるはしを振るい、アシュタロスは言った。その顔には、玉のような汗が浮かび、幾条の、軌跡が流れ落ちている。彫りの深い顔は邪悪げに歪んでいるが、どこか爽やかにも見える。
「そりゃ・・・あんた。トンネル掘って神族の領地に行こうなんて誰も考えないでしょうよ・・・」
その彼の隣で、同じ格好で、同じくつるはしを振るうデミアンが呆れた顔を隠そうともせず、言った。
「ふっ・・・デミアン、私に惚れ直したか・」
「惚れてませんし」
ガンッ、アシュタロスの手に、心地良い痺れが走る。固い地盤、神界の大地に入った証拠と考えて間違いはなさそうだった。どうやら、その達成感に先ほどの会話の内容も忘れてしまったらしい。気分良く笑いながら言う。
「・・・ふふふ、はははっはっ!!もうすぐたどり着くぞっ!!デミアン、準備はいいかっ!?」
高笑いを浮かべる彼に、デミアンはため息をつきつつ、
「・・・まぁ、作戦としては上々だと思いますけど・・・でも、戦力が陛下と私だけだとまずくないですか?」
「・・・確かに、少し少なすぎるな・・・。そんじゃぁ、ベルゼバブと、メドーサを連れてくるとしようか」
どうやら、その他はこの二人しかいないらしい。
「・・・本当に慕われてねーなぁ・・・この人・・・」
物凄い力持ってんだから、部下の一人や二人くらい作れば良いのによぉ・・・とか、そんなことを思いつつ、
「何か言ったかっ!?」
「いいえっ、何もっ」
本気で怒っている様子だったので、慌てて訂正する。何か昔に嫌な事でもあったのかもしれない。
「アシュ様ぁ・・・一体、どういうことです、この格好ぉ」
少し若いメドーサ。アシュタロスはその甘ったるい声に苦い笑みを浮かべながら説明する。ベルゼバブが、分かってやすぜ、旦那、と言わんばかりの笑みを浮かべているのを無視して。
「トンネルを掘って、神界に侵入、そして、侵攻だっ!!もう殆ど掘り進めてある、後はほんの数十キロっ、私の計算が正しければ、わずか数時間で掘り進むことができるっ!!」
「それで、戦力として。俺たちが呼ばれたってわけですなっ、旦那っ」
得意げなベルゼバブはやっぱり無視して。
「うむっ、では行くぞっ、諸君っ!!」
んで、その後に・・・トンネルが倒壊・・・生き埋めになってしまったんだよな・・・
「くそぉ・・・あいつら馬鹿にしおって・・・
「考えてみれば神界までトンネル掘ってもいけるわけがない」
・・・だと、根性なしどもがぁ・・・・っ!!見とれ、お前らよりも遥かに有能な部下作ったるからなぁ!!」
そして出来たのが、メフィスト=フェレス、美神の前世である。
「おおおお、可愛い娘よッ、いいかっ!!お前はちゃんと人間から魂をもらってくるんだぞっ!!」
んで、初めて作った部下だったから愛情も一塩、だったのだが・・・。
「・・・同じ反応が二つ・・・?何でだっ?私は一つしか作ってないぞっ!!」
まさか・・・ぱちもんを作った奴がおるんかっ!!
「おいっ!!京の鬼っ!!ぱちもんをぶっ壊して来いっ!!」
「はっ」
んで、勘違いしおって、二人まとめて壊す(未遂)っていう暴挙にでおったんじゃ・・・奴はっ!!
んで、何を男とよろしくしとるんじゃおのれはっ、と言う訳で、娘―――メフィストの・・・恋人をぶち殺して・・・
下級神族に・・・
「・・・何だか、急にアホくさくなってきた・・・」
「・・・?」
「・・・ああ、何かどっと疲れた・・・二千年ほど眠りにつこう・・・」
「な・・・何でっ!?」
「・・・いや、気にするな。何となく、な。ルシオラ達の寿命は何とかしてや
る。・・・あの子達のことはお前に任せる・・・ああ、何をマジにやっとったんだ、私は・・・」
そう言うと、彼は頭を掻きつつ、玉座の間から出て行った。
「・・・へ・・・あの・・・」
「・・・えーと・・・」
「で・・・?いいのかな・・・」
後に残されたのは、頬を掻く横島と。
わけがわからないうちに終わってしまった微妙なシリアスな雰囲気だけだった。
詰みが×(バツ)
終わり
今までの
コメント:
- IFの世界ですね(w)アシュ様が・・・ああ、こんな変わり果てたお姿に・・・・・・(w)
でも、イカスーーーーーッッ!!(>▽<) (KAZ23)
- アシュタロスの「魂の牢獄」問題がどうのこうの言うよりも、今回は単純にギャグネタとして楽しめたので賛成です(笑)。前半だけ読んでいるとシリアス調の話かと思いきや、中盤から見事なまでの変調ぶりですね。メフィストを創る以前から既に何ともビミョーな失敗をしてきたアシュタロス、そんなアシュタロスを勘違いして、結果的に世界を救った横島クン...良かったです♪(爆) 投稿お疲れ様です♪ (kitchensink)
- アシュタロスがいいキャラや〜♪こんな考え方もあるんだな〜
シリアスネタかと思いきや突如ギャグ・・・受けました(笑)
そんで最後に横島くんがアシュタロスの後を引き継いだら面白いかな〜なんて思ったりして♪――――「あとは・・・お前に任せたぞ!」ってな調子に (えび団子)
- ……アシュタロスが……ギャグキャラ……(爆笑)
そうか、あの時のアシュタロスが地だったのか(マーフィの法則でバナナで滑ったり)。
とっても良かったと思いますよ!投稿お疲れ様〜♪ (リュート)
- ブアハハハハハハハハハ!!!・・・・・すみません、読んでて途中までシリアスを感じていましたのでいきなりギャグに切り替り、つい爆笑してしまいました(笑)
まぁ、横島とルシオラ達が無事に生き残ったので結果的には良し!
と、解釈してよろしいのですかな?(笑)
では、veldさん投稿お疲れ様でした! (ファントム)
- 原作では、アシュタロスを3枚目に落とすシーンがありましたけど・・・素で3枚目ですか?w
何か・・・酷く悲しくなりましたヨw
蛇足ですが。宇宙博士ですか?w (NAVA)
- アシュタロスが幸せそうで何よりです(笑)
そう、終わりの無い悪役を演じ続けるくらいならばいっそギャグキャラとして周りを巻き込みつつ楽しくやるのが好い!
アシュ様の正確次第では、永遠のギャグキャラとして神魔界に名を馳せる事になったのかも・・・・・
横島よりもアシュタロスに好感を持っちゃいました(笑) (志狗)
- KAZ23さん、kitchensinkさん、えび団子さん、リュートさん、ファントムさん、NAVAさん、志狗さん、コメントどうもっす。
KAZ23さん、アシュ様、変わり果てたお姿にしてしまいました。・・・が、こんなアシュ様もいいでしょ?と、同意を無理矢理得ようとしたり。微妙にボケ入っててついてない、でも、愛すべき人です。うちのアシュ様は。
kitchensinkさん、難しいことはとりあえず抜きにしてみたらどうなるだろうと。こうなりました(何じゃこら・・・)。本当に、馬鹿馬鹿しい救い方ですが(救われねぇ)
えび団子さん、こんなことばっか考えてます。他は、横島、みんなと結婚しねえかなぁ、とか。道化って・・・ねぇ?何となく=ギャグってなってしまって。アシュタロスの後は・・・うーん(無理) (veld)
- リュートさん、俺は妙にいっと缶がアシュタロスの頭にぶつかるってのが記憶に残ってるんです。この人、こう言うキャラなのかと。シリアスなアシュ様も好きですが。まぁ、笑いの神に見守られている・・・と。
ファントムさん、よろしいです。幸せなのが一番ねっ♪と、まぁ、そんな感じですよ。
最初から落とす気ではいたんですが。やっぱり、愛の語らいは必要かな?と。
NAVAさん。素で三枚目です、この人は、ええ三枚目ですともさ(断言)。
ですが、二枚目が笑いをすることで魅力が上がることはしばしば、と。
志狗さん、アシュ様は幸せなのかどうかはさておき(笑)
確かに楽しくやるのが良いかと。ギャグキャラとして名を馳せるのも・・・悲しいものがありますが・・・(泣)このアシュ様を気に入ってもらえると嬉しいです。 (veld)
- 蛇足・・・NAVAさん、宇宙博士、知りませんです(汗)、はい。 (veld)
- 何というか、博士と演算装置の違いというか・・・ぶっちゃけ、プロフェッサーとプロセッサの違いというか・・・ボケなのかなぁと^^; (NAVA)
- ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぐはっ。
イ、イヤ、キヅイテマシタヨ・・・エ、エエ、キヅイテ・・・ぐはっ(吐血) (veld)
- もー爆笑。どーしてくれますか。(なにを?)
いいなあ、こんな世界。理想かも。(笑) (紫)
- 紫さん、コメントどうもっす。
どうしましょう?(これ)
理想とまで言っていただけるとは・・・嬉しいです。
幸せな日々の始まりは・・・ここから、と。 (veld)
- アシュガコワレテイルヨ……(汗)
ただ一言、最高です(笑) (ろっくんろぉる)
- すばらしい!!
こーゆー世界ってまさにGSですね!!
私の催促を受けてくれたveldさんに感謝です。
・・・・アシュ様って友達いないんですかね? (ハルカ)
- あーはははははははは!!(壊れ)
アシュ様がグーです!
いや、凄いシリアスだったのに、急激なギャグへの変換に驚きました
そうか、アシュ様は笑の神に見守られていたのか (ゲン)
- ろっくんろぉるさん、ハルカさん、ゲンさん、コメントどうもっす。
ろっくんろぉるさん、壊れアシュ様〜(謎歌)どんなもんでしょ?最高といってもらえて嬉しいです。例のあれがこれです。(the期待はずれかも)
ハルカさん、ハッピーエンドだけど格好悪い〜!と言われる可能性も考慮して、前半部分は、例の部分を・・・へっへっへっ(薄ら笑い)
アシュ様は友達いないって言うか・・・人望がないっていうか=同意・・・いや、人気はもの凄くあるんですが、部下にはなりたくねえなぁ、と。
ゲンさん、皆さんにご好評の壊れアシュ様、勝手に動いてくれます。この人の回想と、横島のボケなかったら、シリアスになってしまっていたでしょうけど。どうやら、神様はそれを許さなかったようです。
ベルゼバブって、ベルゼブルのことです。一応 (veld)
- はじめましてveldさん。
ぶははは、アシュタロスが壊れとりますな。
面白く拝見させていただきました。 (影者)
- 影者さん、コメントどうもっす。そんでもって、初めまして。
ふぇふぇふぇ(謎笑)、アシュ様が壊れているでしょ?いえ、それ以上でもそれ以下でもないんですが。
面白いと思っていただければこれ幸いかと。
12票・・・自分、とうとう、二桁(未知の領域)に足を踏み込んじゃいましたよぅ・・・ (veld)
- そしてさらに一票!!
どうも、弥三郎です。
なしてギャグキャラになっとんじゃ、アシュさん……
いくらぁ何でもサ、神界までトンネルはぁ〜無理だべな!(栃木弁)
おかしくて壊れて地元の方言が出てしまいました。 (弥三郎)
- 弥三郎さん、コメントどうもっす。
方言って、いいなぁ(感想)いや、本当に(特に東北の方の)
壊れちゃってください。壊れSSですしあんまり気にすることもないかと。
何となく、ベルゼバブ辺りに言わせて見たい言葉だったりします。何となく、面白そうな。えんやこら〜みたいな感じでつるはしを振るうアシュ様とその部下の図。
13票っ!!何かすごいっすね・・・ (veld)
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