ザ・グレート・展開予測ショー

黒き翼(19)


投稿者名:K&K
投稿日時:(03/ 2/ 1)

 皆さんおひさしぶりです。昨年末より忙しく投稿できませんでした。これからは月1回程度で続けて
いこうとおもいます。さて、物語はワルキューレが結城の部屋から自分の隠れ家に戻ったところから続
きます。ひさしぶりなので、所々おかしな文章があるとはおもいますが、ご容赦ください。では。


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 (結局、魔界での調査ではたいした情報はえられなかった。)

 ソファーの上で、相変わらずクルクルと銃を玩びながら、ワルキューレは呟いた。逮捕された実行犯
の尋問を始めとして、さまざまな方法で調査を進めたが、あるところまでいくと情報の糸が絶たれてし
まう。実行部隊と指揮グループとの連絡が、そのつど双方に全く関連のない者を通じて行われていたか
らだ。
 ただ、一人だけ名前を特定できた者がいた。ブルタスクという魔族で、以前は自らも小さなグループ
を率いて過激派として活動していたが、ある時期を境に全く姿をみせなくなっていた。
 ブルタスクは人界に潜んでいると考えたワルキューレは、早々に魔界での調査を切り上げると、調査
の中心を人界に移した。
 人界での調査でも依然としてブルタスクの居所はわからなかったが、彼と接触していた人間の情報が
偶然に手に入った。それが森村丈太郎だった。

 (そういえば、そのころだったな、情報部が口を出してきたのは。)

 そしてあの事件が起こった。
 調査の進捗状況は師団長を通じて総司令に報告することになっていた。総司令はそれを情報部に伝え
彼らの情報と照らし合わせてさらに深い分析を行った後、魔界の最高指導者達に報告していた。従って
師団長、総司令、情報部の3ヶ所で情報が漏れる可能性があるが、このうち師団長と総司令については
根っからの均衡派(魔界の主流派)であるため、過激派と手を結ぶとは考えにくい。よって現時点では
情報部から作戦がもれた可能性が最も高いとワルキューレは考えていた。
 だが魔界に帰れぬ以上それを確認するすべはない。
 今できることは、森村丈太郎、ブルタスク、この二人を結ぶ糸を見つけること。その先には今回の一
連の事件を起こした真の首謀者がいるはずだ。
 だが、いまの自分には敵も多い。まず第一に、あの日自分達を襲った武装グループ(ワルキューレの
標的でもある)、次に魔界軍MP、最後にオカルトGメン達。他にも自分を憎んでいる連中がこの機会
に恨みを晴らそうと襲ってくる可能性は充分にある。
 ふいに銃を玩んでいたワルキューレの唇がつりあがった。闘いの予感に魔族の闘争本能が刺激され、
身体の奥から熱い感覚が湧き上がってくる。いつしか、彼女の顔には戦場乙女の名にふさわしい凄絶な
笑みが浮かんでいた。






 「で、その結城ってやつにだまされて部屋にいったらワルキューレがいて、ケガの治療に文殊を2個
  も使って、お礼にキスしてもらったってわけね。」

 除霊の翌日、昼下がりの事務所に美神令子の怒声が響く。美神除霊事務所恒例、鉄拳制裁の幕が上が
ろうとしていた。

 「ヒッ、そっ、そうです。そのとうりです。」

 答えながら横島は反射的に頭を両腕で抱え身を縮めた。

 あの除霊の後、事務所に帰ってクライアントへの報告を含む事務処理等が全て終わり、事務所のメン
バーが体を引きずるように自室にひきあげた時には、時計の針は既に午前1時を回っていた。横島は既
に終電も過ぎていたので、おキヌから毛布を借りて事務所のソファーで休むことにしたのだ。美神が起
きる前に事務所を出ればいいと軽く考えていた。だが、連日の徹夜作業がこたえたのか、お昼におキヌ
に起こされるまで眠りこけてしまい、鉄拳制裁にさらされるはめになってしまった。

 だが、いつまでたってもいつもの衝撃は襲ってこない。

 (殺すんならひとおもいにやってくれ〜〜〜。なぶり殺しはいやや〜〜〜。)

 胸の内で悲鳴をあげる。さらに待つこと数分、とうとう堪えきれなくなりきつく閉じていた目を恐る
恐る開き、両腕の隙間から令子の様子をうかがった。

 令子はデスクに腰掛け、なにごとか考えるようにじっと横島をみつめていた。

 「それで、ワルキューレはなんのためにこっちにきていたの。」

 「なんか、魔界の過激派が人界に逃げてきたのを追ってきたっていってましたけど。」

 「それで返り討ちにあったのが六日前のあの事件?、しかも、ワルキューレのチームを壊滅させたの
  が人間の武装集団ですって?、ちょっと信じられないわね。」

 「ほっ、本当ですって!。ワルキューレは確かにそういってました。」

 ここで令子の大きな瞳が意地悪そうに輝いた。

 「あんた、そんなことまでしゃべってよかったの?。彼女に口止めされたんじゃないの?」

 横島の顔色が変った。もしこの事をオカルトGメンが知れば当然彼等はワルキューレを追うだろう。
加えて、令子の母親はオカルトGメン日本支部の実質的な責任者だ。

 「美神さん、このことは誰にも、特に隊長や西条には言わんで下さい。お願いします。」
 
 思わず令子につめよる。それに対し、令子は平然とからかうような調子で応じた。

 「さぁどうしようかしら♪。この場合、やっぱり通報するのが市民の義務だとおもうのよね。」

 あんたの場合、他にもっとはたさなきゃならない義務があるだろう、と胸の中で呟く。

 「今回の事件はワルキューレが引き起こしたものじゃないんですよ。あいつも被害者みたいなもの
  なんです。」

 「でも事件の当事者であることには変りはないわ。あんたそれを逃がせっていうの?。」

 「まあまあ美神さん、ワルキューレさんは私達のお友達じゃないですか、今回はワルキューレさんは
  悪くないみたいですし、今すぐお母さんに報せるんじゃなくてもう2,3日待ってあげてもいいん
  じゃないですか。」

 ここで、これまで黙って二人のやり取りをきいていたおキヌが救いの手を差し伸べてくれた。

 「お、おキヌちゃん・・・・・。」

 横島と目が合うとおキヌは美神に見えぬようにパチリと片目をとじた。これが最後のチャンスとばか
り、横島は令子に頭を下げた。

 「美神さんお願いします。隊長に話すなとは言いません、2,3日でいいんで待ってください。」

 しばしの沈黙の後、令子はきっぱりと答えた。

 「・・・・・・、いやよ。」

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