狩り。
投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/ 1/29)
生きるために、他のいきものを殺しているのに、生き物の死を悲しむのは可笑しいのだろうか?
血を流し、肉を食いちぎり、命を奪い、そして自分の命を繋げる。
それは当たり前のことなのに、何故、ひとは可哀相などと、言うのだろうか?
少女は目の前の光景に、首をかしげていた。
年齢は中学生くらいだろうか?
可愛らしい顔立ちなのに、どこか少年めいた表情の持ち主である。
まだ日も高い、午後。
人気の少ない公園の真っ青な空の下で、狩が行われていた。
人間が、犬を狩っていたのだ。
無力な、子犬を数人の子供が追いまわしている。
それは、その犬を殺すというよりも、痛めつけるためといった方が正しくて。
「せんせーあれは、何をしているのでござるか?」
首を傾げ、不思議そうに聞くと
隣にいる高校生くらいの少年は、眉を顰め
「馬鹿の、自分より弱い奴にしかできない、苛めだろーよ」
と言う。
この少年もずいぶんな馬鹿なのだが、まあそれとは意味合いが違うのだろう。
そう、言い捨て少年は、すたすたと歩いていく。
子犬をおっている子供たちに向かって。
「こーゆうことは、俺のガラじゃないんだけどなー」
などとぶつくさ言い、頭を掻きながらも足は緩めない。
少女は、まだ首をかしげている。
「苛め…でござるか?種族もちがうのでござるに」
少年は、べきっと一発おっている子供の、後頭部をぶん殴る。
派手な音をたてて子供がふっとびどさっと原っぱの上にひっくり帰った。
その音で、ほかの、犬をおっていた子供たちがぴたりと、凍ったように止まりしんと、それまで聞こえていた子供達の騒ぎ声もとまる。
「な、なにすんだっ」
数分たっただろうか?殴られた子供がはっと、頭を抑え非難がましく言う。
それでも少年を直視できないのは、自分が悪い事をしているという意識があるせいだろうか?
少年は、そりゃもう満面の笑顔でにっこしと笑い
「んなの、なんとなくに決まってるだろ−が」
と、言い放った。
まるで少年の雇い主を思い出させる言動である。
「そ、そんなの、めちゃくちゃだっ」
自分達のやっていることはめちゃくちゃではないのだろうか?
ふと、少女はめちゃくちゃだっと言い切った少年を、見聞く。
「一つ聞きたいのでござるが、拙者たちは、貴殿どのの、狩りの食料を得るための、狩りを邪魔したのでござるか?」
「は?」
「そうでござったら、謝らないとでござる」
せんせーの不祥事は、弟子の不祥事でござるからなあと少女は続ける。
少年は、そんな少女に苦笑しながらも
「んな、訳ないだろうが」
と言う。
「は?何いってんの君。なんでこんなん俺らが食べないといけないんだ?」
子供も、びっくりしたかのよーに言う。
「じゃあ?なんで数人で、一匹の犬を追っているでござるか?卑怯でござるよ」
しかもまだ子犬を。
少女は更に、びっくりしたかのよーに言う。
「そん…なの、いらいらしたから…だよて、ゆーか犬なんか食うわけないだろ馬鹿じゃないの」
子供は、ふいと顔をそむけ少女の言葉にそう答えた。
瞬間べきっと少女の足げりが、子供へと向かう。
少年も、少女の蹴りを止めれる場所にいたのに、止めなかった。
ついでに追っていた子供たち全員けり倒し、さらには持っていたマジックで(しかも油性である)とてもじゃないが口ではいえないよーな事を顔じゅうに書いた。
その間少年は平和てきに、子犬を抱え、治療してやっていたりする。
「なんつー胸くそ悪くなるやつらでござろーかっ」
むかむかと子犬をだきつつ、少女。
隣で少年は苦笑している。
「よりにもよって弱いもの苛めをするなんてっそれを『どおして食べるために殺すんならよくて、すこしばかり痛めつけるのが駄目なんだっ君のほーが偽善じゃないか』でごると〜!!!」
おどおどと、口篭もりながらもそう言った子供達はある意味命知らずだなあと少年は、子供たちの表情を思い出しながら唇を歪めた。
「ま、そんな奴もいるからなあ」
自分達にその犬自体がなにをしたわけではない。
ただ、自分達より『弱い』から、自分達に危害を加えることができないから、痛めつける。
けれど命を奪うほどの、度量はない。
子供だからと言ってしまえばそれまでなのだろうが、余りにも馬鹿である。
そんな子供達に棄て台詞のように言った少女の言葉
「殺す覚悟も、傷つけられる覚悟もないのがっ命を傷つけたら駄目でござるっ」
である。
それはきっと、少女のなかに当たり前のようにある覚悟なのだろう。
彼女は、生きるために、ものを殺す事を知っている。
そうしないと、生きていけないことを。
だからだろうか?優しい。
命を殺す事をしっている、自覚している少女だからこそ、もしかしたら尊さをしっているのかもしれない。
少年はにっと笑い
「里親みつけんとな〜」
と言った。
「え?せんせー無理でござるか?」
「俺の経済状況を知って、それを言うかおのれは…」
おわり
今までの
コメント:
- みみかきさんにささげます♪だってだって冬の墓うれしかったんです♪
………え?駄目?おもろくない…(滝汗 (hazuki)
- みみかきさん・作の「冬の墓」をお読みになりたい方は今すぐ展開予測のトップページの下のほうにある「椎名作品二次創作小説投稿広場」にGO!(挨拶) と言いつつ自分はコメント書いてなかったりします(ダメ)。弱いものを理由も無く痛めつけるのは悪いことで、「生きるため」に殺すのは悪くは無いとする、シロのような狼だけでなく人間も使っている論理は考えてみましたら不思議なものですよね。そんな難しい問題もシロが持ち前の真っ直ぐさで自分の中で解決してる点から彼女の強さや優しさが伝わってきました;シロだからこそ説得力が出てくるセリフの数々が「らしい」感じでした。投稿お疲れ様でした♪ (kitchensink)
- まっすぐなシロがかわいいです♪
『イライラしてるから』なんて理由で
弱いものイジメするなんて最低ですよね。
私的には
「シロの強い要望により子犬は美神さんの事務所の屋根裏で
シロとタマモと一緒に飼われましたとさ。」という展開がよいのですが。
ところでhazukiおねーさまは黒犬師匠のお師匠様だそうで。
ということは私はhazukiおねーさまの孫弟子になれるのでしょうか?
え?ダメ?そんな・・・・ (ハルカ)
- いい話ですね。っとここにコメントするのは久しぶりなのですが・・・・・hazukiさんのお話は全部チェックしておりますです、はい。ところで・・・・・・「hazukiせんせえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜(初恋の)原稿は〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?!!(血涙)」などと締め切りをはるかに過ぎた状態の編集者の真似して催促してみたりして(^ー^) (色即是空)
- 難しいテーマっすね・・・難しすぎて、考えてしまいます。
殺す覚悟、傷つけられる覚悟、そのどちらも、シロは持っているということですよね。そして、殺すことを自然なこと(上手く言い表せないんですが)として受け止めている。それが、どこか歪んだ考えのように感じられる子供の気持ちも少しだけわからないでもないです。でも、捕食のために命を食い、つないでいることもまた事実。生きることそれ自体が、殺すことであると。だからこそ、傷つけることは、殺すことと比べることではない、ということ。(と、勝手な考えを言ってみたり)
・・・重い・・・重いっす。んで、簡単にまとめれば、
弱いものいじめなんてしてんじゃねえ!!くそがきどもがぁぁぁ!!
里親は、横島君で♪ (veld)
- たま〜にこーゆー深いところを突いて来るから、hazukiさんの作品って大好きなのです。(挨拶)
てゆーかこんにちわ。その昔『食物連鎖』で語られたテーマを、シロという『存在』と子供たちという『存在』の対比を盛り込む事によってより解りやすく、そしてリアルに表現されていますね。正直、凄いです。いつものhazukiさんのさり気ない文体で以ってこのような作品を持ってこられると、かなり涙腺にキます。
文句なく一票です。 (ロックンロール)
- 傷つけられる側にとっては、理不尽な暴力でも命があるほうが良いのでしょうか、それとも命は奪われても他者の命の糧となれる方が良いのでしょうか・・・。この二つは選択肢として同時に存在する事は恐らくないでしょうし、「狩る」側にはどんなに考えても分からないのかもしれません。
だからシロの『殺す覚悟も、傷つける覚悟もないのが〜』という気持ちがあるのは大事なんだろうなぁって思いました。相手の気持ちになれないからこそ、自分の行いへの自覚、覚悟が必要なんだと思います。
里親・・・・横島とシロの二人の愛の下で育ててあげて下さい(笑) (志狗)
- 自然の摂理と現代社会の歪みをテーマした作品ですね(?)
うーん、相変わらず僕では足元にも及ばない作品ですね〜
結局子犬はどうなったんでしょうか?横島の経済状況から考えて事務所飼いが妥当かな(笑)
あ、つまらないツッコミすいません(汗 (ユタ)
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